晴雨堂の耕晴雨読な映画処方箋
 晴雨堂ミカエルの飄々とした耕晴雨読な映画処方箋。  体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。

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晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 映画好き・猫好き・ドイツビール好きです。よく晴れた爽やかな日はマウンテンバイクでサイクリングをしながら風景や野良猫を撮影します。
 リタイア後は田舎に帰り、晴天は畑仕事や庭いじり、雨天は読書や映画鑑賞の文字通り耕晴雨読の日々をおくるのが夢です。
 お金があれば郷里に「晴雨堂オタク記念館」を設立して地元の文化交流の発信基地にしたい、連れ合いは怒るだろうが。館長に任命してやるといったら言下に断られた。
 
 ブログを始めたのは2007年5月から、本格的に参考書に目を通しながら運営を始めたのは同年11月から、操作方法で度々ミスがあると思いますがご容赦のほど願います。
 現在、少しずつですがブログを観やすいよう整理を行なっています。


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2007年10月29日設置

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晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
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「黒いチューリップ」-気晴らしに観るゴージャス活劇 6
【2008/01/12 20:56】 映画・・気晴らしに観るゴージャス活劇
痛快フランス時代劇
 
 

 
 アランドロンといえば「怪傑ゾロ」があまりに有名だが、ゾロより10年ほど前に主演した同様趣旨の時代活劇がこの「黒いチューリップ」である。(余談1)ゾロでは中年の渋さが出ているアランドロン氏だが、この作品では初々しい白面の青年である。
 
 「ゾロ」では昼行灯の総督役と凛々しいゾロとの演じ分けが見ものだったが、「黒いチューリップ」では完全に2人二役である。世間慣れした兄と些か覚束ない弟の演じ分けが見どころだろう。
 誰にでも楽しめるチャンバラ痛快時代劇だが、ラストの捻りが良い。ハッピーエンドでもあるし悲劇でもある。主人公はヒロインに悲劇を悟られないよう物語を終えたことが印象に残っている。
 
監督 クリスチャン=ジャック
脚本 アンリ・ジャンソン 、クリスチャン・ジャック
アランドロン(黒いチューリップ)
ドーン・アダムス(−)
ヴィルナ・リージ(−)
 
(余談1)黒いチューリップは、「ガンダム」の富野氏が采配をふるったアニメ「ラ・セーヌの星」にも登場する。リボンの騎士ばりの女義賊ラ・セーヌの星を助ける先輩義賊・黒いチューリップである。
 また「ベルサイユのばら」でも義賊「黒い騎士」が登場する。「怪傑ゾロ」がキャラのルーツだと思ったが、連載時期はアランドロン氏の「怪傑ゾロ」が公開される前であるし舞台はアメリカのスペイン植民地だ。「黒いチューリップ」を観てからはこれがキャラの元と考えるのが自然だろう。
 こうしてみると、「怪傑ゾロ」に隠れて殆ど忘れ去られている感のある「黒いチューリップ」だが、日本の漫画・アニメ界に大きな影響を与えている。
 
 「黒いチューリップ」という小説がある。作者は「岩窟王」「ダルタニアン物語」「三銃士」で有名なフランスの小説家デュマだが、内容はたしか新種のチューリップ球根をめぐる陰謀サスペンスで、義賊モノとは関係なさそうだ。
 フランスでの「黒いチューリップ」への認識はどうなんだろうか?
 
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「ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖」-不安と恐怖を楽しみたいときに 1
【2008/01/12 18:37】 映画・・不安と恐怖を楽しみたいときに
ヒーロー不在のパニック映画
 
 

 
 ゾンビ映画の巨匠ジョージ=A=ロメロ氏が描くパニック群衆劇の秀作である。ロメロ監督の作品の中では珍しいバイオハザード物。
  
 バイオハザードとしては、どこのレンタル屋でも置いてある「バイオハザード」が今は最も有名だろう。少し前ならダスティン=ホフマン氏主演の「アウトブレイク」、私がまだ中高生だった頃に日本で製作された「復活の日」などがあるが、この作品はこれらよりもさらに昔の映画である。
 
 この映画の特徴は、一応主人公らしき登場人物はいるが、ヒーローは不在である。完全な群集劇であり、物語は淡々と救いようの無い方向へと流れていく。アメリカのパニック映画の多くは、必ず強靭な精神力をもったカリスマのある主人公が事態打開へと突き進み、ハービーエンドにする。好例は「ポセイドン・アドベンチャー」の主演ジーン=ハックマン氏である。牧師らしからぬマッチョな行動力で生存者を助ける。
 だが、この「細菌兵器の恐怖」ではそんな頼りになるヒーローは登場しない。ロメロ氏の冷徹な群衆描写が光る。
 
 細菌で狂った町の住人と白い防菌服にガスマスクの軍隊との対決は、ゾンビとはまた違った不安感を観る人に与えていく。(余談1)
 
1973年 アメリカ映画 104分
監督 ジョージ・A・ロメロ
音楽 ブルース・ロバーツ
脚本 ジョージ・A・ロメロ
W・G・マクミラン(デヴィッド)
レイン・キャロル(ジュディ)
ハロルド・ウェイン・ジョーンズ(クランク)
リチャード・リバティー(アーティ・ボルマン)
リン・ローリイ(キャシー・ボルマン)
リチャード・フランス(ワッツ博士)
ロイド・ホーラー(ペッケム大佐)
ハリー・スピルマン(ライダー少佐)
ウィル・ディズニー(ブルックマイヤー博士)
ネッド・シュミッケ(−)
ビル・ハインツマン(−)
 
(余談1)町を封鎖する軍隊の現場指揮官が黒人の大佐である。マスクを取って顔を見せたとき、町の人たちが少し驚いたような顔をする。
 この時代、まだアメリカ軍の佐官級に黒人は殆どいなかった。報道写真家石川文洋氏が書いたベトナム戦争従軍記にも、黒人の将校は非常に珍しかった旨の記述があった。
 パウエル氏が三軍の首席に就任したり、デンゼル=ワシントン氏が陸軍中佐や海軍少佐の役に抵抗なく扮する事を思うと、隔世の感があるシーンである。
 

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「チャップリンの殺人狂時代」-シニカルに社会を嘲笑いたい時に 5
【2008/01/12 18:09】 映画・・シニカルに社会を嘲笑いたい時に
恐いチャップリン
 
 
 
 
 初めて観たのは10歳頃と思う。子ども心に嫌だった。いつもの山高帽に小さいジャケット大きいズボン姿でコミカルに動くチャップリンではなく、ロマンスグレーの紳士で冷ややかなトーンの話し方をするチャップリンがいた。(余談1)
 冒頭で、近所のオバサンたちが「あの人、三日もゴミを燃やしている」と噂し合う。「殺人狂時代」というタイトルから、チャップリンが殺人犯を演じているのは明白、ときおりコメディアン的な仕草が見受けられるものの、「独裁者」までのチャップリンとは明白にキャラが違っていた。
 
 学生時代になると、おもしろいもので作品への印象がガラリと変わった。この作品が数多くあるチャップリン映画の中で傑作になるのではないかと。
 もちろん喜劇王のチャップリンも好きだし、「独裁者」や「ライムライト」のヒューマニズム・チャップリンも好きだ。しかし名指しこそしないが、アメリカを中心とするボッタクリ資本主義とアメリカの正義の下に行う大量殺戮を批判したこの作品は痛快である。
 現に、この映画が公開される二年程前にアメリカは東京大空襲や広島・長崎原爆投下を行っていた。(余談2)
 
