「Pipes Of Peace」 優れた短編映画MV〔1〕
【公開年】1983年
【収録】「パイプス・オブ・ピース」
【作詞】ポール・マッカートニー
【作曲】ポール・マッカートニー
【紹介】ポール・マッカートニー氏が11年ぶりに来日、今朝の新聞1面でカラー写真が載っているのに驚く。なんと関空から入国、近所ではないか。70を超えているというのに、若々しい。連れ合いは一言「オバサンみたい」とつれない。
彼の来日を記念した訳ではないが、新しいカテゴリーを作ってしまった。「優れた短編映画MV(ミュージック・ビデオ)」あまりカテゴリーを増やしたくはないのだが。
ハロウィンが終わると、商店街やショッピング・モールはクリスマスイヴまでクリスマス商戦の装いになる。そんな季節柄なので、紹介するのは「Pipes Of Peace」だ。
本格的な戦争映画ができるほど予算をかけた内容だ。時代考証もほぼ正確、衣装や銃器も揃えている。ロケ現場がどこなのかは知らないが、広々とした平原に大勢のエキストラ。
物語の舞台は第一次大戦が始まったばかりの1914年、とあるフランスの平原でイギリス軍とドイツ軍が塹壕に立て籠もり睨み合っている。クリスマス停戦なのか、両陣営ともあまり緊張感は無く、居眠りしたり、本国から届いた手紙を配ったりして和やかな雰囲気だ。
このミュージック・ビデオではポールがイギリス軍兵士とドイツ軍兵士の一人二役をやっている。イギリス軍兵士役では髪を短く刈り上げ、やや無精髭を伸ばし、トレンチコートを着込んでいる。ドイツ軍兵士役では少し長めのブロンドがかったカツラを被り、口髭を付け、だらしなく開襟にして緊張感のない軍服の着かただ。
なにを思ったのか、この2人のポールを中心に、両陣営は勇気を振り絞って互いに前線の真ん中で会見する。銃を置き、白旗をかかげ、睨み合う戦線の中央のぬかるみで対峙し、互いに握手して兵士同士の交歓会が始まる。
双方のポールも故郷から届いた妻子の写真を交換して誼を深めていくが、一発の砲弾が近くで炸裂、両軍の兵士は一目散で自軍の塹壕に逃げ込む。停戦が終わったのだ。
イギリス軍のポールが何気に写真を見る。ドイツ軍のポールの妻子の写真、交換したまま別れてしまったのだ。
これを観たのは高校3年生か大学に入学した頃だと思う。当時はあまり良い印象は持っていなかった。ビートルズファンは大きくジョン・レノン派とポール・マッカートニー派に分かれる。私は今でもジョン派だ。反体制の平和主義、権威に迎合しない、そんな彼の姿勢が好きだった。対してポールはビートルズのメンバーの中で最も体制迎合的な姿勢で、それは彼の正式名である「Sir James Paul McCartney, MBE, Hon RAM, FRCM」でも表れている。日本語でいえば「ジェイムス卿」だ。
ジョンはアメリカ軍のベトナム介入にイギリスが支持した事を抗議して早々にMBE勲章を返却したが、ポールは持ち続け90年代には「Sir」の称号を持つに至った。彼は英王室の「騎士」なのである。
本作の歌詞は、当時の私には安っぽいヒューマニズムに聞こえた。何が「平和のバグパイプ」じゃ! 似非平和ソング作りよって。ジョンみたいに闘わなかったくせに」
だが、加齢とともにモノの見方も幅広く寛大になる。社会の厳しさや限界を思い知っていくのと同時に、逆に幻想を持たなくなった分、夢と可能性も見い出せるようにもなる。
ジョンはストレートにアクの強い楽曲を発表してきたが、ポールは万民に受け入れられる曲を多数送り出した。私が気に入っているジョンの曲はことごとく連れ合いには不快で、ポールの曲の方が心地よくて癒しになるという事からでも実証だ。
ジョンは息子ジュリアンとは疎遠。ジュリアンが家庭の平和を守れなかった人が世界平和だと?て父親を批難したかどうかは確認できてないが、そういう気持ちはあったらしい。優しいオジサン代わりであるポールには懐いていたという。
安っぽいというより優しい曲なのかな、加齢とともにそう感じるようになっていった。今では癒しのクリスマスソングだ。もちろん今でもジョンの「ハッピー・クリスマス 戦争は終わった」も好きだが。
楽曲収録CD



ブログランキングに参加しています。