晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋
 晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。  体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。

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晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 映画好き・猫好き・ドイツビール好きです。よく晴れた爽やかな日はマウンテンバイクでサイクリングをしながら風景や野良猫を撮影します。
 リタイア後は田舎に帰り、晴天は畑仕事や庭いじり、雨天は読書や映画鑑賞の文字通り耕晴雨読の日々をおくるのが夢です。
 お金があれば郷里に「晴雨堂オタク記念館」を設立して地元の文化交流の発信基地にしたい、連れ合いは怒るだろうが。館長に任命してやるといったら言下に断られた。
 
 ブログを始めたのは2007年5月から、本格的に参考書に目を通しながら運営を始めたのは同年11月から、操作方法で度々ミスがあると思いますがご容赦のほど願います。
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2007年10月29日設置

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晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
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「パール・ハーバー」-突っ込みどころを楽しもう 3
【2007/12/12 22:59】 映画・・突っ込みどころを楽しもう
ファンタジー「パールハーバー」
 
 

 
 「アメリカ人」だけで制作すると、こんな感じになる見本みたいな映画だ。脚本はなんと秀作「ブレイブハート」の脚本を担当したランドール=ウォレス氏。私の印象としては、戦争映画というよりは優れたメロドラマといったほうがよく、脚本や物語展開だけに限れば別に舞台を日米開戦前後のハワイにしなければならない必要を感じられなかった。もっと他に「パールハーバー」の表し方があったと思う。
 アメリカ人もこれ観て面白いのだろうか? あくまで史実をヒントにしているだけで史実に沿っているわけではない。戦争映画というよりアメリカ人のファンタジーだと思う。
 
 特にハリウッド映画にいえることだが、作中にアジアを出すとたちまち誤解と偏見と無知が露呈する。この映画でも考証の誤りは数え上げればキリがない。指摘するだけでもシンドイ。(余談1)なんでかな? 21世紀の到来と日米開戦60周年の節目に、アメリカ人の「愛国心」と「アジア蔑視」の感情を煽って金儲けをやっているとしか思えん。
 
 日本を悪者にするにしても、リアリティがあれば説得力も増すのに、これでは苦笑を誘う珍作だ。しかし、ユル=ブリンナー主演の「王様と私」は舞台となったタイでは大顰蹙で、未だ上映されていないと聞く。しかしタイ国を知らない人間にとっては面白いミュージカルで、世界的には名作と位置付けられている。ハリウッドは罪深い存在だ。
 この「パール・ハーバー」も第二次大戦を知らない人間、あるいは歳が若く政治や社会に全く関心の無い人間であれば、日本人であってもウケる可能性はある。
 監督が満面に「アメリカ万歳」を滲ませた娯楽専門監督マイケル・ベイ氏だから、うなづけるか。

 同じバールハーバーが舞台の戦争映画を観たいのなら、私は「トラ・トラ・トラ!」を薦める。この映画は日米合作で、監督・脚本も日米のスタッフが共同で担当した。当時としては最大級の資金を投じ、最高級の特撮で真珠湾奇襲を再現した。亡き東野英治郎(水戸黄門)や三橋達也(十津川警部)や田村高廣(兵隊やくざ)が出演、ファンには嬉しい顔触れである。(余談2)
 