 この作品は名指しこそしなかったが、アメリカを批判したものとして赤狩り(レッド・パージ)に遭う。チャップリンは共産主義者だの、少女趣味の不道徳者(余談3)といったレッテルを貼られ、ヨーロッパへ避難して映画制作をするようになる。その辺の心情は「ニューヨークの王様」で窺い知ることができよう。
 
 気に入っている場面は、多くのファンは裁判での弁論だが、正味ラストでチャップリンが末期の酒を呑むところが私の一押し場面である。処刑を前にして酒をすすめられたとき、一度は断るがすぐに気が変わって「ラムはまだ呑んだことがない」とショットグラスを受け取り一気に呑む。
 その場面が忘れられずラム酒が好きになった。(余談4)
 
1947年 アメリカ映画 124分
監督 チャールズ・チャップリン
原作 チャールズ・チャップリン
音楽 チャールズ・チャップリン
脚本 チャールズ・チャップリン
チャールズ・チャップリン(−)
マーシャ・レイ(−)
マリリン・ナッシュ(−)
イソベル・エルソム(−)
アーヴィング・ベーコン(−)
ウィリアム・フローリイ(−)
エドナ・パーヴィアンス(−)
  
(余談1)淀川長治のラジオ番組で、チャップリンは自分の話し方が喜劇に向かないと考えていたらしくトーキーが主流になってもサイレントにこだわっていた、と紹介された。
 
(余談2)明らかにアメリカがやったことも国際法違反である。
 「メンフィス・ベル」でドイツを爆撃するアメリカ軍の編隊が、撃墜の恐怖をこらえて爆弾を目標のみに投下して病院や学校には危害を加えないようにする場面がある。この映画自体には悪意は抱かないが、では日本に対しては情け容赦なく女子供も殺し尽くそうとした訳か、と斜に構えてしまう。
 珍作「パールハーバー」に至っては、喧嘩うっているとしか思えん。
 
(余談3)チャップリンは4回結婚している。3番めに結婚したポーレット=ゴダール以外は全員ハイティーン。
 
(余談4)普段はスコッチをチビリと。好きなのはアイラ島の「ラフロイグ」だが銭が無いのでブレンデットの「バランタイン」。気合を入れるときにキューバのラムを呑む。


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「レッズ」-カップルで観に行こう 11
【2008/01/12 16:48】 映画・・カップルで観に行こう
ジャックとルイーズ
 
 

 
 反骨俳優ウォーレン=ビューティー氏は67年に「俺たちに明日はない」で主演した。この映画は原題をそのまま直訳すると「ボニーとクライド」である。マシンガン片手に銀行強盗を繰り返す実在のカップルを映画化したものだ。
 
 この「レッズ」も「ボニーとクライド」と同じく実在の1組のカップルが軸になっている。銀行強盗とは生き方は違えど、同じく体制権力に反抗するカップルである。別題を付けるとしたら「ジャックとルイーズ」だろう。(余談1)
 「俺たちに明日はない」ではアメリカ最下層の若いカップルが主人公だが、ジャックは比較的裕福な家庭で育ち大学を出て左翼系ジャーナリストになる。ルイーズは女性解放運動家である。2人を知る関係者の証言を挿入しながらドキュメンタリー形式で話が始まる。
 
 全編を通して主人公たちはよく喋る。討論や口喧嘩のオンパレードである。作品内容から政治的映画・歴史超大作と思うかもしれないが、基本はラブストーリーである。政治的な知識や歴史を知らなくても、自分たちの恋愛体験と置き換えて観ることが可能ではないかと思う。
 
 ルイーズがジャックと出会った頃は、既にジャックは人民側の良心的ジャーナリストとして一部で有名になっていた。出会った頃はお互いを素敵な人と思っていただろう。ルイーズは相手を進歩的で社会的弱者の側に立つジャーナリスト、ジャックは若くて頭が良くて積極的なルイーズに惹かれる。
 
