fc2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ラスト・ブラッド」 ストレス解消活劇〔70〕 

ラスト・ブラッド
仏の若手映画監督が
日本アニメを実写映画化。

 


【原題】BLOOD: THE LAST VAMPIRE
【公開年】2008年  【制作国】仏蘭西 中華人民共和国香港特別行政区  
【時間】91分  
【監督】クリス・ナオン
【原作】Production I.G
【音楽】クリント・マンセル
【脚本】クリス・チョウ
【言語】イングランド語 一部日本語

【出演】全智賢(サヤ)  アリソン・ミラー(アリス)  小雪(オニゲン)  リーアム・カニンガム(マイケル)  JJ・フェイルド(ルーク)  倉田保昭(カトウ)  コリン・サーモン(ミスター・パウエル)  マイケル・バーン(-)  マシエラ・ルーシャ(-)  ラリー・ラム(-)
        
【成分】ファンタジー 不思議 パニック 不気味 勇敢 セクシー かっこいい 女子校生 セーラー服 バンパイア 在日米軍基地 1970年 
  
【特徴】日本アニメ『BLOOD THE LAST VAMPIRE』を実写映画化。人間社会に潜伏する「オニ」と呼ばれるバンパイアたちの闘い。
 70年代の日本の街並みが比較的正確に再現されている。セーラー服姿の全智賢氏と和装の小雪の、日本刀を振り回しての格闘競演が美しい。全智賢氏はけっこうセーラー服が似合っている。また小雪の室町時代風の和装がはまりすぎていて能面的魅力がある。制作陣のキャスティングは巧い。
 ヨーロッパ人の日本オタク映画ぽい雰囲気がある。
  
【効能】美女たちの格闘にストレス解消。日本刀を振り回すセーラー服姿の全智賢氏に萌え。
 
【副作用】欧米人目線のB級日本オタク・テイストが鼻につく。原版のアニメ支持者は激怒する者多し。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
全智賢小雪には絶賛する。

 本作を観ると、日本の漫画アニメが日本文化オタクの欧米人たちの目にどう映っているのかよく解る。紀里谷和明監督が「GOEMON」をあんな形にしたのも、海外市場向け仕様である事がよく判る。あれが流行りなのだ。欧米人オタクたちが日本漫画アニメを吸収し、それを改めて欧米人のイメージで日本イメージを再構築した映像なのだ。

 時代を現代ではなく近現代の70年代に設定している。そういえば、リドリー・スコット監督が「ブレードランナー」や「ブラックレイン」でイメージしている日本もどことなく高度経済成長期のゴミゴミした日本の工場街や下町だった。欧米人のオタクはあの頃の日本が憧れなのだろうか? おそらく当時の日本の写真を大量に入手してセットを作ったのが察せられる。
 ヒロインを支援する謎の秘密結社の姿は、60年代の「サイボーグ009」に出てくる諜報員の定番で懐かしさがあり、制作陣はトキワ荘世代の漫画もかなり読み込んでいるような気がする。

 悪趣味かもしれないが、美少女が野卑な悪漢どもをバッサバッサと倒す女性ヒーローが昔から好きである。古くは「リボンの騎士」「キューティ・ハニー」「けっこう仮面」「ベルサイユのばら」のオスカル准将、最近では「あずみ」「キル・ビル」のゴーゴー夕張。
 だから全智賢氏(チョン・ジヒョン)の三つ編み頭にトラディショナル・セーラー服姿(余談1)で日本刀を振り回す姿は美しいと反応してしまう。全智賢氏はいい歳なのでセーラー服を着ると不自然さが強調されるのではないかと心配だったが、妖艶な小雪氏とアメリカンスクールの老け気味白人高校生のおかげで目立たない。
 本作で小雪氏はかなり古風な美女であることを再確認する。和装で全智賢氏と鍔せり合いする様は白くて能面のようだ。キャスティングは抜群に良い。

 この映画はどちらかといえばメジャーというよりは実験的なB級なのだろう。その他の出演者は近年の話題作やTVドラマで頭角を現してきた俳優たちで固められている。
 事件に巻き込まれるか弱いヒロインにアメリカン女性アリソン・ミラー氏、近年のアメリカTVドラマで著名になった女優だ。どう考えても構成上無理やりねじ込んだ感じがするキャラだが、アメリカ市場を考えるとアメリカのお茶の間で顔を知られたか弱そうな美女をヒロインにもってくる必要があるのかもしれない。

 基本は、黒髪の東アジアの少女がセーラー服姿で日本刀を振り回し圧倒的強さで醜い鬼たちを斬り殺し、最後に妖艶な能面風トラデショナル日本美女と対決する。まずは、そんな絵をクリス・ナオン監督は撮りたかったのだろう。肉付きをする過程で、ヨーロッパ市場・アメリカ市場・日韓中市場を睨んで構成した結果、あの形になった。そう見えてしまう。

 個人的に全智賢氏と小雪には5つ星だ。

(余談1)膝が隠れるスカートを観るとホッとするのは、私が中年オジサンになった証拠だろうか? 
 70年が舞台だとスカートはもう少し長くなければならない。あの当時は膝下5センチから10センチと、今から考えたらかなり長い。全智賢氏が着たスカートの丈は私が高校生だった80年代初頭の平均だ。

