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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「さよならジュピター」 寂しさをまぎらわす時に〔9〕 

さよならジュピター
ハードSF映画を目指した意欲作。

 

 
【英題】BYE BYE JUPITER
【公開年】1984年  【制作国】日本国  【時間】129分  【監督】橋本幸治
【制作】田中友幸 小松左京
【原作】小松左京
【音楽】羽田健太郎
【脚本】小松左京
【言語】日本語 イングランド語
【出演】三浦友和(JS計画主任本田英二)  マーク・パンソナ(カルロス・アンヘレス)  キム・バス(ブーカー)  ウィリアム・タビア(エドワード・ウエッブ)  レイチェル・ヒューゲット(ミリセント・ウイレム)  岡田真澄(ムハンマド・マンスール)  平田昭彦(井上博士)  ポール大河(ピーター)  ディアンヌ・ダンジェリー(マリア)  小野みゆき(アニタ)  森繁久彌(世界連邦大統領)  
             
【成分】悲しい パニック 勇敢 知的 絶望的 切ない かっこいい 22世紀 木星 SF 
        
【特徴】邦画界と日本SF小説界が世界に通用する重厚かつエンターテイメントのハードSF映画を目指した作品。主題歌は松任谷由実氏が担当。

 主演の三浦友和氏とヒロインに扮するディアンヌ・ダンジェリー氏との無重力セックスが評判。日本のSF映画は子供が観るモノというイメージから脱却を図ろうとした。
  
【効能】夏の夜中に観ると浪漫をかきたてられるかもしれない。
 
【副作用】無重力セックスなどが出てきて大人映画を目指しているのだが、どこか子供じみた雰囲気に見えてしまい白ける。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ハードSF映画を目指した意欲作だったが・・。
 
 日本でのSFは非常に地位が低い。アメリカでは知識人の読み物というイメージもあるが、日本では悪い意味で子供やオタクの読み物という認識である。
 理由の一つとして、アメリカでは戦前から宇宙旅行や宇宙人ネタの小説が多く庶民の文化として定着していた事。二つ目に、戦後は米ソ宇宙開発競争などの政治的背景も重なって科学考証を重視するハードSFのジャンルが確立し、それを担う作家は科学者・技術者としての知識が必要になっている。
 象徴的な例をあげると、欧米でSF映画の金字塔といえば米国の「2001年宇宙の旅」やソ連の「惑星ソラリス」であり、子供には難解で退屈な内容である。日本でSF映画といえば子供を対象とした「ゴジラ」などの怪獣映画くらいで、ハードSFとなると「日本沈没」だけだろう。大人だけを観客対象にしたSF映画は日本では皆無である。

 SF小説家小松左京氏は日本のSFの地位が低い事を思い知っている人物である。「さよならジュピター」はかなり気合いを入れていたはずである。子供用の空想ファンタジーではなく、大人の観賞に耐えうるハードSFを目指していたはずである。子供用映画からの決別を意識してか、三浦友和氏と白人女優との無重力セックスの場面を用意し、公開前はかなり話題になった。(余談1)
 
 しかし、当時の評判はヒドイかった。CGや特撮は当時としてはかなり気合いを入れていた。ところが不運なのかアメリカの陰謀なのか、はたまた日本がパクっていたのか、同じ木星が舞台で木星を大陽にすることまで同じ「2010」がハリウッドでも公開された。前作「2001年・・」があまりにも有名だったために、完全に話題をさらわれてしまった。(余談2)
 
 さらに物語の構成と展開と演出の技術の差が出てしまった。残念だが、ハリウッドのCGが制作した木星のほうがリアルに見え、荘厳なBGMもあって迫力がある。決してCG技術が稚拙だった訳ではない。ショービジネスのアメリカの方が魅せ方が巧いのである。作画技術はアメリカに引けはとらない。問題はせっかく描いた精巧な絵を魅せる演出技術で後れをとった。
 次に、傾向として日本映画の欠点には緊迫感の描写が不得手というのがある。変な新興宗教が登場し、純朴な教祖の志を曲解した過激派信者たちが組織的破壊工作を展開するなど、エピソードとしては面白く終末感を訴えたい意図は理解できるのだが、緊迫感や悲愴感や焦燥感が伝わってこない。イマイチ評価が低い「ターミネーター3」のほうがリアルに伝わってくる。
 
