(ロミオ) マイケル・ヨーク(ティボルト) ミロ・オーシャ(ローレンス神父) ブルース・ロビンソン(-) ジョン・マケナリー(マキューシオ) パット・ヘイウッド(-)
執筆された16世紀末当時の現代青春ラブロマンス劇。分別の無い若者の恋と悲劇、体力精力がありあまった若者たちの暴力、スラング猥談だらけの若者言葉、乱暴な例えだが基本ベースは日本で流行った「恋空」「クローズ」と変わりはない。大きく異なるのは、作者は重厚な史劇から軽い喜劇まで描く天才劇作家で、この青春物語を執筆した時期はけっこういい歳だった。作者の人間観察力の鋭さが窺われる。
初々しいオリビア・ハッセー15歳 いうまでもなく
シェイクスピアの代表作である。4大悲劇よりも有名な恋愛悲劇だ。(余談1)この「
ロミオとジュリエット」は戦前から現在に至るまで数多く制作されているが、たぶんこの映画が最も有名ではないだろうか。劇中の宴席で少年歌手が歌う恋歌が作品全体を盛り上げ、サントラ盤発表されると全世界で大流行したためにテーマ曲との誤解も広がった。
また、以前の映画ではどちらかといえば成人したというより成熟した大人の俳優が
ロミオとジュリエットを演じていたが、原作の雰囲気を考えれば2人は思春期の少年少女であり、そういう意味でこの作品のキャスティングは適切だといえよう。ロミオ役の
レナード・ホワイティング氏は18歳、ジュリエット役の
オリビア・ハッセー氏は15歳。特にハッセー氏の長いストレート黒髪と端整な顔立ちは、いかにもイタリア貴族の令嬢らしくて良い。(余談2)
もちろん、俳優の年齢を下げたことによって演技力の稚拙さが滲んでいるが、逆に未成熟で分別がない若者を表現する効果は生んだと思う。大袈裟な乱闘騒ぎも、いい歳した大人たちよりは幼さが顔に残る若い俳優たちがやると絵になる。(余談3)
この
シェイクスピアの「ロミオ・・」よりもこの映画「ロミオ・・」を意識して世界各地でリメイクやパロディが大量に作られるが、これはたぶんにヒロインのハッセー氏の容姿があまりにも作品にはまりすぎて耀き過ぎたからだと思う。演技力にしろ、作品の完成度にしろ、抜群だったとは言いがたい。実際にハッセー氏はその後の作品には恵まれなかったようだし、ホワイティング氏は何処へ行ったのか判らない状態だ。
特に残念なのは、映画らしさが無かったことである。内容としては舞台でやっても差し障り無い演出と構成だった。台詞回しは舞台劇の域だし、ロミオが窓の外からジュリエットを窺う場面は映画ならではの構図と言われているが、今の舞台やドラマでは技術的に不可能な構図ではない。もっと映画でないとできない表現が欲しいところだ。
作品の完成度は、ディカプリオ氏の「ロミオ・・」が優れていると思う。
(余談1)4大悲劇は「マクベス」「ハムレット」「リア王」「オセロ」。「
ロミオとジュリエット」が悲劇の代表に加えられなかったのは、4大悲劇はいずれも重厚な大河ドラマ的史劇であるのに対し、「
ロミオとジュリエット」は当時のハイティーンの恋愛劇といったほうが良いからだ。英語に詳しい知人の話によれば、当時のスラングや猥談が沢山出てくるそうで、今でこそ「時代劇」だが本来は「現代劇」の「青春活劇」だったのかもしれない。
そういう意味では、「ウエストサイド物語」や「パッチギ!」やディカプリオ氏の「ロミオ・・」はリメイク・パロディどころか、原作「ロミオ・・」そのものといっても良い。
(余談2)もし、
オリビア・ハッセー氏が20年遅く生まれていたら、確実にシャンプーLUXのCMに出演していただろう。ジェニファ・コネリー氏からパドメ・アミダラまで黒髪長髪路線だったから。
(余談3)ホワイティング氏とハッセー氏の無邪気で大袈裟な抱擁と接吻も可愛らしくて好感が持てた。後に現代の服を着た2人のスチール写真を見てがっかりしたことがある。たぶん公開直後に発表されたスチールだと思うが、2人とも硬い表情で、ホワイティング氏が似合わない揉み上げを伸ばして煙草をくわえ、ハッセー氏がライターで火をつける写真だった。
私としては、高校のクラブ活動風にスポーツウェアーを着て笑顔で肩を組んでいる絵にしてほしかった。どうしても大人の魅力を出したいのなら、1920年代のギャングの格好にしてボニーとクライド風が良い。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作 【受賞】アカデミー賞(撮影賞)(1968年) ゴールデン・グローブ(外国映画賞 英語)(1968年)
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