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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ワンダーウーマン」 萌えたい時に〔24〕  

ワンダーウーマン」 
原作の前日談。


ワンダーウーマン 2017

【英題】Wonder Woman 
【公開年】2017年  【制作国】亜米利加  
【時間】141分  
【監督】パティ・ジェンキンス
【制作】
【原作】DCコミックス
【音楽】ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
【脚本】アラン・ハインバーグ   
【言語】イングランド語 一部スペイン語 中国語 古代ギリシア語
【出演】ガル・ガドット(ダイアナ / ワンダーウーマン)  クリス・パイン(スティーブ・トレバー大尉)

【成分】かっこいい コミカル スペクタクル セクシー パニック ファンタジー 切ない 勇敢 第一次世界大戦

【特徴】ワンダーウーマン、リニューアルの映画化。
 原作やTVドラマでは第二次世界大戦が舞台でワンダーウーマンの敵はナチスドイツだったが、本作では第一次世界大戦が舞台となっている。
 彼女の相棒となる情報将校にまたしてもトレバーなる男性、TVドラマでもワンダーウーマンは第二次大戦時の情報将校スティーブ・トレバー少佐とその息子で70年代の情報将校スティーブ・トレバー・ジュニア少佐の二代に渡って絡む。
 ということはトレバー家のイケメン男子三代に渡って彼女は関係を持つという事なのか?

 リンダ・カーター主演のTV版は星条旗を思わすようなパンツをはいたスーパーウーマンでスーパーマンの女性版だったが、リニューアルでは古代ギリシアをイメージの重心に置いたデザインに若干修正されている。
 主演のガル・ガドット氏はプロポーションが良いだけでなく兵役の経験があり、鍛え抜かれた身体は闘うワンダーウーマンに相応しい。

 ただ、彼女が属していた軍隊はイスラエル軍であり、イスラエル軍はパレスチナのガザ地区を進行して女性や児童に対しても容赦なく攻撃を加えた事で国際世論の批難を受けた。また彼女自身もそんなイスラエル軍を支持するコメントを発表しているため、中東では上映ボイコット運動が発生している。 

 超娯楽大作のはずが、些か政治的キナ臭さが漂う「問題作」でもある。

 ところで、平素は節約のため映画パンフレットは購入しないのだが、本作についてはつい本能に負けて買ってしまった。

【効能】彼女の勇姿に男女とも萌え。

【副作用】フェミニズム的作品であると称賛される一方で露出度の多さで批難。
 彼女の軍歴とガザ侵攻支持の発言から興醒め。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
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「ダンケルク」 家族と一緒に考えよう〔29〕

ダンケルク」 
英軍パイロット役のトム・ハーディ、
一番おいしい役をやっていた。


ダンケルクのポスター

【英題】DUNKIRK 
【公開年】2017年  【制作国】英吉利 亜米利加 仏蘭西 阿蘭陀  
【時間】106分  
【監督】クリストファー・ノーラン
【制作】エマ・トーマス クリストファー・ノーラン
【原作】
【音楽】ハンス・ジマー
【脚本】クリストファー・ノーラン   
【言語】イングランド語 一部フランス語
【出演】フィン・ホワイトヘッド(トミー英陸軍二等兵)  トム・グリン=カーニー(ピーター・ドーソン)

【成分】かっこいい パニック 切ない 勇敢 恐怖 悲しい 絶望的 フランス ダンケルク 1940年 第二次世界大戦

【特徴】ナチスドイツ軍が圧倒的優勢だった第二次世界大戦初期の1940年、ダンケルクの浜辺に追い詰められ攻囲された英仏連合軍の物語。

 過去に何度か映画化されているが、本作の場合は主に脱出して生き延びようと必死の若い平凡な二等兵の視点で描かれているため、観客にもリアル感情移入しやすい。
 ただ、平凡な若者の視点だけではエンタメには貧相なので、ときおりダンケルクの兵士を助けようと奮闘する民間船の老船長や英空軍パイロットの視点も絡めて構成。

【効能】

【副作用】

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。

稲垣えみ子氏よ、自著が図書館の本棚にあるというのは物書きとして誉れなんゃぞ。ホンマに解ってるか? 近頃の現象[一二八三]

稲垣えみ子
「『図書館で借りて読みました!』、
私の本を読んでいただいたのは 
ありがたいのだが……」


 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

*  *  *
 先日、とある行政機関に呼ばれて大勢の方の前でお話をする機会に恵まれたのですが、現地へ行き、担当の方と顔を合わせ、よろしくお願いしますと頭を下げたら付箋のいっぱいついた私の本を持っておられたのでお礼を言おうと思ってよくよく見ると、なんと図書館で借りた本!

