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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「日本海大海戦」 アジア民族意識高揚作品〔2〕 

日本海大海戦」 
特撮の巨匠円谷英二最後の作品。

 


【英題】BATTLE OF THE JAPAN SEA
【公開年】1969年  【制作国】日本国  【時間】128分  
【監督】丸山誠治
【特技監督】円谷英二
【原作】
【音楽】佐藤勝
【脚本】須崎勝弥 丸山誠治
【言語】日本語(主に薩摩弁) 一部ロシア語
【協力】三笠保存会
【出演】三船敏郎(連合艦隊司令長官東郷平八郎大将)  加山雄三(広瀬武雄少佐)  仲代達矢(明石元二郎大佐)  平田昭彦(津野田是重参謀)  土屋嘉男(秋山真之参謀)  佐原健二(信濃丸副長丸橋彦三郎)  アンドリュウ・ヒューズ(ロシア艦隊司令長官ロジェストウェンスキー中将)  ピーター・ウィリアムス(ネボガトフ司令官)  藤田進(上村彦之丞海軍中将)  黒沢年男(前山三吉一等兵)  小鹿敦(杉野孫七兵曹)  東山敬司(藤本軍医中尉)  久保明(松井菊勇大尉)  佐藤允(森下兵曹長)  船戸順(山岡熊治参謀)  田島義文(伊地知彦次郎大佐)  小泉博(栗野慎一郎公使)  田崎潤(宮古島・橋口島司)  辰巳柳太郎(山本権兵衛海軍大臣)  草笛光子(東郷てつ)  笠智衆(乃木希典大将)  松本幸四郎[8代目](明治天皇)
      
【成分】勇敢 知的 かっこいい 日露戦争 日本海海戦 1905年 
  
【特徴】日本海軍史上名高い栄光の勝ち戦である日本海海戦を実写映画化。日本特撮映画界の巨匠円谷英二監督が手がけた最後の作品でもある。
 後の日本軍に見られる傲慢不遜慢心の傾向は無く、国際法に則った戦い方をしているのが特徴だ。欧米列強のアジア植民地化が進む中で幕末明治維新を闘った若者たちが本作の海戦で司令官として作戦を指導し、この日露戦争の勝利を経験した若者たちが第二次大戦を指揮していくことになる。明治の軍隊と昭和の軍隊の違いを比べてみると、気質の違いは現代日本を鑑みる上で大切だ。
  
【効能】晴れ晴れしい気持ちと自信がみなぎる。明治の日本人たちに畏敬の念がわく。
 
【副作用】戦争を美化し後の軍国主義を肯定する事につながる作品に見えて不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
「坂の上の雲」のクライマックス海戦

 5月27・28日、東郷平八郎が連合艦隊を率いてロシアのバルチック艦隊を日本海で撃破した日と即座に連想できる方は戦史研究家か軍事オタクか一部の保守右翼で、日本人の大部分は知らないだろう。日本海海戦は1905年に行われたから、今年(2009年)で104年、本作が公開されてちょうど40年になる。(余談1)
 
 同じように日本海海戦を扱った映画が沖田浩之氏と三原じゅん子氏らを主役に80年代に入って制作されたが、作品の知名度としては本作の方が大きいと思う。ウルトラマンで知られる特撮映画界の巨匠円谷英二氏が手がけた最後の作品だからだ。海戦場面は特撮ファンにとって美しい映像である。
 
 本作は勝ってメデタシ型の娯楽戦争映画だが、戦争を美化した訳ではない。少なくとも日本海海戦では戦時国際法に則った戦い方を実際にやっていた。ロシア軍が沈没した僚艦の水兵たちを救助している時、日本軍は攻撃を中断していたし、さらに沿岸の漁師たちもロシア水兵の救助に協力した。捕虜の扱いも丁重であり、敵将ロジェストウェンスキー提督は東郷の配慮に涙した。
 これは、生身の兵士が相対して殺しあう陸軍と違い、海軍は艦から大砲を打ち合うため、殺し合いというよりも試合をやっているような感覚がある。同様の感覚は戦闘機パイロットの坂井三郎氏も述懐している。
 
 それと明治の軍人は昭和の軍人と比べて慢心が小さかった。戦法の研究には謙虚で勤勉、訓練も行き届いていた。また上官が誤った命令を出しても部下がそれに気付けば独自の判断で行動する臨機応変さを許せる精神的余裕が明治にはあった。技術や物量では第二次大戦初期の軍隊の方が整っているにも関わらず、精神のしなやかさは明治に劣る。
 軍人に限らず、市民にもエネルギーがあった。陸でなかなか戦果をあげられなかった乃木希典司令官を市民は批判した。ポーツマス条約の内容が不服として日比谷の焼き討ちも行った。当時の日本人は現在の韓国よりも過激な市民だった。
 
