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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「空海」 絶望から脱出しよう〔31〕 

空海」 
2009年は
真言宗と天台宗が千二百年ぶりに歩み寄り。




【原題】
【公開年】1984年  【制作国】日本国  【時間】179分  【監督】佐藤純彌
【企画】全真言宗青年連盟
【音楽】ポール・バックマスター 玉木宏樹 ツトム・ヤマシタ
【脚本】早坂暁
【言語】日本語 一部中国語・サンスクリット語
【出演】北大路欣也(真魚/空海)  松岡章夫(真魚)  加藤剛(最澄)  石橋蓮司(橘逸勢)  室田日出男(悦々)  成田三樹夫(藤原葛野磨)  小川真由美(藤原薬子)  中村嘉葎雄(平城天皇)  西郷輝彦(嵯峨天皇)  丹波哲郎(桓武天皇)  佐藤仁哉(伊豫親王)  森繁久彌(阿刀大足)  西村晃(佐伯田公)  真行寺君枝(房女)  上月左知子(玉寄)  立花一男(真魚の兄)  大場順(石川道益)  伊藤達広(菅原清公)大林丈史(高階遠成)  滝田裕介(藤原縄主)  菱谷広子(式子)  原田樹世士(藤原仲成)  宮崎達也(真如)  佐藤佑介(泰範)  福田勝洋(智泉)  御木本伸介(実恵)  伊沢一郎(勤操)  辻萬長(徳一)  菅貫太郎(永忠)

【成分】笑える ファンタジー ゴージャス 知的 真言宗 天台宗 仏教 権力抗争 8世紀末~9世紀 

【特徴】「弘法大師御入定1150年御遠忌記念映画」とのふれこみで真言宗の青年連盟を中心に気合を入れて制作された大河映画。なんと3時間に及ぶ大作であり、留学時代の空海を描くために中国ロケも敢行。時代劇としては珍しく平安時代初期なので衣装は奈良時代風にエキゾチックな中国的。
 北大路欣也氏がエネルギッシュで若々しい空海を大袈裟に熱演。当時はまだ狡猾な悪役が多かった石橋蓮司氏が後に見られる善良な狂言回し的キャラを本作で演じる。

【効能】どんな絶望的災難が降りかかっても希望を失わせない効果が若干期待できる。

【副作用】3時間と長い時間をかけた割りに偉人の半生のダイジェスト版的軽さがあって拍子抜けする。演出や効果音やBGMが悪い意味で笑える。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
真言宗と天台宗の
千二百年に渡る確執の発端。


 そういえば、今年(2009年)は天台座主が高野山を来月公式に訪問した年だ。歴史的雪解けよりも、1200年ものあいだ確執が続いていた事の方が驚きだった。もちろん、世界各地で繰り広げられているイスラムとキリストの確執や戦争に比べればまだまだ可愛らしいものなのだが。

 さて、その確執の発端となる出来事を描写した映画が80年代に制作公開された「空海」である。3時間近くある長編で中国ロケも敢行した大掛かりなものだった。主人公空海を演じるのは中年の魅力が出始めた北大路欣也氏、ライバル最澄は加藤剛氏、丹波哲郎氏は平安遷都を強行した桓武帝に扮する。石橋連司氏はハイエナのような悪役が多かった当時にしては可愛らしいキャラを演じていて、空海の腰巾着官僚だ。現在の彼では主流となってしまった曲者三枚目である。その他、室田日出男氏、成田三樹夫氏、小川真由美氏、中村嘉葎雄氏、西村晃氏と濃いキャラが並ぶ。嵯峨天皇役の西郷輝彦氏が若く見える。

 作品内容は、3時間大作の割には大味感とダイジェスト感と軽さを感じてしまう。北大路欣也氏の空海はエネルギッシュであろうとする姿勢が露骨で、嵐で沈没仕掛ける遣唐使船で仁王立ちになって笑顔で叫びまくる場面は引いてしまう。(余談1)
 中国ロケを敢行したとはいえ、使われたのはホンの僅かである。中国での勉強の場面はアッサリ、トントン拍子に密教を吸収していく超人的な秀才僧侶という安易な描写に終始した。北大路欣也氏がサンスクリット語や中国語で話す場面は面白かったが。

 空海が生きていた時代に勃発した薬子の乱も簡単稚拙ステレオタイプに描かれてしまった。これは桓武天皇の次の世代である平城天皇と嵯峨天皇の権力闘争で複雑な政治的背景があるのだが、中村嘉葎雄氏扮する平城天皇をかなり知恵遅れの精神薄弱者として描かれ、それを小川真由美氏扮する魔性の女藤原薬子が妖艶に平城天皇を操るという、誠に判り易い単純構図にしてしまった。おかげで3時間大作でありながら、2時間時代劇の実質90分番組のような印象になった。

 映画では加藤剛扮する最澄がエリート僧侶として常に空海より目上の立場でニアミスをする。遣唐使船では無名の留学僧として船倉に乗り込む空海に対して最澄は正使の次に厚遇される。空海が唐で勉学に励んでいる間、最澄は早々に帰国して朝廷から重要な地位を与えられる。
 ところで、空海と最澄は初めのころ仲が良かったと伝えられている。映画でもその辺りは描写されていて、最澄は権威を振りかざすことはせず謙虚な姿勢で空海の元を訪ね教えを請い空海を感服させている。

 仲が良かった空海と最澄がやがて対立していくのだが、それが他愛の無いことか、主義主張の相違なのかは研究者から様々な説があるようだ。空海が入京する際に便宜を図ったのは最澄といわれている。また空海を師と仰ぎ弟子の礼をとって接したのも事実らしい。頻繁に空海から蔵書を借りて仏教を研究していた。
 映画では既に京の鬼門に置かれた比叡山延暦寺の責任者としての仕事があり、やむを得ず自分の愛弟子を代わりに置いて比叡山に帰る。ところが弟子は空海のもとを離れようとしない。最澄は再三核心部分の伝授を願うが空海は時期尚早と渋るに怒って絶交したように描かれている。その描き方があまりに簡単過ぎた。

 3時間も時間を使った大作の割に軽い。人間ドラマが希薄だからだ。幼少部分や入唐場面は思い切ってカットし、薬子の乱と最澄との友情と決別に重点を置いて描けば、面白い映画となったのに残念である。

(余談1)映画では描かれていなかったと記憶しているが、空海を乗せた遣唐使船は辛うじて中国に漂着したが、海賊と間違われて上陸を許されなかったらしい。空海はここで才能を発揮し、正使の代わりに嘆願書を書き唐の役人と交渉した。これは中国福建省側でも伝説になっているようだ。
 映画では空海を神秘的超人と描く傾向が強すぎるが、超人に描くにしても実際にありそうな超人ぶり、つまり偉そうな正使が現場で役に立たず、一介の留学僧空海が雄弁に唐の役人と渡り合うほうが説得力がある。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可

晴雨堂マニアアック評価
☆☆ 凡作


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