 こんなことは初めてで、予期せぬ光景に私、思いもよらぬほど動揺してしまいました。顔を殴られたような感じがしたのです。必死に気持ちを立て直してなんとか元気にお話をして帰ってきましたが、どうにも心は沈んだまま。

 そう、私は傷ついていたのです。

 それが何であれ、仕事には相応の苦労が伴います。そして、それに敬意を表してお金を払ってくれる人がいて初めてその人は仕事を続けることができる。あなたが懸命に作ったものを当然のようにタダで持っていく人がいたらどう思いますか。自分にはそんなにも価値がないのかと傷つきませんか。いや借りたっていいんです。読んでいただいたことに感謝いたします。しかしやはり……。

 そんなことをぐるぐる考えていたのですが、ふと気づけば私とてマッタク偉そうなことは言えません。

 送料無料の本を買ってお得だと思っているのは私です。配達してくれる人への敬意はどこに? 宅配便を届ける人がいなくなっているのはきっと多忙のせいだけじゃない。私のような人間から投げつけられる「敬意のなさ」のつぶては人の心を静かに殺していくのだと思います。

 お金とは、自分の欲望を満たすための手段。これまでずっと当たり前にそう思ってきた。だから同じものならちょっとでも安く、あわよくばタダで手に入ればラッキーと思ってきました。

 でも世の中はつながっているのです。得をした自分の反対側には確実に損をしている人がいる。そして気づけば自分がいつの間にかその損をする側に回っていた。これを因果応報という。ここから抜け出すにはまず自分のお金の使い方を考えねばなりません。 (AERA 2017年8月14-21日号)


【雑感】通常、他人様の文章を紹介する場合は一部数行分を抜粋する程度に留めるのだが、今回は稲垣えみ子氏が誤解されないよう配慮するため敢えてまとめて紹介した。
 紹介した彼女の文は既にネット上で無料公開されているため、一種のパブリックドメイン化となっている。なので当ブログで公開しても何ら問題は無い。

 最初に述べるが、彼女が言わんとしている事は理解しているつもりである。
 御自分の未熟な失敗例や不届きな面を最初に曝け出しておいて、オチは「世の中はつながっているのです。得をした自分の反対側には確実に損をしている人がいる。そして気づけば自分がいつの間にかその損をする側に回っていた。これを因果応報という。ここから抜け出すにはまず自分のお金の使い方を考えねばなりません。」で締めくくる。
 彼女の言いたい事は解っているつもりだし、オチは正論だと思っているし、オチだけに限っては全面的に同意であり支持するものである。

 しかし・・。

 彼女自身がおのれの未熟な一面としてあげたエピソードがどうしても聞き捨てならないのだ。いや、自分の未熟な一例を起承転結の「起」に使う演出は良いとしても、もっと他に未熟なエピソードは無かったのか? なぜ図書館の話題を出す?

 稲垣氏の記事の前半だけを読んだら、私は次のように怒鳴って叱りつけたい。

 「おまん、なに素人みたいなこと言うてんのや! アホか! それでもジャーナリストか! どの自治体も図書館運営が厳しいのを知らんのか! 司書が冷遇されている状況に、おまんは何も感じないのか愚か者!」

 もし私が稲垣えみ子氏であれば、自分の著作を図書館で借りて読む人を見かけても栄誉に思う事はあっても傷つくことは100%あり得ない。
 なぜそれが言えるのか?
 図書館も勝手に本を選んで陳列している訳ではない。無料の貸本屋ではなく、公益性のある書籍を収集して利用する市民に広く貸出しするのが図書館の役割である。その作業を行う人たちも、国家試験を合格した大卒の司書が書籍分類と図書館運営を行っている。(近年は自治体の財政難で民営化され司書も冷遇されつつあるが)
 自分の著作の公益性が認められ公共の財産として図書館に陳列されている、文筆業として誉れではないか。

 また図書館が購入する書籍を選ぶ決め手は、市民の推挙がある。「この本を入れてくれ」と要望する市民の声が相当数あれば図書館も応えてくれる場合がある。但し、あくまで図書館は貸本屋ではない。貸本屋は基本的に売れる本を並べるが、図書館は公益性のある本を選ぶのが建前だ。だから要望はあくまで市民からの「参考意見」なので、要望が大きくても選ばれるとは限らない。
 とはいえ、少なくとも熱心な読者の存在が稲垣氏の著作の公益性を認めて図書館に働きかけ、図書館もその価値を認めて購入した。
 文筆業として幸せな現象ではないか。この栄誉は文筆業に従事する人間誰にでも与れるわけではない。

