(伊賀さつき) 萬田久子(田村美鶴) 小林稔侍(先代 尾上清十郎) 松方弘樹(尾上清十郎) 本田博太郎(長沼兼一) エローラ・トルキア(コニー) ビョルン・アンドレセン(ダン)
憧憬の太秦。 時代劇ファンの間では超有名人の斬られ役俳優
福本清三氏(余談1)が齢70を過ぎて初の主演映画であるとともに、今や制作しているTV局はNHKぐらいと言われるほど斜陽いちじるしい時代劇にとっての「町興し」「業界興し」映画でもある。
時代劇ファンにとっては、是非ともこの作品をきっかけに時代劇の再評価と再浮上を願うものである。
本作は7月(2014年)から全国上映されるが、京都太秦に敬意をはらってなのか、あるいは主役の福本氏が関西出身なのか、京都・大阪・兵庫に限定して6月14日から先行上映された。上映する映画館は、若干マイナーな作品も上映するシネコンで展開されている。大阪ではミナミのパークスシネマとキタの梅田ブルグ7の2館だ。
2館しか上映していない割に客入りはおとなし目だが、この手の映画にしては大入りの部類だ。なにしろ私が鑑賞する映画の大半は館内貸し切り状態になるのが多いのだから。
内容はいたってベタな話である。斜陽どころかじり貧の時代劇、次々と時代劇の制作は打ち切られ仕事を失っていく大部屋俳優たち。かつては大勢いた大部屋俳優たちも転職等で数が減り高齢化が進む。福本氏扮する主人公香美山も肘や手首に変調をきたし始めていた。
そこへテングになったステレオタイプのアイドル俳優と人気監督が傍若無人の振る舞いをする。そんな風潮に迎合する若いプロデューサー。
この厄介な業界に女優を目指し京都にやってきた少女さつきが主人公香美山に弟子入りを志願する。殺陣はめきめき上達し、やがてボディー・スタント役者(余談2)から主役級ヒロインへ、そして東京へ行ってスターへと出世する一方で、香美山は老いに抗しきれず引退し故郷の山村へ引き上げる。
ところが、かつての人気時代劇が復活し、ヒロインの女剣士役に就いたさつきをはじめ、かつての仲間や時代劇で世話になった大御所俳優たちが再復帰と引退の花道にと出演を説得。斬られ役一世一代の演技が始まる。
ベタな話なのだが、時代劇ファンとして
福本清三ファンとして感涙の迫力だ。本作はアメリカでも上映されるらしい。典型的なチャンバラ劇の楽屋裏を描写しているので、アメリカでもウケると思う。
(余談1)おそらく時代劇ファンの多くが佳境のチャンバラ場面になると「今日はあの斬られ役おるかな」と画面に映るエキストラたちの顔を注目していたと思う。それぐらい頻繁に様々な時代劇に出演し、あの面長で痩せこけて目が吊り上がったような悪人面メイクの福本氏はよく目立った。
福本氏が目立ったのは顔とメイクだけではない。倒れ方にも特徴があって、今や時代劇ファンだけでなく邦画界でも有名となった「海老反り」である。斬られた時のリアクションが大袈裟でいて不自然ではなく、私は福本氏の演技みたさに時代劇を観ているようなものだった。
(余談2)俳優の吹替役者である。危険な撮影がある場合、主役を怪我させる訳にはいかないので代わりにアクションを務める。
主役の代わりに馬やバイクや自動車に乗ってアクションする場合はカー・スタントと呼び、殺陣などのアクションを代わりにやる俳優をボディ・スタントと呼ぶ。
本作の場合、殺陣が下手な女優の代わりに薙刀を振り回して演技をする。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 佳作
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔【受賞】ファンタジア国際映画祭シュバル・ノワール賞(最優秀作品賞) 最優秀主演男優賞 ニューヨーク・アジア映画祭: 最優秀観客賞
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