 単なる娯楽戦争映画と捉えず、明治と昭和の違い、あるいは平成との違いも考えながら鑑賞する事を勧める。
 なお、本作はバルチック艦隊の司令官ロジェストウェンスキー提督を些か凡庸な軍人のように描かれていたが、実際は身分制度の厳しいロシア帝国で「平民出」の有能な海軍提督だった。日本海軍では「平民出」の提督や稀に兵卒あがりの士官も存在したが、帝政ロシアでは皆無である。ロジェストウェンスキー提督は稀有な存在なのだ。しかも出航時は少将でありながら駆逐艦を含めた大艦隊を率い、当時の稚拙な小艦船を含めた部隊をまとめて世界を半周する航海は提督の手腕である。
 
 もし、リメイクする時があれば、ロシア海軍の裏事情も丁寧に描写した3時間枠の映画で制作してほしいものだ。
  
(余談1)バルチック艦隊とは、普通はバルト海に展開するロシア艦隊をさす。当時のロシア海軍は日本海軍の3倍くらいの規模があったと思うが、国土が広大なため太平洋と黒海とバルト海に振り分けられていた。太平洋艦隊だけだと日本海軍より劣勢なので、バルト海から幾つか艦隊を引き抜いて日本海へ増派した。これが東郷らが戦ったロシア艦隊である。
 
 映画公開時、日露戦争に参加した20歳前後の若者の少なくない方々は80を過ぎで健在だった。ちょうど2009年現在で80代90代の老人から第二次大戦中の話を聞くような感覚だ。
 さらに日本海海戦に参加した若者たちの上官である東郷平八郎が20歳前後だった頃は幕末明治維新で、彼は薩摩藩の海軍士官として宮古湾や箱館の旧幕府軍と戦っていた。まだ丁髷を結っていたかもしれない。

 日本の近代史を語るうえで、各世代が青春をおくった環境の違い、これはかなり重要だ。東郷は卓越した判断力と指揮能力で海戦を有利にもってきた。そんな東郷でも判断ミスがあったが、それらは有能な幕僚が臨機応変の判断でフォローした。後方牽制では明石元二郎大佐がヨーロッパで大活躍、それに比べたら派手な英雄になっているアラビアのT・E・ロレンス少佐は凡庸な素人だ。
 
 ところが日露戦争時代の若者たちが社会の中枢を担うようになった第二次大戦では、東郷や明石のようなタイプの軍人は逆に左遷されるようになる。国際法はかつてほどには守られなくなり、国際法との相性が良かった武士道は曲解され各地で玉砕の悲劇を生んだ。つまりは随所に慢心と精神の硬直化がみられるようになる。日露戦争で勝利した事と、日露戦争以降の世代は教育勅語(1890年当時は道徳心の向上が目的で神聖化はされていなかった。昭和に入り硬直した皇民化教育の原則になる)の強い統制下に入るようになった事と無関係ではない。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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日本海大海戦 海ゆかば [DVD] 舛田利雄
 
晴雨堂関連書籍案内
秋山真之―日本海大海戦の名参謀 (学研M文庫) 羽生道英
天気晴朗ナレドモ波高シ―「提督秋山真之」と「日本海海戦誌」 秋山真之
『坂の上の雲』歴史紀行 (JTBのMOOK)
もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から (朝日選書) コンスタンチン・サルキソフ
東郷平八郎 (ちくま新書) 田中宏巳
 
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模型 1/700 日本海軍 戦艦 三笠 (完成品) ピットロード
 
記念艦「三笠」観光について。
 日本海海戦に於いて連合艦隊旗艦として活躍したのが戦艦三笠。建造はイギリス。退役してからは横須賀で記念艦として保存され、太平洋戦争中大半の艦船が沈没する中で唯一現存する戦艦となった。
記念艦三笠公式ホームページ
横須賀・松山観光について
 

 

 
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お邪魔します。
円谷プロの映画ということで 戦時中の戦意高揚映画「ハワイ・マレー沖海戦」は有名ですが「太平洋奇跡の作戦 キスカ」をご存知でしょうか。もし未見ならぜひごらんになってください。ここでは特撮監督が円谷英二です。大変あと味の良い作品で 公開時には上映が終わると拍手が巻き起こったそうです。
余談ですが 陸上自衛隊広報センターへ参りましたら映像資料は今でも円谷プロ製作となっておりました。かつて軍需物資を日通が運び 今でも自衛隊が海外へ赴くときにはペリカン便が使われるように 過去からのつながりからか以心伝心のノウハウがあるのでしょう。
[ 2011/08/16 17:23 ] [ 編集 ]
amaria氏へ
 
 「キスカ」は爽やかな戦争映画です。

 敗戦国日本は、アメリカのようにノー天気に勝ってメデタシのエンタメ戦争映画は生理的に制作できませんでした。国民世論も許さなかった。必ず戦争批判や軍隊の暗部を入れなければならない。そんな訳で、日本では「ヤマト」や「ガンダム」などの戦争アニメが補っていた感があります。
 
 「キスカ」は人命救助がテーマですし、撤退作戦を成功させた実話がベースなのでラストも明るくできます。邦画の戦争映画の中では珍しく明るいラストの作品でしょう。 
[ 2011/08/18 17:32 ] [ 編集 ]
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