晴雨堂の耕晴雨読な映画処方箋
 晴雨堂ミカエルの飄々とした耕晴雨読な映画処方箋。  体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。

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晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 映画好き・猫好き・ドイツビール好きです。よく晴れた爽やかな日はマウンテンバイクでサイクリングをしながら風景や野良猫を撮影します。
 リタイア後は田舎に帰り、晴天は畑仕事や庭いじり、雨天は読書や映画鑑賞の文字通り耕晴雨読の日々をおくるのが夢です。
 お金があれば郷里に「晴雨堂オタク記念館」を設立して地元の文化交流の発信基地にしたい、連れ合いは怒るだろうが。館長に任命してやるといったら言下に断られた。
 
 ブログを始めたのは2007年5月から、本格的に参考書に目を通しながら運営を始めたのは同年11月から、操作方法で度々ミスがあると思いますがご容赦のほど願います。
 現在、少しずつですがブログを観やすいよう整理を行なっています。


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2007年10月29日設置

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晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段5項目は晴雨堂の日常です。

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「戦場のピアニスト」-
【2008/06/03 09:39】 映画・・人生に絶望したときに観よう、元気が出るかも
映画史に残る傑作なのだが・・。
 

 
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「K-19」-
【2008/05/27 18:23】 映画・・人生に絶望したときに観よう、元気が出るかも
潜水艦映画史に残るべき傑作
 

 
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「アラモ(2004年)」-
【2008/03/08 23:22】 映画・・人生に絶望したときに観よう、元気が出るかも
歴史超大作アラモ
 

 
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「スパルタカス」-
【2008/02/19 19:21】 映画・・人生に絶望したときに観よう、元気が出るかも
普遍的テーマの傑作ローマ史劇
 
 

 
 ローマ史劇は多数製作されている。中でも有名なのはキリスト教をテーマにした「ベン・ハー」「クォ・ヴァディス」「聖衣」、ローマ帝国衰亡の兆しを描いた「ローマ帝国の滅亡」「グラディエーター」、退廃のローマをポルノチックに描いた「カリギュラ」「サテリコン」。
 その中でこの「スパルタカス」は異色であると同時に、たぶん世界中で共感される傑作だろう。何故なら、前述の諸作品はキリスト教圏の観客が対象だが、「スパルタカス」がテーマとする被支配者の解放と自由は世界中の人々が抱く普遍的テーマだからだ。(余談1)
 
 前半の非人間的で非情かつ過酷な剣奴(余談2)の生活、中盤で主人公がついにキレて反抗し仲間たちも呼応して大規模な反乱へと発展、周辺の奴隷たちがスパルタカスの下へ集まり、剣奴の格闘技知識を生かして強力な「解放軍」が誕生、ローマ正規軍に連戦連勝する。
 しかし、ローマは有能な軍人政治家クラサスがローマ軍全指揮権を掌握し、狡猾な謀略でスパルタカスの友軍を買収して追い詰め、老獪な戦術でスパルタカス軍を攻囲殲滅する。
 
 監督は当時30歳の若きスタンリー=キューブリック氏。至るところに大胆かつ繊細な描写が光る。一見すると肥え太って野卑で成金的な役柄のピーター=ユスチノフ氏やチャールズ=ロートン氏が人間的で現実主義者、潔癖で理想主義者の軍人貴族に扮するローレンス=オリヴィエ氏が冷酷さと虚栄心の固まりの本性を現し、スパルタカス扮するカーク=ダグラス氏の純情で一途に自由を求める姿勢、凛とした瞳の光を見せるヒロインのジーン=シモンズ氏。これら人物設定と相関関係は本来複雑なのだが、組み立て方が良いので判り易い。
 
 特に圧巻なのは、最後の決戦を前にしてのスパルタカスとクラサスの演説が交互に同時進行ではじめられる。クラサスは整列する軍団兵を前にしてローマの威信と秩序と名誉のため勝利することを宣言する。スパルタカスは大勢の仲間を前に深刻な状況を真正直に打ち明け、ローマ軍を打ち破りイタリア全土の奴隷解放をぶち上げる。
 決戦はスパルタカスの大敗となり、スパルタカスをはじめ捕虜は全員磔刑に処される。クラサスに囚われたスパルタカスの妻バリニアは、クラサスの政敵の計らいで脱出し、まだ息のあるスパルタカスに向かって赤ん坊を見せ、腹から搾り出すような低い声で「この子は自由よ。自由・・」と潤ませながらも闘志あふれる凛々しい瞳でスパルタカスを見つめる。(余談3)

 「死ぬことは、自由人たちにとっては楽しい人生の終わりだが、奴隷にとっては苦痛からの解放だ。だから戦に勝つ」の台詞に代表されるスパルタカスの信念と決意は、おそらく世界中で支持共感されるだろう。
 この映画に感動した少年が、後に俳優となり監督して「ブレイブハート」製作を手がけた著名な映画人メル=ギブソン氏の逸話は有名である。
  
(余談1)世界史上でも特筆すべき農民や奴隷の大規模な組織的反乱は、東に中国秦時代の陳勝の乱、西にスパルタカスの乱がある。しかし陳勝は王を号して秦に取って代わる支配者になろうとしたが、スパルタカスは文献を見る限り王になる意志は無く、あくまで奴隷解放とローマからの脱出、故郷への帰還だった。だから、搾取者から労働者を解放する事が建前の共産圏諸国ではスパルタカス研究が盛んだった。
 そういう意味では、ハリウッドが巨費を投じて製作したというのは今から考えると興味深い事件かもしれない。
 
(余談2)殺し合いを見世物にする奴隷。ローマ市民は格闘技か闘牛を鑑賞するかのような感覚で狂喜していた。帝政期になると奴隷ではなく職業として従事するローマ市民も現れる。4世紀中頃からキリスト教勢力の拡大とともに廃れ禁止される。
 
(余談3)日本語吹替えの声優は、まるで「御奉行様、ありがとうごぜぇますだ」に近い語調で台詞を言っていた。不愉快である。やはり、「自由」の概念が市民革命を経験した欧米と、そうでない日本の差なのか? しかし日本でも自由民権運動があるんだけどなぁ。
 
晴雨堂の関連書籍案内
スパルタクスの蜂起―古代ローマの奴隷戦争 (1973年)
 
 


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「砂漠のライオン」-人生に絶望したときに観よう、元気が出るかも 13
【2008/02/04 00:40】 映画・・人生に絶望したときに観よう、元気が出るかも
リビアと米国の貴重な合作映画
 
 

 
 この映画は実在のアラブの英雄が主人公であり、リビアとアメリカという異色の合作(余談1)で、ハリウッド俳優アンソニー=クイーン氏がアラブの英雄に扮する。リビアが製作に加わり、監督がアラブ出身だけあって、イタリア占領下リビアの描写は概ね忠実である。たぶん、アラブ人にも鑑賞に堪えうる作品だろう。
 
 主人公はオマル=ムフタールで、リビアではカダフィ大佐とならんで独立の父と呼ばれている。最高額紙幣に印刷されているほどの偉人(余談2)であり、白い髭が特徴だ。つまりアンソニー=クイーン氏はアラブの老師を演じているわけで、若者や壮年がヒーローを務める事が多いハリウッド映画とは色合いが全く違う。実際にこの映画にラブロマンスは出てこない。
 
 史実では、古代ローマ帝国の栄光を取り戻すこともスローガンにしているファシスト・イタリアの侵略に対して、オマル=ムフタールはゲリラ戦で抵抗した。コーランの先生であり、いわば読み書きできる知識人だ。老獪な戦略と戦術で、近代兵器で武装したイタリア軍を翻弄し苦しめたが、オマールを支援するリビア民衆を収容施設に閉じ込め、補給路を完全に潰されたために敗退し捕虜になる。(余談3)
 法廷では毅然とした態度がイタリア側の記録でも讃えられている。弁護を担当した法務部大尉が「国家反逆罪ではなく戦時捕虜として扱うべきだ」と踏み込んだ発言をしたために処罰された。(余談4)
 
 たぶん、アンソニー=クイーン氏のオマル=ムフタールはリビア人が観ても違和感は無いと思う。激しい怒りと闘志を内に秘めながら冷静かつ穏やかな物腰で戦闘を指揮する様は当事国でも感動を呼ぶだろう。「ブレイブハート」や「スパルタカス」で登場するヒーローは純情で情熱型だが、落ち着いた好々爺がヒーローというのは珍しい作品だ。
 
 ムフタールの部隊を追い詰めるイタリア軍の将軍をオリバー=リード氏が扮する。「スタートレック」のウイリアム=シャトナー氏に容姿が似た堂々とした風貌で、やり手で手段を選ばない軍人を演じる。
 ようやくムフタールを捕らえ司令官室で対面するときが支配者と被支配者との対立が雄弁に描写された名場面だ。ムフタールに会う直前は緊張していたくせに、ムフタールが連行されてくる直前、さも忙しそうに事務作業をして、いかにも「忙しいが会ってやっるんだ」と言いたげに格好をつけ、勝者の姿を見せようとする。ムフタールは淡々と普段と同じ調子で話をするのに対し、将軍はやたらと寛大さを見せようとオーバーアクションをする。侵略者の卑屈さとムフタールの高潔さを表す場面だ。(余談5)
 
 欧米とアラブが協力して製作した史実に忠実な秀作、今となっては稀有な映画である。
 
(余談1)アメリカはリビアを敵視しており、リビアの事実上の元首カダフィ大佐をテロ支援者と見なしている。表面上はカダフィ大佐の微笑外交で諸外国との関係改善が進んでいるが。
 
 監督はシリアのムスタファ=アッガド氏、ハリウッドにも顔が利く存在である。残念ながら一昨年、爆弾テロに巻き込まれて死去。
 
 主人公アラブの英雄を演じたのはアンソニー=クイーン氏。スパニッシュ系の濃い風貌から、よくインディアン・中国人・マフィアのボスなど「非アングロ・サクソン系」キャラを担当することが多かった。ギリシアを舞台にした「その男ゾルバ」はハマリ役である。
 
(余談2)カダフィ大佐はムフタールよりランクの低い紙幣に自分の顔を印刷をさせている。
 
(余談3)アメリカもベトナムで同じ戦術を使っている。「戦術村」を作って村人を収容し、北爆(ハノイ政権への爆撃)などを展開して補給路の断絶を図った。
 
 軍事マニアにとっては、イタリア軍のショボイ戦車の群れとエリート将軍の負けっぷりで、イタリア軍の弱さとロンメルの優秀さを見るだろう。
 
(余談4)こういう類の映画を侵略者側が製作すると、かならず「良い白人」を登場させて免罪符にする。白人を悪者ばかりにしたら、金払いの良い白人観客層に受けないし、いたずらに白人への敵意ばかりが目立つ。たとえば北朝鮮や中国などの戦争映画に登場する日本軍は好例だろう。
 この「砂漠のライオン」の場合は、実際にあったエピソードであるので免罪符意図はあまりない。
 
(余談5)公開処刑されたとき、ムフタールの手から愛用のメガネが落ちる。それを10歳くらいの少年が持って帰る。ムフタールからカダフィ大佐へとバトンタッチした事を暗示する場面と言われている。しかし、ムフタールが処刑されたときは、まだカダフィ大佐は産まれていない筈だが。
 

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