晴雨堂の耕晴雨読な映画処方箋
 晴雨堂ミカエルの飄々とした耕晴雨読な映画処方箋。  体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。

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晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 映画好き・猫好き・ドイツビール好きです。よく晴れた爽やかな日はマウンテンバイクでサイクリングをしながら風景や野良猫を撮影します。
 リタイア後は田舎に帰り、晴天は畑仕事や庭いじり、雨天は読書や映画鑑賞の文字通り耕晴雨読の日々をおくるのが夢です。
 お金があれば郷里に「晴雨堂オタク記念館」を設立して地元の文化交流の発信基地にしたい、連れ合いは怒るだろうが。館長に任命してやるといったら言下に断られた。
 
 ブログを始めたのは2007年5月から、本格的に参考書に目を通しながら運営を始めたのは同年11月から、操作方法で度々ミスがあると思いますがご容赦のほど願います。
 現在、少しずつですがブログを観やすいよう整理を行なっています。


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2007年10月29日設置

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晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
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「ロッキー・ザ・ファイナル」-自身の中にエネルギーを感じよう 7
【2008/02/06 17:27】 映画・・自身の中にエネルギーを感じよう
原点へ・・。
 
 

 
 ロッキーがやっと戻ってきた。場末のドラマやポルノ映画などで下積みをおくっていた無名の映画人スタローン氏が、「ロッキー」で借金取りなどのアルバイトをしながらボクシングを続ける無名のボクサーを演じた。今回は往年のアクションスターが往年のチャンピオンを演じる。
 
 ボクシングを知っている友人の話によれば、映画のボクシングは全くありえない場面らしい。素人目で観ても、これはおかしい、これでは八百長に見える、と思った場面は幾つもある。
 しかし「ロッキー」で感動を覚えたのは、ロッキー=バルボアがスタローンそのものだったからだ。ロッキーの台詞は現実のスタローンの心の声でもあった。だからこそ、多くの人々に感動を与えた。
 
 その後、ロッキー貧しいイタリア系アメリカ人のサクセスストーリーから、次第に現実離れしたスーパーマン・アクションスターになっていく。その頂点がドルフ=ラングレン氏との共演だった。4作目は最もロッキーらしくない「国策映画」に等しい内容だった。5作目は何故つくったのか判らないせっかくの主人公が矮小化された奇妙なストーリーだった。(余談1)
 
 スタローン氏の他の作品も同じ事がいえる。「ロッキー」は単なるスポ根映画というだけでなく、ヒスパニック系市民の問題も反映した結構社会派の側面もあった。スタローン氏初期の作品にはその匂いがつねに漂っている。「ランボー」にしてもアメリカ先住民との混血である。
 
 「ロッキー」シリーズの成功から、スタローン氏は様々なアクションヒーローを演じつつせける。ボクサーや兵士・ギャング・刑事・レーサー・アルピニスト、コメディーにも手を出す。しかし、それなりに面白いがイマイチ感動できない。あまりにアメリカ人が喜びそうなヒーローキャラに徹しすぎたからかもしれない。
 
 そして、6作目にして本当のロッキーが帰ってきた。そこそこ儲かっているイタリア料理店のオーナーとして生活を営むリアリティな描写が延々続く。そしてふとしたことで、老骨に鞭打ち現役チャンピオンと互角の戦いを繰り転げる。
 過去の名声や、息子との確執など、おそらくスタローン氏自身も現実で同じ事を言われ、同じ事を周囲に訴えていたのではないかと思うほど、台詞が生々しい。これは一作目「ロッキー」でも強く感じた説得力だ。(余談2)
 
 例によって、試合は冷静に見たら「ええ?こんなん、ありえへんで!」と思うシーンばかりだったが、感動的なロッキー像に少しも影響は無かった。試合に至るまでの淡々とした日常描写と次第に盛り上がる練習の日々と、おそらく本気でロッキーを応援しているエキストラの熱気の前には、少々変なボクシングをやっても気にならない。
 