 着想は良かったのだが、「2010」の影に隠れていたのと、物語の展開や演出や俳優の演技などに問題があり、「駄作」のイメージしか残っていない。今は情状酌量して佳作とすべきかな、と思っているが。
 
(余談1)ハードSFファンの友人は「日本SF界のために観に行くべきだ」と主張し、特撮ファンの友人は「日本映画の恥さらし小松左京はボイコットだ」と対立していた。あくまで私の周囲での話だが。
 
 必要以上に低い評価となった最大の原因は、もしかしたら「宇宙船=アングロ・サクソン」「日本人=卓袱台・着物・時代劇」なんて偏見が強くあるかもしれない。
 
(余談2)木星に火をつけてミニ大陽にする発想は、誰のオリジナルだろうか? 「2010」「さよならジュピター」以外にも、星野之宣氏の「巨人たちの伝説」にもあるが・・。いずれも発表時期も1980年前後だ。


 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
晴雨堂関連作品案内
2010年【ワイド版】 [DVD] ピーター・ハイアムズ
 
晴雨堂関連書籍案内
さよならジュピター〈上〉 (ハルキ文庫) 小松左京
さよならジュピター〈下〉 (ハルキ文庫) 小松左京
さよならジュピター―シナリオ版 (徳間文庫) 小松左京
巨人たちの伝説 (ジャンプスーパーコミックス) 星野之宣


 

 
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 「新宿ロマンで観ました」氏のコメントは当ブログのルールに抵触したため削除した。「当ブログの利用について(1)」を参照のこと。

 ただ、氏のコメントはありがちな誤解と思い込みと独りよがりの典型なのでサンプルとして以下再掲載する。


 「『ハードSF』の定義が間違っています。ハードな雰囲気のSFのことではなくて、ハードウェア優先、つまり人間ドラマ面は二の次で、SF的な理論や科学技術面の描写を優先させたSF作品をハードSFと言います。
 これは人間ドラマ優先の「さよならジュピター」とは対極にあるもので、つまりハードSFを目指したりはしていないのです。
 あと、ネット上での評判は悪いみたいですが、公開当時、映画館は大行列でしたし、上映終了後にブーイングもありませんでしたよ」


 まず、俺は「ハードな雰囲気のSF」などと一言も書いていない。ハードSFとは科学考証に忠実な作品を指すものと認識しているので、「ハードな雰囲気」とか「SF的な理論」などと曖昧な言い回しなんぞ使った事が無い。
 問題のレビュー上でも「科学考証を重視するハードSFのジャンルが確立し、それを担う作家は科学者・技術者としての知識が必要」と表現した。
 科学考証に忠実である事が大事なので、人間ドラマ優先とか科学技術優先云々は関係ない。(念のために言うと、科学考証と科学技術は意味違う。混同しないように)

 それ から俺もリアルタイムで観た人間なので、「新宿ロマンで観ました」氏が主張する「映画館は大行列」と「上映終了後にブーイングもありません」の目撃談はよく判る。俺もそれは目撃しているから。
 しかしだから良い映画の根拠にはならない。ジャニーズ系タレント主演の映画は、俺の周辺ではブーイングだが興行成績は悪くない。映画館で閑古鳥が鳴いている作品でも海外の批評家には高評価という事もある。それと同じだ。
 本作の場合、日本のSF界をはじめ各業界が総力を挙げて制作し興行を展開した超メジャー映画であり、、事前に巨費を投じて宣伝工作も打っているので大行列ができて当たり前や。

 それから「人間ドラマ優先の『さよならジュピター』とは対極にあるもので、つまり ハードSFを目指したりはしていないのです」ていうのも首を傾げる。
 小松左京氏は日本人の手による本格SF映画を作りたくて、科学考証面に尽力したのは当時から有名な話だ。
 そもそも、この言い回しでは「ハードSFは人間ドラマを軽視した作品」という偏見を「新宿ロマンで観ました」氏は抱いている疑念を抱く。 
 

 他人が言ってもいない発言を、勝手な思い込みと誤解ででっち上げ、その架空の発言に対して反論を述べる奇妙な事を行う人が多すぎる。
 
[ 2016/06/03 19:46 ] [ 編集 ]
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