「空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎」 美術鑑賞映画〔13〕
絢爛豪華な唐の都の再現
【原題】妖猫传
【英題】LEGEND OF THE DEMON CAT
【公開年】2018年
【制作国】中華人民共和国 日本国
【時間】129分
【監督】陳凱歌
【制作】
【原作】夢枕獏
【音楽】クラウス・バデルト
【脚本】陳凱歌 王蕙玲
【言語】中国語 一部日本語
【出演】染谷将太(空海) 黄轩(白楽天) 张榕容(楊貴妃) 阿部寛(阿倍仲麻吕)
【成分】
【特徴】夢枕獏氏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を実写映画化。
中国でも名の知れた日本人僧侶空海を主要キャストに、空海が留学した当時の唐の都長安を再現、壮大で絢爛豪華な空間描写が素晴らしい。
空海が登場するので宗教がらみの伝記映画と早合点する人も少なくないだろうが、内容は豪華なエンタメである。空海の役どころは僧侶というよりはシャーロック・ホームズであり、白楽天がドクター・ワトソンの如く空海の相棒となり長安で発生する怪異事件を調査する。
夢枕獏氏「陰陽師」の空海版と考えれば早いだろう。
日本では空海を演じる染谷将太氏を主役として配給しているが、中国では白楽天を演じる若手俳優黄轩氏が主役となっている。日本では日本語吹替版しか劇場公開されていないが、原版では染谷将太氏も阿部寛氏も唇の動きから中国語台詞で演技をしていた。(ただし中国人声優によってアテレコされている可能性がある)
監督は「黄土地」などで日本にも根強いファンがいる陳凱歌氏。晴雨堂もそんなファンの一人なのだが、「黄土地」や「大閲兵」の地味な人民中国世界を描写した「文藝作」を撮っていた青年監督が、今や贅を尽くしたエンタメ映画を撮る老監督になるとは、面白くもあり寂しくもある。
【効能】壮大な大唐の都長安の再現画像や唐の美しい貴婦人たちを目にして豊かな気分になる。
【副作用】。
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「オリンピア」 美術鑑賞映画〔12〕
現代オリンピックショーの始まり。
【原題】FEST DER VOLKER-OLYMPIA TEIL I (第一部「民族の祭典」)
【原題】FEST DER SCHONHEIT-OLYMPIA TEIL II (第二部「美の祭典」)
【通称】Olympia (一部・二部合わせた通称)
【公開年】1938年 【制作国】独逸 【時間】第一部111分 第二部90分
【監督】レニ・リーフェンシュタール
【制作】レニ・リーフェンシュタール
【原作】
【音楽】
【脚本】レニ・リーフェンシュタール
【言語】ドイツ語
【出演】
【成分】かっこいい 楽しい ファンタジー 1936年 ドイツ・ベルリン
【特徴】ナチス政権下のベルリンオリンピックを記録した伝説的映画。ヒトラーお抱え映画人の悪名を背負って戦後は映画界から追放されたレニ・リーフェンシュタール監督の伝説の作品。
史上初の本格的なオリンピック記録映画であり、現代では当たり前の技法がぎっしり詰まっている。但し、当時の技術でドキュメントとして撮影するのは不可能な映像なので、彼女の秀逸な編集技術以外に記録映画としてはあってはならない再現撮影も行っている。
いずれにせよ、彼女の作品からオリンピック記録映画が始まった。
【効能】1930年代の映像とは思えない斬新さに驚愕する。プロパガンダ臭やユダヤ人差別臭が無いのに拍子抜けする。
【副作用】単調で暗くてテンポが悪い。ナチスドイツやヒトラーを想起して気分が悪くなる。
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「オブリビオン」 美術鑑賞映画〔11〕
久々のハード風SF。
【原題】OBLIVION
【公開年】2013年 【制作国】亜米利加 【時間】124分
【制作】
【監督】ジョセフ・コシンスキー
【原作】ジョセフ・コシンスキー
【音楽】
【脚本】カール・ガイダシェク マイケル・デブライン
【言語】イングランド語