 現在、セーラー服をはじめ日本の女学生の制服が欧米人女性の漫画アニメオタクの間で好評らしい。オタクの聖地を観光する際に購入しているようだ。さらに日本の女学生式の制服を採用する学校も増えているそうだ。
 世界に通用するのは日本のオタク文化か。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作


晴雨堂関連作品案内
BLOOD THE LAST VAMPIRE [DVD]

晴雨堂関連書籍案内
ラスト・ブラッド (角川ホラー文庫) 林巧


 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



オリジナルのアニメ短編映画が凄く面白かっただけに、そのオリジナルに対する敬意のないこの映画には凄く残念でした。

そろそろチョン・ジヒョンちゃんも作品選びをもっと内容重視でしないと、本当にいろんな意味で危ないですよ。
[ 2009/12/17 21:05 ] [ 編集 ]
にゃむばなな氏へ

> オリジナルのアニメ短編映画が凄く面白かっただけに、そのオリジナルに対する敬意のないこの映画には凄く残念でした。

 東アジアの映画を欧米人がリメイクする、私たち日本人鑑賞者は覚悟しなければなりませんね。
 彼らは彼らなりに「敬意」を持っているつもりですよ。ロケセットやキャスティングなど、なかなか勉強しています。そして、自分らの実写リメイクはもっと良い、アニメよりもさらに面白くした、と「自信」をもっているところにムカつきます。

> そろそろチョン・ジヒョンちゃんも作品選びをもっと内容重視でしないと、本当にいろんな意味で危ないですよ。
 
 韓流女優を取り巻く環境は厳しいですね。
[ 2009/12/20 00:48 ] [ 編集 ]
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://seiudomichael.blog103.fc2.com/tb.php/1018-3d45ed58

2000年に公開されたアニメーション映画、「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の実写リメイク。 監督は「キス・オブ・ザ・ドラゴン」で知られるフランス人のク...
【 33 -8-】 昨日は自宅からすぐ近くで仕事が終了でせっかく早く家に帰れるのに、妻が「友人とこに子供が産まれて見舞いに行ってくるから遅いよ」って言うので、特に見たいというわけでなかったが、わざわざ梅田に戻ることにして、ファーストディということでもあるし映?...
チョン・ジヒョンが『BLOOD THE LAST VAMPIRE』のセーラー服少女サヤを演じる?! こ、これは必見とばかりに、中身よりもひたすらチョン・ジヒョン目当てで期待していた『ラスト・ブラッド』を観てきました。 ★★★ チョン・ジヒョンがサヤ役にハマりまくりで、可愛くて...
[2009/12/17 01:06] そーれりぽーと
「ひらりん的映画ブログ」の記念すべき1000本目の映画レビューになりました。 ひらりんお気に入りのチョン・ジヒョン主演作を千本目に当てるのは偶然ではありません。 ちょっと狙ってました。
てっきり日本の映画にチョン・ジヒョンが出演してるんだと思ってたんだけど、プロモーション映像では英語のセリフで字幕がついてるので、これはいったい何なんだろ?と思ったら原作は日本のフルデジタル・アニメ『BLOOD THE LAST VAMPIRE』という作品で、監督がジャン・レ...
[2009/12/17 07:29] カノンな日々
(原題=Blood The Last Vampire) ----これって、確か以前、日本でアニメーションになってたヤツだよね。 苦手の押井守関係の作品の中では、すんなり観られたとか言っていなかった? 「よく覚えているね。 それはフルデジタルアニメーション『BLOOD THE LAST VAMPIRE...
[2009/12/17 10:19] ラムの大通り
やはりジャパニメーション作品の実写版は日本人監督がすべきだ!そうでないとこんな迷いだらけの映画に成り下がってしまう。そういう感想しか残らない駄作でした。オリジナルの『BLOOD THE LAST VAMPIRE』をご覧になっていない方はこの映画を見てどう思われたかは分かりま...
[2009/12/17 21:06] めでぃあみっくす
ラスト・ブラッド スペシャル・エディション [DVD]オリジナルは日本製カルト・アニメ「BLOOD THE LAST VAMPIRE」。人類の未来を背負って戦う少女サヤが、人間界に潜むオニ(バンパイア)と彼らの長である宿敵オニゲンと戦うアクション・ホラーだ。サヤがアメリカン・スク?...
「ラスト・ブラッド」、DVDで観ました。 ベトナム戦争の最中の1970年――セーラー服姿の少女サヤは、日本の闇に潜む化け物たちを追って、...
[2009/12/18 10:02] クマの巣
(原題:BLOOD THE LAST VAMPIRE) 【2008年・香港/フランス】試写会で鑑賞(★★★☆☆) 2000年に製作されたアニメーション映画「BLOOD THE LAST VAMPIRE」を、実写リメイクしたアクション・ホラー映画。 1970年、東京。古来より存在し、人間に化けながら人の生き血?...
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
235位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
117位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク