晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋
 晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。  体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。

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↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 映画好き・猫好き・ドイツビール好きです。よく晴れた爽やかな日はマウンテンバイクでサイクリングをしながら風景や野良猫を撮影します。
 リタイア後は田舎に帰り、晴天は畑仕事や庭いじり、雨天は読書や映画鑑賞の文字通り耕晴雨読の日々をおくるのが夢です。
 お金があれば郷里に「晴雨堂オタク記念館」を設立して地元の文化交流の発信基地にしたい、連れ合いは怒るだろうが。館長に任命してやるといったら言下に断られた。
 
 ブログを始めたのは2007年5月から、本格的に参考書に目を通しながら運営を始めたのは同年11月から、操作方法で度々ミスがあると思いますがご容赦のほど願います。
 現在、少しずつですがブログを観やすいよう整理を行なっています。


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2007年10月29日設置

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晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段5項目は晴雨堂の日常です。

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「誓いの休暇」-青春をかえりみたい時に 11
【2008/01/30 13:19】 映画・・青春をかえりみたい時に
切ない青春
 
 

 
 最初に買ったLD(余談1)がこの作品である。最初に見たのは深夜のテレビ放送だったと思う。高校2年生だった。私がソビエト映画に興味を持つきっかけとなった美しく切ない恋愛物語である。
 
 これはスターリンの強権政治からフルシチョフの穏健開放政策へと移った時期に製作された。もっとも、この春のような時代はすぐに終わり、再び20年ほど窮屈な政治が続くのだが。
 共産圏の戦争映画を観た人なら判ると思うが、登場する主人公たちは全員「英雄」である。命惜しまず勇ましく侵略者と戦う人間離れしたスーパーマンたちだ。旧ソ連・東欧諸国・中国、国や民族は違えどみな同じ描き方になるのが面白い。しかし、この作品では完全に一線を引いている。
 まず、主人公の少年兵からして、戦車から逃げ惑い、たまたま怪我の功名で戦車を爆破してしまい、「英雄」として評価され久しぶりの休暇を許される。休暇の途中では賄賂をねだる兵士や、出征した上官の留守に男をつくる妻、せっかく頑張って人を助けたのに労いの言葉をかけないどころか「ボサっとするな」と非難する列車の乗客など。
 文章で状況だけを書くと、みんな悪人のように聞こえるかもしれないが、悪ではない。厳しい時代を精一杯生きている当たり前の人間臭さを描いた映画、つまり安直なスーパーマンが居ない鑑賞に堪える映画なのだ。
 
 第二次大戦が舞台だが、戦闘場面は殆ど出てこない。少年兵が休暇中に体験した青春らしい青春の日々が核となっている。他愛ないありきたりの青春ドラマだが、おそらく主人公にとっては最期の青春のときである。それが観客に切なさを与える。何故なら、冒頭で喪服?姿の母親が登場するから、主人公は既に死んでいる事が明らかなのである。
 
 恋愛ドラマといっても、フランス映画のように安易なセックス場面は無い。アメリカ映画のように感動の無いキスシーンも無い。正味のプラトニックな淡い恋で終わる。休暇をもらった生前の少年兵は、列車で訳ありの少女と出会う。(余談2)暫くして打ち解け、お互いの顔を見ながら笑顔で弁当を口いっぱいに頬張ったり、美しい車窓からの逆光でシルエットになる2人の横顔が映し出される。後半になると、擬似夫婦(余談3)として行動を共にするなど、中高生時代の我々も恋人と経験した事がありそうなエピソードではないかと思う。
 
 主人公は女性を家までおくろうとするが、ヒロインは「私のために休暇が無くなる。早くお母さんのところへ」と遠慮し別れる。別れてから主人公は彼女の姿が夢に出てくるようになる。
 列車が空襲にあって破壊され、少年兵は必死に頼み込んでトラックを乗り継いで故郷に帰る。トラックの運ちゃんは文句たらだら言うが、結局は根負けして「仕方ない、人助けだ」と渋々故郷の村へおくる。村では噂を聞きつけた村人たちが集まって総出で歓迎する。母親とも会える。が休暇の日数は残っていない。再び死地へ戻っていく少年兵の後姿。
 
 冒頭で主人公の少年兵が戦死することが明らかになっているだけに、物語の核となっている少女との出会いと心の交流、上官の妻の浮気とそれを黙認する家族への青臭い憤り、帰郷した少年兵を出迎える母親と満面に笑顔の村人たち、何もかもが切なく輝く。
 