【出演】トム・クルーズ(ジャック・ハーパー) モーガン・フリーマン(ビーチ) オルガ・キュリレンコ(ジュリア) アンドレア・ライズブロー(ヴィクトリア) ニコライ・コスター=ワルドー(サイクス軍曹) メリッサ・レオ(サリー) ゾーイ・ベル(-)
【成分】ファンタジー 不思議 知的 切ない SF
【特徴】「トータル・リコール」を連想するどんでん返しありのハード風SF。藤子F不二雄氏のSF短編を連想してしまう雰囲気。荒廃した地球の描写が美しい。
但し、大作の割に地味な作品に見えるかもしれない。
【効能】深夜に観ると、孤独を楽しむ事ができる。自分自身の人生を見直すきっかけになるかもしれない。
【副作用】地味で拍子抜け。凡庸な内容でがっかりする。
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「クレオパトラ」 美術鑑賞映画〔10〕
当時は大失敗作、今は伝説の大作。
【原題】CLEOPATRA
【公開年】1963年 【制作国】亜米利加 【時間】244分
【監督】ジョセフ・L・マンキウィッツ
【音楽】アレックス・ノース
【脚本】ジョセフ・L・マンキウィッツ シドニー・バックマン ロナルド・マクドゥガル
【出演】エリザベス・テイラー(クレオパトラ) レックス・ハリソン(シーザー) リチャード・バートン(アントニー) ケネス・ヘイグ(ブルータス) パメラ・ブラウン['17](巫女) フランチェスカ・アニス(侍女) ジョン・カーニー(フォイブス) ジョン・ドーセット(アキレス) ハーバート・バーゴフ(テオドトス) ヒューム・クローニン(ソシゲネス) マーティン・ランドー(ルフィオ) ジョージ・コール(フラウィウス) チェザーレ・ダノーヴァ(アポロドロス) アンドリュー・キア(アグリッパ) ロディ・マクドウォール(アウグストゥス) ロバート・スティーヴンス(ゲルマニカス) グレゴワール・アスラン(ポティナス) マーティン・ベンソン(ラモス) ジョン・ホイト(-) キャロル・オコナー(-)
【成分】スペクタクル ゴージャス パニック 勇敢 知的 セクシー かっこいい ローマ史劇 ローマ時代 紀元前1世紀 エジプト
【特徴】当時の特撮技術とエキストラ動員力など、湯水の如く資金を投下して制作された超贅沢映画。もし同じような条件で現代の映画界が制作したら、数カ国合作でないと追いつかない。
公開当時は興行成績トップであったにも関わらず、投下資金は回収されず大赤字。フォックス社は一時存亡の危機を迎えただけでなく、「十戒」「ベン・ハー」「スパルタカス」など古代史劇の名作を発表し続けたハリウッド全体にも衝撃を与えてしまい、ローマ史劇は衰退する。
若きマーティン・ランドー氏が出演、「スペース1999」「スパイ大作戦」などのファンにとっては感激。
【効能】豪華な気分に浸れる。
【副作用】知的なクレオパトラを期待していた古代史ファンには、エリザベスのクレオパトラは妖艶さが強調され過ぎて残念。
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「王妃の紋章」
唐滅亡後の絢爛豪華な血生臭い王朝絵巻
【原題】満城尽帯黄金甲
【公開年】2006年 【制作国】中・香 【時間】114分 【監督】張藝謀
【音楽】梅林茂
【脚本】張藝謀 曹禺
【出演】周潤發(国王) 鞏俐(王妃) 周杰倫(次男・元傑王子) 劉(長男・元祥王子) 李曼(蒋嬋) 倪大紅(蒋医師) 陳謹(蒋氏) 秦俊杰(三男・元成王子)
【成分】悲しい スペクタクル ゴージャス ロマンチック パニック 不気味 勇敢 セクシー 時代劇 10世紀 中国
【特徴】悲劇の国王には周潤發氏(チョウ・ユンファ)が、愛憎の渦中に置かれる王妃には張藝謀監督初期作からお馴染みの鞏俐氏(コン・リー)が扮する。周潤發氏は王様が似合う貫録俳優になった。鞏俐氏が若々しいのにビックリする。
絢爛豪華な王朝絵巻の裏の血生臭さは、中国宮廷劇の真骨頂。
【効能】ゴージャスな映像で心が豊かになる。有史以来続いている人間社会の暗部を学べる。
【副作用】人間不信になる。