(余談1)たしか、最低映画監督に表彰された。
 
(余談2)実際、前作が最後のドラマになる予定だったし散々な結果に終わったので、6作目は周囲からの猛反対があったそうだ。
 それに、筋肉美は相変わらずだが、やはり肌や皮下組織に張りが無いのか、痛々しく見える。それがかえって映画にリアルだ。
 今回、新しい恋人の息子がジャマイカ人との混血で、ロッキーはジャマイカのことを知らず見当違いの受け答えをしたり、義兄が「メキシコ人にイタリア料理つくらせてるんだろう」と冷やかしたり、アメリカのマイノリティー社会の一面を覗かせる場面があった。
 
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「風の谷のナウシカ」-自身の中にエナジーを感じよう 6
【2007/12/04 14:17】 映画・・自身の中にエネルギーを感じよう
昔は駄作、今は秀作。



 
 この作品の評価は、私の友人知人の間では真っ二つに分かれる。環境保護運動関係の知人たちは高い評価をする。高校・大学時代の同人誌仲間は低い評価をする。評価が分かれる一番の原因は、「アニメージュ」連載の原作を読んでいたかどうかであろう。私は連載当初から原作漫画のファンだったので、残念ながら後者の立場である。
 
 他の作品のレビューでも書いたが、「原作」と「映画」は別作品と見なさなければならない。原作を見てファンになってしまった人は、映画化でそれ以上の完成度がないと納得できないからだ。逆に制作する側は「原作」の風味を損なわないようにするのは至難の技である。だから別作品であるという割り切りが必要である。
 
 この映画を公開時に観た時、私も他の同人誌仲間と同じく「宮崎駿は金儲けに走った」という印象を持ってしまった。原作はまだ連載が続いていたし、作品では未だ語られていない世界や人物や謎があった。あの時の段階でアニメ映画化などと、私には作品を損なうだけだと思っていた。そして観た感想も良いモノではなかった。当然である。
 
 原作がもつ壮大な世界観や多彩なキャラクターを2時間足らずの作品に収めるなど無理である。2時間枠に収めきれないモノは切り捨てられた。中央集権のトルメキア王国と封建諸侯の連合王国の土鬼との2大勢力の対立や、それぞれの王国が抱える権力闘争や社会不安は削除、そういう背景を抱えていたからこそ魅力的だったクシャナ王女もただの権力者に成り下がり、その部下のクロトワ参謀も単なるゴロツキ武辺者に成下がっている。また、そうしないと2時間枠には収らないだろう。
 
 原作ファンにとって、映画化されるにあたり最も嫌なのは、原作が持つスケールや深みが損なわれる事である。映画化という名の矮小化が嫌なのである。そうなってくると、絵柄も嫌になってくる。市販されている作画資料を見ると、衣装の質感に気遣いがあったが、それでも原作で表現されていた厚手のフェルトのような装束が、アニメになると安っぽく見える。
 
 公開から20年以上が経過した今、ようやく冷静にこのアニメ映画を「作品」として観れるようになった。原因の一つに、時間の経過とともにやっと原作のイメージから自由になり、正当にアニメを観る事ができるようになったからだ。それと、原作の終わり方に納得できなかった事が映画への悪感情を和らげる効果があった。
 
 作品というのは、公開時だけでは評価はできないかもしれない。時間が経過したり、齢を重ねた事で再評価することも多々ある。もっとも、作品によってはどう考えても評価が変わらない駄作もあるが。
 
1984年 日本映画 116分
監督 宮崎駿
原作 宮崎駿
音楽 久石譲
脚本 宮崎駿
島本須美(ナウシカ
辻村真人(ジル)
松田洋治(アスベル)
京田尚子(大ババ)
納谷悟朗(ユパ)
永井一郎(ミト)
宮内幸平(ゴル)
榊原良子(クシャナ)
八奈見乗児(ギックリ) 矢田稔(ニガ)
吉田理保子(少女C/トエト) 菅谷政子(少女A) 貴家堂子(少女B) 坂本千夏(少年A)
TARAKO(少年B) 冨永みーな(ラステル) 寺田誠(ペジテ市長) 坪井章子(ラステルの母) 
家弓家正(クロトワ) 水鳥鉄夫(コマンドA) 中村武己(ペジテ市民) 太田貴子(ペジテの少女)
島田敏(ペジテ市民) 野村信次(トルメキア兵) 鮎原久子(少年) 大塚芳忠(トルメキア兵)




 

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「マルコムX」-自身の中にエネルギーを感じよう 5
【2007/12/03 15:23】 映画・・自身の中にエネルギーを感じよう
「マルコムX」公開からから幾年月を経て・・。
 
 

 
 2007年日本公開の「ドリームガールズ」を観ると「マルコムX」を連想してしまう。マルコムXとは60年代に活躍した黒人解放運動家でアメリカのイスラム教徒指導者である。「X」は本当の姓(ファミリーネーム)が不明という意味だ。先祖がアフリカで奴隷狩りに遭ってアメリカへ売られ本名を捨てさせられ代わりに英語式名前をつけられた事への抵抗だ。アレックス=ヘイリーの「ルーツ」でもそのエピソードが紹介されている。
 
 少し話が逸れるが、前置きの話を長めにする。デンゼル=ワシントン氏が主演した「クリムゾン・タイド」に興味深い場面がある。この作品では彼は潜水艦副長の役をやっていた。進まない機械修理に投げやりになった若い部下に「俺はカーク船長だ。君はスコッティだ」と言って励ます。カーク船長というのは60年代のTVドラマ「スタートレック」の主人公で宇宙船の船長だ。スコッテイ(日本語版ではチャーリー)は彼の部下で機械専門の技術主任。
 
 SFドラマ「スタートレック」の位置付けは、日本の「宇宙戦艦ヤマト」や「ガンダム」に相当するだろうが「スタートレック」視聴者の中心はハイティーンから30代であるので、アメリカ社会への影響力は非常に強い。
 
 観ていた人は気付くだろうが、アメリカ知識人の良心の呵責というか、いじらしさが出ている。というのも主人公カーク船長はいかにもアングロサクソン系の若いエリート士官だが、彼の上司にしばしば黒人が登場する。それだけでない、科学者・技術者・医師などの知識人にも黒人が登場する。(60年代のアメリカではあまり見られない光景)
 
 このドラマのエピソードに、リンカーン大統領が24世紀のカーク船長の前に突如現れる場面がある。カーク船長は一応相手をリンカーンとして扱い歓迎する。宇宙船に入ったリンカーンは出迎えたカークの隣にいる黒人のウラ中尉(原版ではウフーラ大尉、20歳代の黒人女性を将校役にするのは当時としては斬新)に向かって「これは可愛い黒人娘だ」と口にしてしまってから慌てて「非礼」を謝る。そのときウラ中尉は「『黒人』と呼ぶ事が何故いけないのでしょうか? 言葉にタブーはありません」と嗜める。隣のカーク船長が続けて「閣下、我々はやっと人種的偏見を克服しました」とにこやかに言う。
 
 マルコムXが殺されたのは1965年、「スタートレック」が放送されたのは彼が亡くなってから2年くらい後である。仮に存命であっても、マルコムXを取り巻く環境を考えたら呑気にTVドラマを観ている暇はないだろうし、観たとしても彼の目には偽善的ファンタジーにしか映らず顔を顰めて苦笑いするかもしれない。なにしろキング牧師を「甘い!」と批判する人だ。そのキング牧師の言動にしても、日本人の言論感覚から観たら決して穏健ではない。
 
 黒人解放でメジャーなのはキング牧師であり、マルコムXはマニアックな過激派とのイメージがあった。アレックス=ヘイリーの「ルーツ」でも過激な解放運動家として登場し殺されるエピソードが日本でも放送されたのだが、あまりに短いので憶えている人はあまりいないだろう。それが、スパイク=リー監督とデンゼル=ワシントン氏の英断のおかげで、マルコムXは一時的に日本でメジャーになった。Tシャツなども売られるようになった。
 