(余談1)DVDが登場する以前の記憶媒体。昔のLPレコードと同じくらいの大きさ。どんどん映像ソフトが気楽なものになっていく。本棚を占拠していたビデオテープ・LPレコード、かさばるだけでなく耐震性も大きく損なう。
 
(余談2)主人公の若い兵士を演じたウラジミール=イワショフ氏は二十歳くらいだった。ヒロインのジャンナ=プロホレンコ氏はまだ十代だったと思う。2人とも演劇学校の学生。パッケージの写真では顔は良くわからないが、イワショフ氏は日本のウェンツ氏に感じが似ている。プロホレンコ氏は若い頃のジェニファ=コネリー氏に似ている。
 
(余談3)軍人とその家族は優先される。ヒロインも主人公の「妻」の資格で乗り込む。2人は方便を使ったわけだが、擬似夫婦を楽しんでいるふしもある。
 

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「裂けた鉤十字/ローマの最も長い一日」-独りで考え事をしたい気分に 6
【2008/01/30 02:49】 映画・・独りで考え事をしたい気分に
コストマス監督のデビュー作
 
 

 
 「カサンドラ・クロス」で大ヒットを飛ばし、その後「コブラ」「ランボー・怒りの脱出」「リバイアサン」などの娯楽アクション大作を手がけた監督だが、デビュー作は社会派色の強い作品である。
 
 タイトルから連想されるように、第2次大戦後期のイタリアが舞台である。ムッソリーニが失脚した後、ナチスドイツ軍は南戦線を確保するため大挙してイタリアを占領する。ムッソリーニはドイツに「救出」されて、ヒットラーに謝辞を述べる。そんな時代のローマで起こったエピソードだ。
 
 この作品をみたとき、15・6歳だったと思う。子どもの頃は戦記モノが好きだったが、あれほど民衆から支持を得ていたムッソリーニが何故殺されて逆さ釣りにされたのか解らなかった。かたやヒットラーは最期まで権力を握り続けていたというのに。その意味が解る映画だった。
 
 ドイツの占領でムッソリーニは失脚政治家から一気に裏切り者・傀儡政治家に成り下がる。イタリアでもレジスタンスの活動が活発になる。ヒトラーは報復としてイタリア人数百名の虐殺を命令、たまたま赴任していたSS将校カプラーが、総統の命令に動揺する将軍に他人事のような意見を言ったために、将軍から虐殺の現場責任者にされる。(余談1)
 
 大量処刑の話を聞きつけ、それを止めようと奔走する神父(余談2)。カプラーは中間指揮者としての立場を哀れんでくれ、と懇願し処刑の準備を進める。神父はバチカンにも働きかける。しかし法王庁は静観の姿勢。枢機卿か司教らしき人物が法王庁の言い訳がましい長い声明文を読み上げる。失望した神父は途中で退出、しかし枢機卿は神父が出て行ったあとも読み上げ続ける。当時のバチカンの政治的立場がわかる場面だ。
 
 処刑場に到着した神父はある決意をする。カプラーたちSSは死刑囚や微罪で逮捕された者やユダヤ人などを掻き集めてテロ犯人として処刑場であるトンネルのような場所に入れ、しゃがませて順番に後頭部へ銃弾を打ち込み、腐りやすいように石灰をかけていく。
 
 ニヒルで平凡な「公務員」が突然虐殺の実行責任者にされたSS将校カプラーをリチャード=バートン氏が、正義感あふれる神父をマルチェロ=マストロヤンニ氏が扮する。バートン氏の格好良くて色男ぶりの将校が一転うろたえ苦悩する様、マストロヤンニ氏の理想に燃える熱血漢ぶりと、信じていた権威がナチに迎合した時の失意と愕然ぶりが見どころだろう。
 
 この作品が意図するものはずっと重いものだろうが、当時の私はこれを観て、人間の英知は弁解と正当化に最も発揮されるものだ、と納得した。
 
(余談1)いつも思うのだが、映画のドイツ兵たちは髪が長い。ロバート=キャパの報道写真には多くの捕虜になったドイツ兵の写真があるが、みな短く髪を刈り込んでいる。揉み上げも短い。
 
(余談2)中世ヨーロッパの神父は頭頂を大きく剃るのは知られているが、現代でも旋毛の辺りを500円玉程度の大きさで剃るのを、この映画で知った。



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