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「十戒」 美術鑑賞映画〔8〕
【原題】THE TEN COMMANDMENTS
【公開年】1956年 【制作国】亜米利加 【時間】220分
【監督】セシル・B・デミル
【原作】フレドリック・M・フランク
【音楽】エルマー・バーンスタイン
【脚本】 イーニアス・マッケンジー ジェシー・L・ラスキー・Jr ジャック・ガリス フレドリック・M・フランク
【言語】イングランド語
【出演】チャールトン・ヘストン(モーゼ) ユル・ブリンナー(ラメシス) アン・バクスター(ネフレテリ) エドワード・G・ロビンソン(デーサン) イヴォンヌ・デ・カーロ(セフォラ) デブラ・パジェット(-) ジョン・デレク(-) ニナ・フォック(-) ヴィンセント・プライス(-) セドリック・ハードウィック(-) H・B・ワーナー(-) ヘンリー・ウィルコクソン(-) マーサ・スコット(-) ジュディス・アンダーソン(-) ジョン・キャラダイン(-) ヘンリー・ブランドン(-) タッチ・コナーズ(-) オリーヴ・デアリング(-) フレッド・コーラー・Jr(-)
【成分】悲しい ファンタジー スペクタクル ロマンチック パニック 勇敢 切ない 旧約聖書
【特徴】スペクタクルなエピソードとして有名で日本でも世界昔話として知られる旧約聖書の出エジプト記をベースに実写映画化。
絢爛豪華趣味のセシル・B・デミル監督がメガホンを担当。主演は当時若手有力俳優のチャールトン・ヘストン氏、このモーゼ役によってスター俳優となり後の歴史大作「ベン・ハー」の主役となる。歴史超大作の主役はヘストンのイメージが定着する。
神が石版に十戒を記す場面や、紅海が2つに裂けて海底を歩けるようになる場面などの特撮が当時評判になり、特殊効果でアカデミー賞を獲った。
因みに神の声はヘストン氏自ら担当し、モーゼの赤ん坊時代は産まれたばかりのヘストン氏の長男フレイザー・ヘストン氏が扮している。
【効能】壮大なスケールにストレス解消。民族差別問題に明るくなる。キリスト教(あるいはユダヤ教イスラム教)に帰依するきっかけになる。無慈悲に直接責任の無いエジプト兵士が大量虐殺される場面に神の偽善を看破できる。
【副作用】宗教のもつ生臭さを知る。宗教を無批判に受け入れてしまう。
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「ベニスに死す」 美術鑑賞映画〔7〕
滅び行く美と台頭する美の対比
【原題】Morte a Venezia
【英題】Death in Venice
【公開年】1971年 【制作国】伊太利 仏蘭西 【時間】131分
【監督】ルキノ・ヴィスコンティ
【原作】トーマス・マン
【音楽】グスタフ・マーラー
【言語】イングランド語 イタリア語 ポーランド語 フランス語
【出演】ダーク・ボガード(グスタフ・アッシェンバッハ) ビョルン・アンドレセン(タジオ) シルヴァーナ・マンガーノ(タジオの母) ロモロ・ヴァリ(ホテル支配人) マーク・バーンズ(アルフレッド) マリサ・ベレンスン(アッシェンバッハ夫人)
【成分】悲しい ファンタジー ゴージャス 切ない セクシー ベネチア 20世紀初頭
【特徴】ルキノ・ヴィスコンティ監督が放つ少年愛的雰囲気の強い作品。
20世紀初頭、傷心旅行中のドイツの著名な作曲家がベニスを訪れる。たまたま出会った美少年に惹かれ、やがて追い掛け回す。
主人公に追い掛け回される美少年に扮したビョルン・アンドレセン氏は後に伝説の美少年ともてはやされるが、本人は俳優の道へは進まず、マスコミへの露出を控えるようになった。
20世紀初頭のベニスの雰囲気が綺麗に描写されている。この絵はさすがヴィスコンティ監督。
【効能】滅び行く美と台頭する美の対比が人生の有り様を考察するきっかけとなる。
逆光のシルエットに浮かぶ美少年に萌える人もいるかもしれない。
【副作用】たぶん多くの鑑賞者には美少年を追い掛け回すスケベ中年のオッサンにしか見えない。
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