ロシア軍、ウクライナ侵攻。アメリカに例えたらカナダ相手に戦争するくらいあり得ない事が起こった。これは国連崩壊の危機である。 近頃の現象[一三〇〇]
市街戦で民間人被害拡大の懸念…
住宅地にもミサイル攻撃
ロシア軍はウクライナの首都キエフへの攻撃を続け、25日までに、市中心部から約10キロの地点まで迫った。英BBCが伝えた。ウクライナ軍は徹底抗戦の構えで、今後、市街戦に発展して民間人らへの被害が拡大する懸念も強まっている。攻防が続く中、双方は停戦協議の調整も進めている。
ロシア軍はウクライナ北方のベラルーシから進軍し、キエフ市の北方と東方の2方面から中心部に迫っているとみられる。露国防省は25日、空挺部隊が市の西側から包囲したと発表した。ロイター通信によると、アントノフ空港周辺で両軍が衝突した。
市内にはミサイル攻撃も加えられた。米国防総省高官によると、弾道、巡航ミサイルの発射は200発を超えた。標的の大半は軍事施設で、一部は住宅地にも撃ち込まれたとしている。ウクライナのウニアン通信は、キエフ周辺で、空爆によって民間人4人が死亡し、15人が負傷したと伝えた。
市によると、25日夜、市内の北東部にある発電所で計5回の爆発が起きた。停電は発生していない模様だ。市内では25日深夜も、地下鉄駅構内などへ避難を指示する警報が発令された。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日夜、市内で首相らと共に「国を守るために我々はここにいる」と語る動画をSNSに投稿した。地元メディアによると、ウクライナ国防省は25日、キエフ防衛のため、市民に機関銃1万丁の配布を開始した。(読売新聞)
【雑感】まず、まさかの侵攻、驚きだった。
多くの人は、プーチン氏は大軍で威すだけで侵攻はしないと見ていたのではないか。常人が考えられる限りでは、まず火蓋をきるメリットがあまり見当たらない。
ロシアのガルージン大使や中国の薛剣総領事が流暢な日本語で「アメリカこそ国際法違反の常習犯やろ」という趣旨の批判を繰り出しているように、たしかに両氏の指摘は事実である。ただ、第二次世界大戦以降もアメリカはよく戦争をあちこちでしでかすが、語弊を恐れずに言えば相手国は世界的な影響力がまだ小さい中小国で、例えば第二次世界大戦で敵対したドイツや日本のようなそれなりの大国を相手に戦争はしていない。
つまり何が言いたいのかというと、ウクライナはソ連の元構成共和国で今もロシアの衛星国のようなイメージでとられがちだが実は人口や国土面積などの総合的な国家規模はフランスに匹敵する大国であり、動員兵力も装備などの充実度ではロシアに劣るものの決して弱小国ではなく主権国家200ヶ国ほどある中でウクライナは22位の軍事力であり、これを相手に戦争をするなどは想像できなかった。しかも文化的人的交流でウクライナ・ロシア双方に親類や友人がいるのも少なくない。
例えば戦争大好きのアメリカが21世紀の世でカナダやメキシコを相手に戦争するなんて考えられるだろうか?経済的にも人的にも深すぎる間柄の2国に? それくらいあり得ない話が現実に起こったのである。たった今。
軍事技術的に言えば、開戦時期は今時分を置いて他にない。独ソ戦の経緯に詳しいミリオタなら知っているだろうが、春になればあの辺りは雪解けでドロドロになり、当時のドイツの機甲師団や機械化師団は前進に難儀した。
とはいえ今どきの戦争は兵器も人件費も第二次世界大戦時とは桁違いにコストが高くなっている。しかも如何にロシアがアメリカに次いで第二位の軍事超大国であれど、総合的な国家規模がフランスに相当するこれまた世界的に見れば大国にあたる国を相手に戦争を仕掛けるのは現実的ではないと誰もが思う。お互いに親類や知人やビジネスパートナーがいる中での戦争、精神的な打撃もさることながら経済的にも甚大な損害が発生する。さらに世界各国は戦争を止めさそうと経済制裁をロシアに仕掛ける、ロシア側も欧州へのパイプラインを握っている。欧州の脱原発機運によってロシア産のガスへの依存度が高まっているので、ライフラインに少なからずの影響を与える。
そういった様々なデメリットを考えれば、常人であれば開戦に踏み切ることは有り得ないのである。なのに戦端を開いてしまった。
この問題は第二次世界大戦後に構築された国連体制を崩壊させる危機的状況である。ガルージン大使や薛剣総領事が言う「アメリカこそ常習犯やないか」という言い分とは別次元の段階であることは、先ほど私がそのアメリカに例えたらカナダやメキシコ相手に戦争するようにものでお判りいただけるだろう。
バイデン大統領が「我が国は世界一の核保有国で世界一の軍事大国で全世界に軍を展開しており、それでもって世界一の経済大国で国連本部はニューヨークにある。我が国に向かって開戦する勇気があるならやってみろや」と言いながらカナダへ侵攻したら?それくらいの暴挙である。
しかもロシアはアメリカとならんで安保理常任理事国という強い地位にあり拒否権が使える。国連はたちまち機能不全に陥る。
そしてこれは国連憲章と姉妹関係にある日本国憲法(余談1)の危機でもある。
プーチンはアメリカがイラクを攻めた時と同じ口実を使った。「核をこっそり持っている」 これは日本にとっても重大な意味がある。日本は核兵器を持つに十分な技術力と施設と人材を保有し材料となるプルトニウムも世界最大規模の保有量だ。元々、核非拡散条約のターゲットは日本だとも言われている。そして2021年発効の核禁止条約に日本は署名していない。
杞憂に終わればいいが、日本の為政者は九条改憲という手続きを踏まずに核武装に踏み切る恐れがある。
(余談1)日本国憲法起草の中心人物は法律の学位を持っているチャールズ・L・ケーディス大佐であり、彼のハーバード大学在籍時の同級生には国連憲章起草に関わったアルジャー・ヒスがいる。
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