2001年 アメリカ映画 183分
監督 マイケル・ベイ
製作総指揮 スコット・ガーデンアワー 原作 −
音楽 ハンス・ジマー 脚本 ランドール・ウォレス
ベン・アフレック(レイフ・マコーレ)
ジョシュ・ハートネット(ダニー・ウォーカー)
ケイト・ベッキンセイル(イヴリン・ジョンソン)
ウィリアム・リー・スコット(−)
グレッグ・ゾーラ(−)
ユエン・ブレムナー(−)  アレック・ボールドウィン(ジミー・ドゥーリトル)
ジェームズ・キング(−)  キャサリン・ケルナー(−)
ジェニファー・ガーナー(−)  ジョン・ヴォイト(ルーズベルト大統領)
キューバ・グッディング・Jr(ドリー)  マイケル・シャノン(−)
コルム・フィオール(−)  ピーター・ファース(−)
ベス・グラント(−)  デヴィッド・カウフマン(−)
マコ(山本五十六)  ケイリー=ヒロユキ・タガワ(源田実)
リーランド・オーサー(−)  トム・サイズモア(アール)
ガイ・トーリー(−)  スコット・ウィルソン(−) 
トマス・アラナ(−)  ウィリアム・フィクトナー(−)
マット・デイヴィス[俳優](−)  ジョン・ディール(−)
 
(余談1)労力がいるが、代表的な例を指摘する。私はある程度の脚色と演出は許容するタイプだが、それでも以下の描写はケシカラン。
 
映画では野外の人通りのある場所で真珠湾攻撃の決定がなされた。言うまでもなく、実際は国運を左右する重大事なのでキチンとした会議室で行なわれた。しかも大本営レベルでは扱わず、統帥権をもつ昭和天皇臨席の御前会議で決定された。
 
映画では鳥居の前に設置されたプールで作戦会議をする。噴飯モノだ。日本をおちょくっているのか?
 
・日本艦船の中の大量の蝋燭。日本海軍の稚拙な技術と貧しさを表現したかったのだろうが、言うまでもなく日本海軍は一応電化されていた。それに大量の火薬と燃料を積んでいる船の中で火をともす馬鹿はいない。当時の飯炊きも電気やスチームで調理しているというのに。
 
・当時のゼロ戦は航続距離に優れた21型を使用しているが、映画では大戦中盤で登場した52型が出ている。これは許せる。ゼロ戦の細かい違いなど、マニアしかわからないだろうから。そもそも多くの戦争映画でアメリカ戦車に鉤十字を塗装してドイツ戦車に見立てているわけだから。
 しかし、大戦初期のゼロ戦は銀色だ。映画のような緑ではない。緑に塗装するようになったのは、米軍機の性能が日本軍機に伯仲するようになってからだ。
 
真珠湾攻撃時、攻撃機は民間施設にまで機銃掃射をしているが、当時の日本海軍にそんな暇はなかった。迅速に軍施設を攻撃して帰投するので精一杯で、ゆえに米空母を撃ち漏らした。
 
・主人公のパイロットがゼロ戦を撃墜していく場面は、ヒーロー活劇として理解はしている。しかし、主人公が操るP-40の性能は遥かにゼロ戦に劣る上に、当時のアメリカ軍パイロットの練度は日本の飛行兵より劣る。
 
・戦闘機パイロットのはずの主人公たちが爆撃機隊にも参加している。ありえない。判りやすく例えて言うなら、自動二輪の免許しか持っていない人間が大型ダンプの運転をするようなものだ。
 
・実際の東京空襲では逆に米軍機が民間人に機銃掃射を加えたが、映画ではカットされている。アメリカ人は判りやすい性格だ。
 日中戦争を舞台にした邦画「春婦伝」では、日本軍は悪の軍隊に描かれ、中国の八路軍は良い軍隊に描く、アメリカ人には無い素晴らしい美徳だ。(半分皮肉)
 
・東京の街並みが、昭和初期というより明治のような感じがするが気のせいだろうか? また標的となる工場に判りやすく看板を立てているのは面妖だ。いくら敗戦国でも日本人はそこまで馬鹿ではない。
 
 巨額の予算をつぎ込んだ長尺大作にしては、あまりに「ギャグ」が多すぎる。

(余談2)日本側監督は黒澤明氏の予定だったが、様々な事情で深作欣二氏らに交代。黒澤氏はその後の作風を一変させる。

 私の持論だが、戦争映画は一国だけに任せては駄作になる危険がある。当事国全てによる合作が望ましい。

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