 で、今だが、パッと見にはアメリカの黒人差別問題は改善されているように思える。象徴的な例を言えば、保守である共和党ブッシュ政権の懐刀は黒人女性のライス国務長官といわれており、ブッシュ政権の次期を狙う民主党大統領候補にはまだ学生のような若々しさが残る黒人のオバマ氏が出馬した。アメリカを取材した知人のジャーナリストは「あからさまな差別は目にしなくなった」と言っていた。
 だがその一方で、閑静な白人だけの中流家庭が集る町に黒人一家が越してこようとすると住民の反対を受けるという噂をしばしば耳にする。

 一方、日本ではマルコムXが話題になるのは殆ど無い。デンゼル=ワシントン氏の代表作なのだが、デンゼルのファンでも取り上げる人は私の周りでは少ない。
 日本では韓流ブームとかで韓国映画が流行っている。韓国映画も当然の事ながら他の国々と同じく駄作もあるが秀作もある。評判を耳にする度に、どうも韓国映画に限っては正当な批判というよりも、あからさまに不快感をただぶつけているだけのような気がする。
 逆に中国へ留学した知人からは、韓国人留学生から暴言や脅しを受けたと聞く。知人はどちらかといえば旧日本軍の戦争責任を追及する「サヨク」的志向の人物なのに。双方の不信感を煽るようなキッカケが発生すると報復連鎖がはじまる。
 
 作品が社会に対しどれだけ反映されていくのか? 作品を発表する事で何か変わる事があるのか? 水前寺清子氏の歌にある「3歩進んで2歩さがる」を繰り返しながらも、少しは解決の方向に進んでいるのか? 未だ結論は出ていない。

監督 スパイク・リー
製作総指揮 − 原作 アレックス・ヘイリー
音楽 テレンス・ブランチャード 脚本 アーノルド・パール 、スパイク・リー
トミー・ホリス(−)
ジェームズ・マクダニエル(−)
デビ・メイザー(−)
ジェームズ・E・ゲインズ(−)
ジョー・セネカ(−)
ラターニャ・リチャードソン(−)
ウェンデル・ピアース(−)
レナード・トーマス(−)
クレイグ・ワッソン(−)
デヴィッド・パトリック・ケリー(−)
ピーター・ボイル(−)
カレン・アレン(−)
クリストファー・プラマー(−)
デンゼル・ワシントン(−)
アンジェラ・バセット(−)
アル・フリーマン・Jr(−)
アルバート・ホール(−)
デルロイ・リンドー(−)
ケイト・ヴァーノン(−)
テレサ・ランドル(−)
スパイク・リー(−)
ロネット・マッキー(−)
ヴィンセント・ドノフリオ(−)
オシー・デイヴィス(−)
ジャンカルロ・エスポジート(−)
 
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完訳マルコムX自伝 (上) (中公文庫―BIBLIO20世紀)
 キング牧師とマルコムX (講談社現代新書)
 

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「ブレイブハート」-自身の中にエナジーを感じよう 3
【2007/11/29 03:22】 映画・・自身の中にエネルギーを感じよう
メル=ギブソン氏の名演技に注目。
 
 

 
 メル=ギブソン氏が監督主演の二足のわらじで放つ名作。ハリウッドは制作者としての彼を大絶賛したが、観客はぜひ彼の演技も賞賛してほしい。
 
 13世紀のスコットランドが舞台で、隣国イングランドの侵略と植民地化への抵抗に立ち上がった実在の英雄物語である。ストーリー展開はカーク=ダグラス氏主演の「スパルタカス」とダブる部分が多い。メル=ギブソン氏は少年時代に「スパルタカス」を観て感動し、本作品制作にあたっては随分参考にしたとインタビューで語った。
 私も「スパルタカス」に感涙した一人であり、スコットランドの歴史を知っているので、観る前から展開と結末が予想できる。にも関わらず泣いてしまう場面が多すぎた。これはメル=ギブソン氏らの演出と演技の賜物である。
 