 しかし恋愛はアツアツのまま続きはしない。お互いが鬱陶しく感じたり、価値観や意見の相違で大喧嘩をする。時には距離を置いたり、また接近したり、やっと夫婦生活をおくるようになったと思ったら離れ離れになり、映画のラストは一応ハッピーエンドに終わる。(余談2)
 
 私が今まで見たラブストーリーの中では、未だに最も説得力のある映画だ。「俺たちに明日はない」と合わせて見てはいかがだろう。
 あるいは夫婦喧嘩をした方々が関係修復の一助として観るのも良かろう。
 
1981年 アメリカ映画 196分
監督 ウォーレン・ベイティ
製作総指揮 サイモン・レルフ
音楽 スティーヴン・ソンドハイム 、デイヴ・グルーシン
脚本 ウォーレン・ベイティ 、トレヴァー・グリフィス
ウォーレン・ベイティ(ジョン・リード)
ダイアン・キートン(ルイーズ・ブライアント)
ジャック・ニコルソン(ユージン・オニール)
エドワード・ハーマン(マックス・イーストマン)
イエジー・コジンスキー(ジノビエフ)
ポール・ソルヴィノ(ルイス・フレイナ)
モーリン・ステイプルトン(エマ・ゴールドマン)
ニコラス・コスター(−)
ジーン・ハックマン(−)
ウィリアム・ダニエルズ(−)
マックス・ライト(−)
M・エメット・ウォルシュ(−)
イアン・ウルフ(−)
ベッシー・ラヴ(−)
ジョージ・プリンプトン(−)
ドルフ・スウィート(−)
ジョセフ・ソマー(−)
R・G・アームストロング(−)
 
(余談1)左翼運動家や共産主義者を指して「アカ」と呼ぶ日本語と同様の意味がある。
 ジャックがソ連に渡り政治委員の1人として中央アジアへ遊説するとき、インターナショナルの合唱がBGMで流れる。学生運動や労組運動をやっていた団塊の世代には馴染みのある労働歌だろう。「幸せの黄色いハンカチ」でも武田鉄也氏が失恋して北海道へ渡ったとき、町をデモ行進している人々が日本語歌詞のインターナショナルを合唱している場面がある。私の世代でも大学の寮闘争などで覚えた人はけっこういると思う。
 共産主義者を主人公にしながらアカデミー賞の栄冠に輝いた本当の理由は、主題が共産主義の啓蒙ではなくラブストーリーと見なされたためではないか?

(余談2)ロシア革命の取材に行く道中、汽車の中でジャックはルイーズたちに必死でジョークを言うが、完全に白けている。出会った頃はジャックが並べる理想論にルイーズは真剣に耳を傾けていたのに。
 しかし革命の只中のロシアで、ジャックは思わずアジ演説をぶち群集から大喝采を受ける。その光景をルイーズが感動して見つめ、感動の波に委ねてそのまま夜を過ごす。インターナショナルをBGMにベッドシーンなど、アメリカ映画では特異だ。

 これらに若干近い体験(おこがましいが)をしたことがある。映画のように劇的ではないが、むかし、ある市民運動の集会で司会進行をやったり、市役所の周りを百人程度でデモしたときに拡声器片手に辻演説をした。あとで連れ合いから、「いかがわしい本あつめたり、エロビデオばかり観る人が、突然かっこよく立派な人になるね」と冷やかされた。

 革命当時のロシアの描写も遜色ないできだった。20世紀初頭のロシアをよく再現している。
 ソ連の要人がジャックと澱みなく英語で会話する場面が多く出てくるが、これはハリウッドの悪い癖ではない。ロシア革命の指導者たちは超インテリ揃いである。レーニンでもヨーロッパの言語数ヶ国語を操れる。

 ジャック=リード(ジョン=リード)のロシア革命ルポ「世界をゆるがした十日間」は岩波文庫で刊行されている。
 
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世界をゆるがした十日間〈上〉 (岩波文庫)
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