 稲垣氏は随分とバチあたりな了見を持った人間であるか、上記の彼女の文章で判ろう。「顔を殴られたような感じ」を抱くなど、私には信じがたい発想である。よくそんな了見でジャーナリストをやれたものだ。
 傷ついたのは稲垣氏ではない。私ら読者である。「おまんはそんな人間やったんか」という裏切られた思いである。
 百歩譲って、図書館事情に不勉強で無知で世間知らずでジャーナリストにあるまじき愚かぶりに目を瞑るとしても、日ごろ自分が主張してきた論を「担当者氏」が実践し経費節減のため図書館で借りてきた本で事前勉強したのに、それを誉めるどころか、いざ自分が今まで他人様にしてきた仕打ちをやられて「傷ついていたのです」とは幼稚にもほどがある。

 こんな稚拙さを見せつけられてしまっては、今まで稲垣氏が吹いて回った論の説得力も激減する。そもそも私自身は稲垣氏の論に疑問を抱いていた。上記紹介の文を見て「馬脚を現したか」と思った。(関連記事へ

 それから私が憤る理由はまだ他にもある。それは稲垣氏が図書館利用を否定的に述べてしまった事だ。
 どの自治体も今や図書館運営が危機的状況にある。行政から見れば病院や学校でコストカットはやりにくいゆえ、図書館は鉈を振り下ろしやすいのかもしれないが、図書館は教育や文化の中核施設、今後ますます貧富の差が激しくなり教育を受ける機会格差も広がってしまう事を考慮すれば、無料で書籍を貸出ししてくれる図書館の必要性はますます大きくなる。

 ところが財政難で図書館の民営化が始まっている。何でもかんでも民営化すればいいというものではない。前述したように、貸本屋は「売れる本」を置く。図書館は「公益性のある本」を置く。これは大きな違いだ。既に重要な郷土史研究資料である古文書が棄てられたというニュースがある。売れる本と地域にとって必要な本は意味が違うのだ。
 司書の冷遇も大きな問題だ。アメリカでは元々書店が少なかった事もあるが図書館は地域の教育文化の牽引拠点であり、司書は修士の学位を持った者が務める。日本も大卒で国家ライセンスを取った者が司書になるのだが、扱いが貸本屋のオッチャン・オバチャンみたいだ。就職先も狭き門。

 図書館が劣化すれば、日本各地の教育文化も悪い影響を与える。教育水準の低下は、物書きにとっては自分の商品を買うてくれる市場の劣化と縮小を意味する。
 図書館を否定する文筆業者は自らの市場の劣化を促している事に気づかなければならない。農民が自分の田畑の土をいい加減に扱っているも同然だ。

 そして私のやっかみや嫉妬である事を認めたうえで敢えて言うが、低所得の工場労働者である私が「図書館とは何ぞや」と述べて、一貫して文章を書く事を生業としてきた彼女が「図書館で借りてきて読みました」と言われて傷つく。
 立場交換してくれや。俺の方が文筆業に相応しい。おまんは社会勉強のために時給1000円の派遣で工場へ行け。

晴雨堂関連記事案内
節電を考える。朝日の稲垣えみ子氏のコラム、共感はするが賛同できない。 晴雨堂の晴耕雨読な日常[二百]




 
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「ゴースト・イン・ザ・シェル」 寂しさをまぎらわす時に〔28〕

ゴースト・イン・ザ・シェル」 
士郎正宗「攻殻機動隊」を 
ハリウッドが実写映画化!




【英題】Ghost in the Shell 
【公開年】2017年  【制作国】亜米利加  【時間】107分  
【監督】ルパート・サンダース
【制作】
【原作】士郎正宗
【音楽】クリント・マンセル ローン・バルフェ
【脚本】ジェイミー・モス ウィリアム・ウィーラー アーレン・クルーガー   
【言語】イングランド語 一部日本語
【出演】スカーレット・ヨハンソン(ミラ・キリアン少佐 / 草薙素子)  ピルー・アスベック(バトー)  ビートたけし(荒巻大輔)      

【成分】ファンタジー 不気味 切ない 恐怖 悲しい 知的 絶望的 SF

【特徴】士郎正宗氏の「攻殻機動隊」をハリウッドが実写映画化。草薙素子役をスカーレット・ヨハンソン氏が頭髪を黒くして演じる。

 要所要所に士郎正宗氏の世界観に沿った場面を入れているものの、物語自体はハリウッド仕様に改編されて概ね別物語と捉えた方が良いかもしれない。

【効能】自分自身は何者なのか、止揚するきっかけになるかもしれない。

【副作用】ハリウッド臭くて幻滅。「ブレードランナー」などの過去の名作の焼き直し感がして士郎正宗世界を感じられない。

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