 まず、子役の使い方が旨いし子役もそれに応えて良い演技をしている。主人公ウォレスは最初10歳くらいの少年で登場する。大好きだった父親を殺されて茫然となり、涙も流さず父親の遺体の胸の辺りを触りすぐに手を離すのは効果的だ。死を思い知らされる雄弁な場面である。また、人間は大きな悲しみに押し潰されると逆に泣いたり騒いだりはできないものである。むしろ喜怒哀楽が顔から消える。
 
 父親たちの葬式の時もウォレス少年は黙ったまま、親友が慰めても反応は無い。そこへ6つか7つくらいの幼馴染みの少女が小さな手で花を一輪手渡す。この少女の表情も幼子とは思えない良い演技だった。このとき少年は緊張が解けたのか我に返ったのか、目からにわかに涙が滲み流れ出す。
 
 親兄弟を失った少年を突然現れた伯父が引き取る。初対面の伯父に戸惑うも、「お前のお祖父さんが殺された時も見送った」との台詞で、二人の間の垣根は取り払われるともに、観客にはイングランドとスコットランドの関係も雄弁に表す。
 成人したウォレスをメル=ギブソン氏が演じるのだが、最初観た時は「えらく老けた青年だ」と思った。この時の設定年齢は20歳代と思う。しかし当時の衛生状態と栄養状態を考えれば、20歳を過ぎれば急速に老けてくる。現在より10歳以上は加算したほうが良いので、それならギブソン氏で妥当なのだろう。
 
 ギブソン氏の演技で特筆なのは瞳である。紹介したい場面は無数にあるが、中でもウォレスの良き理解者であり盟友でもあったブルース伯爵の裏切りの時の表情である。
 物語の展開上、大事な決戦の時にブルース伯爵が現実に妥協して敵側に寝返る事は多くの観客が予想できたであろう。そんなありふれた場面をギブソン氏の演技で壮絶な場面にしている。私は映画館で泣いてしまった。本来はスコットランド軍を率いるべきブルース伯爵がイングランド王の従騎士として戦に参加していた。
 この平凡な場面で、ギブソン氏は非常に痛々しい表情を見せる。ブルース伯爵を怒り露に罵るでなく、睨み付けるのでもなく、ただ定まらない視点、声を発しようにも出ず、やがて瞬きしながら半泣きのような顔でへたり込む。まさに絶望と無力感にうちひしがれた顔である。
 
 ギブソン氏の演出も光ったものは数多くあったが、中でも効果的なのはシンプルでも印象深い剣の描写である。ウォレスを象徴するあの長剣、あれはクレイモアと呼ばれていてスコットランド勇士の象徴である。聞くところによると、重くて長いため大男の手練でないと使いこなせず、中国三国志の関羽が持つ青龍刀のような存在かもしれない。クレイモアはスコッチウイスキーの銘柄にもなっている。
 
 ウォレスがスターリングの戦で大勝して戦友等に向かってクレイモアを片手に高々とあげて雄叫びを発し、力強く地面に突き刺してから戦友らのもとへ歩み出す。画面には血染めのクレイモアだけが青空を背景に揺らいでいる。
 
 ラストの場面では、ウォレスの遺志を継ぎかつての盟友ブルースがイングランド軍に対して突撃を行おうとする。従軍していたウォレスの親友がウォレスの形見のクレイモアを投げ、草原に突き刺さったところでブルースが剣を抜き、ウォレスの戦友たちが「ウォレス!」と合唱し突撃する。最後に誰も居ない草原に突き刺さったままのクレイモアが風に吹かれている様が映ってエンドへと流れる。ヒロイックファンタジーでもなかなか剣をここまで印象的に描写できない。
 是非、皆さんも観てほしい。
 
