「ちいさな独裁者」 人生の教訓に〔4〕
嘘とハッタリで大量虐殺
実際に発生した事件を実写映画化

【原題】Der Hauptmann
【英題】The Captain
【公開年】2018年 【制作国】独逸
【時間】119分
【監督】ロベルト・シュヴェンケ
【制作】
【原作】
【音楽】マルティン・トートシャロウ
【脚本】ロベルト・シュヴェンケ
【言語】ドイツ語
【出演】マックス・フーバッヒャー(ヴィリー・ヘロルト上等兵) フレデリック・ラウ(キピンスキー一等兵) ミラン・ペシェル(フライターク伍長勤務上等兵) アレクサンダー・フェーリング(ユンカー憲兵隊大尉)
【成分】コミカル 不気味 知的 恐怖 絶望的 ドイツ 第二次大戦 1945年
【特徴】ブルース・ウィリス主演「RED」を手掛けたハリウッド監督が母国ドイツでメガホンをとった問題作。
本作品はまだ少年のような年若さの脱走兵が機転を利かせて空軍大尉に成り済まし、周囲の期待に応えるように犯罪に手を染めていく過程を描いたブラックコメディである。しかも、これは第二次大戦末期に起こった「エムスラントの処刑人」事件の実写映画化であり、監督の弁によれば主犯のヴィリー・ヘロルトの犯行供述書に沿った内容で脚本を書いたそうである。なので本当に遺棄された車から制服を盗んだのかどうかは定かでない。
この作品には一人として「善良な市民」は登場しない。エンタメ作品に必ず観客を安心させたり納得させるために登場させる魔王のような悪人も神仏のような善人も登場しない。ごく有り触れた「普通の人間」たちが大戦末期の無法地帯と化したドイツで繰り広げる犯罪を描いている。
その申し子として大尉を詐称した小悪人ヘロルトを主人公とした。なので「ちいさな独裁者」という邦題は興行的にはやむを得ないとは思うが、作品内容からは些かピントを外したものと思わざるを得ない。
【効能】人間のあさましい本性を思い知る。
【副作用】人間の絶望的な素養を思い知る。
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「ニュースの天才」 人生の教訓に〔3〕
実際にあった虚名記者の栄光と転落。
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【原題】SHATTERED GLASS
【公開年】2003年 【制作国】亜米利加 【時間】94分
【監督】ビリー・レイ
【原作】
【音楽】マイケル・ダナ
【脚本】ビリー・レイ
【言語】イングランド語
【出演】ヘイデン・クリステンセン(スティーブン・グラス) ピーター・サースガード(チャールズ“チャック”・レーン) クロエ・セヴィニー(ケイトリン・アヴィー) スティーヴ・ザーン(アダム・ペネンバーグ) ハンク・アザリア(マイケル・ケリー) メラニー・リンスキー(エミー・ブランド) ロザリオ・ドーソン(アンディ・フォックス) マーク・ブラム(ルイス・エストリッジ) チャド・ドネッラ(デヴィッド・バッチ) ルーク・カービー(-) テッド・コッチェフ(-) クリスチャン・テシエ(-) アンドリュー・エアリー(-) キャロライン・グッドオール(-) シモーヌ=エリース・ジラール(-) キャス・アンヴァー(-)
【成分】知的 絶望的 ジャーナリズム アメリカ 実話
【特徴】実際にあったアメリカの権威ある有名誌の若手エース記者による捏造事件を映画化。「スター・ウォーズ」シリーズで若きダース・ベイダーを演じたヘイデン・クリステンセン氏が一見草食系男子のフリをしながら大胆に真っ赤な嘘を記事にしていく虚名記者を上手く表現している。
原題を直訳すれば「粉々にされたガラス(ガラス)」、主人公の名前にかけたタイトルだが、私は邦題のほうが話の本質をよく突いているように思える。
【効能】人からの心服を得るテクニックを学べる。プレゼンの基本を学べる。虚名の虚しさを悟る。
【副作用】世間と人生を舐めてかかる。
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「ビートルズ/レット・イット・ビー」 人生の教訓に〔2〕
黄昏のビートルズ。
【原題】LET IT BE
【公開年】1970年 【制作国】英吉利 【時間】80分
【監督】マイケル・リンゼイ=ホッグ
【音楽】ザ・ビートルズ
【脚本】
【言語】イングランド語
【出演】ジョン・レノン(本人) ポール・マッカートニー(本人) ジョージ・ハリソン(本人) リンゴ・スター(本人) ヨーコ・オノ(本人) ビリー・プレストン(本人)
【成分】切ない イギリス 1960年代末
【特徴】ビートルズが録音スタジオで曲づくりを行っている風景をドキュメントした作品。アルバム発表と呼応してドキュメント映画を公開する算段だったらしいが、メンバー間の険悪な雰囲気を露呈することになった。いわば、解散直前の黄昏ビートルズを克明に記録した映像といえる。
最終的にビートルズ解散の引導を渡したのはポールだが、本作の時点ではまだビートルズ存続に執着するあまりに気合が入り過ぎてメンバーから煙たがれ浮いた存在になっている。
【効能】人生の壁にぶち当たって何をやっても事態が悪化してしまう時には嵐が過ぎるまで静観するのも有効であると学べる。
調子にのっている時に鑑賞すると人生の戒めになる。
【副作用】気分が消沈する。不景気感が漂う。
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「黒の奔流」 人生の教訓に〔1〕
【公開年】1972年 【制作国】日本国 【時間】90分 【監督】渡辺祐介
【原作】松本清張
【音楽】渡辺宙明
【脚本】弘威雄 渡辺祐介
【出演】山崎努(矢野武弁護士) 岡田茉莉子(貝塚藤江) 松坂慶子(若宮朋子) 佐藤慶(倉石検察官) 松村達雄(若宮正道) 中村伸郎(北川大造)
【成分】パニック 不気味 知的 セクシー 愛憎劇
【特徴】野心家の若手弁護士は、厳しい法廷闘争である女性容疑者の無罪を勝ち取り、正義の弁護士として著名になるが・・。
知的で有能な男性の下半身の悲劇と、女の武器で男性を引き摺り下ろす薄幸の女性の対立が面白い。30代後半の岡田茉莉子氏がねちっこく好演する。対して若き松坂慶子氏の爽やかさは令嬢そのもの。
原作は松本清張氏なのだが、展開が米映画「陽のあたる場所」に酷似している。
【効能】だらしない色恋沙汰を好む男女への警鐘となる。女性の場合は、男性の下半身の欲望の弱さを知る。
【副作用】男性の場合、女性恐怖症になるかもしれない。
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