 余談だが、この映画で素晴らしい脚本を書いたランドール=ウォレス氏は珍作「パールハーバー」の脚本も担当している。
 エキストラの数は「青き狼・・」よりもずっと少ないが、はるかに迫力がある。
 
1995年 アメリカ映画 177分
監督 メル・ギブソン
音楽 ジェームズ・ホーナー
脚本 ランドール・ウォレス
ドナル・ギブソン(−)
メル・ギブソン(ウィリアム・ウォレス)
ソフィー・マルソー(イザベラ王女)
パトリック・マクグーハン(エドワードI世)
キャサリン・マコーマック(ミューロン)
ブレンダン・グリーソン(−)
アンガス・マクファーデン(−)
デヴィッド・オハラ(−)
イアン・バネン(−)
ジェームズ・ロビンソン[俳優](−)
トミー・フラナガン(−)
ジェームズ・コスモ(−)
ジェラルド・マクソーリー(−)
 
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スコットランド 歴史を歩く (岩波新書)
図説 スコットランドの歴史
 

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「地雷を踏んだらサヨウナラ」-自身の中にエネルギーを感じよう 2
【2007/11/25 17:27】 映画・・自身の中にエネルギーを感じよう
浅野忠信氏に敬意を表したい。
 
 

 
 ほとんどが英語とクメール語の台詞だけ、浅野忠信氏は非常に頑張ったと思う。
 
 カンボジアを舞台にした映画は他に「キリング・フィールド」がある。学生時代、これはとても評判で観たが、私には不快感ばかりを感じた。たしかに作品としては完成度が高くリアリテイもあったが、気に入らないのはカンボジア人ジャーナリストが主人公白人記者の「従者」になっていたことだ。私は腹立たしい。
 世間では「友情」と評価していたが、どこが友情か? ハリウッドが評価する映画でアジアを舞台にしたものは駄作が多いが、程度の差はあれアジア人は従者扱いだ。比較的マシだった「ブラックレイン」でも高倉健氏はマイケル=ダグラス氏の助手扱いだった。
 
 その点、この浅野忠信氏演じる一ノ瀬泰造カンボジアやベトナムの友人はイーブンで描かれていた。泰造はクメール語で話し、英語を解せる友人には話しやすい英語で話す。泰造はフォトジャーナリストというよりも無邪気な若い風来坊としてカンボジアやベトナムに現れ、周囲に親しまれる。日本からやってきた変な奴だけど憎めない若者として。
 若い頃に旅や冒険に憧れて、日本一周や世界一周に出かけた方は大勢いると思う。私も一眼レフ2台をフロントバックに入れてチャリンコの日本一周をやった。そんな頃とダブってしまう。
 
 泰造が書いた手記「地雷を踏んだらサヨウナラ」も、母親一ノ瀬信子氏が書いた「わが子泰造よ!」も読んだ。映画では泰造のアクの強さが薄められ、カンボジアの官憲やクメールルージュの狂暴性が強調されてしまったような感がある。また、取って付けたような不自然なエピソードも幾つかあって熟れきっていない部分はあったが、ベトナム戦争やカンボジア内戦、そこで生きる民衆の生活と感情、よく再現できていた。テーマ曲も素晴らしく、この曲は今でも様々な番組のBGMで使われている。
 
 浅野忠信ファンにとっても必見ではないだろうか。実際の泰造も浅野忠信氏と雰囲気は似ていた。ただ泰造に興味を持った方は「TAIZO」の方を薦める。
 
1999年 日本映画 111分
監督 五十嵐匠
製作総指揮 −
原作 一ノ瀬泰造
音楽 安川午朗
脚本 丸内敏治 、五十嵐匠
浅野忠信(一ノ瀬泰造
川津祐介(父)
羽田美智子(姉)
市毛良枝(母)
矢島健一(−)
ロバート・スレイター(報道カメラマン
ソン・ダラチャカン(ロックルー カンボジアの友人)


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