「スター・トレック」
新たなスタートレックの歴史が始まる。 【原題】STAR TREK
【公開年】2009年
【制作国】亜米利加
【時間】126分
【監督】J・J・エイブラムス 【原作】ジーン・ロッデンベリー 【音楽】マイケル・ジアッキノ
【脚本】ロベルト・オーチー アレックス・カーツマン
【出演】クリス・パイン(ジェームズ・T・カーク)
ザカリー・クイント(スポック) エリック・バナ(ネロ) ウィノナ・ライダー(アマンダ・グレイソン)
ゾーイ・サルダナ(ウフーラ) カール・アーバン(レナード・“ボーンズ”・マッコイ) ブルース・グリーンウッド(クリストファー・パイク) ジョン・チョー(スールー) サイモン・ペッグ(スコッティ) アントン・イェルチン(パーヴェル・チェコフ) ベン・クロス(サレク) レナード・ニモイ(未来のスポック) クリス・ヘムズワース(ジョージ・カーク) ジェニファー・モリソン(ウィノナ・カーク) ジミー・ベネット(ジェームズ・T・カーク(少年期)) ヤコブ・コーガン(スポック(少年期)) ファラン・タヒール(-) レイチェル・ニコルズ(-) クリフトン・コリンズ・Jr(-) グレッグ・エリス(-) ケルヴィン・ユー(-) アマンダ・フォアマン(-)
【成分】楽しい スペクタクル パニック 勇敢 知的 かっこいい コミカル 宇宙船 SF
【特徴】かーく船長版の新装開店。エンタープライズ号船長ジェイムス・タイベリアス・カークの出生から船長就任までを描く。しかしながら、敵役のロミュラン人がタイムスリップしてカークの父親を殺してしまったため、初代エンタープライズ号の関係者たちは微妙に年齢や性格や相関関係が変化してしまうのが特徴。例えば品行方正でエリート街道まっしぐらの紳士だった主人公カークの性格がかなりやんちゃになっている。TVシリーズではチョイ役のレギュラーだったウフーラ大尉(ウラ中尉)がヒロインに昇格。しかしその中でもスポックの性格だけは基本変化無しなのが興味深い。
企画段階でカーク役で名をはせたウイリアム・シャトナー氏が出演陣に加えられなかったことに、本人が不快感を表明した経緯もあった。ただ「盟友」であるレナード・ニモイ氏はスポック役でカメオ出演している。若きスポック訳の
ザカリー・クイント氏とはまるで親子のようだ。
本作の新装開店版で新たなスタートレックがどんな展開をするのか見てみたい。
【効能】未来に向けての希望が湧き起こる。
【副作用】スタートレックへの冒涜に見える。スタートレックの魅力が激減。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
トレッキーの愉快な困惑。 一応、私はトレッキーである。大袈裟かもしれないが、TVシリーズ「宇宙大作戦」は私にとって活力を与えてくれる作品だ。
ほぼ同時期に制作されたイギリスの「謎の円盤UFO」ストレイカー司令官は常に思いつめ十字架を背負い続ける息苦しさがあったし、少し後で制作された日本の「宇宙戦艦ヤマト」は体育会系的な重い緊張感と厳しさがあった。それに比べてアメリカの「
スター・トレック」のカーク船長は陽気で明るくて、どんな苦難が立ちはだかっても常に楽天的に明るい未来を見続け活路を開いていく。子供のころはそんなカーク船長率いるエンタープライズ号が好きだった。
さて本作「
スター・トレック」はそのカーク船長の若い頃の物語であるが、違和感がある。いくら若いからといって、こんなに軽くて喧嘩っぱやな性格だったのか? 「宇宙大作戦」のカーク船長にしてもまだ34歳の青年だ。しかも独身である。齢を重ねたからといって性格や価値観が劇的に変化する訳ではなく、所帯を持ったり子供ができるなどの節目で変化して行く。独身であれば、17の高校生も25の青年も基本的に変わりはない。カークも港港に女ありの生活を続けて人生の節目を経験しないまま過ごしてきたから、基本は若い頃から貫禄の紳士だったはずだ。ところが本作のやんちゃなカークは別人だ。
スポックはさほど変わりはなかった。表情や話し方や歩き方はまさにスポック、遠目で見たらレナード・ニモイ氏が演じているようだ。あれ? ウフーラと恋仲だなんて? 「宇宙大作戦」ではスポックとウフーラは上司と部下以上の関係ではなかったはず。それどころか初期のウフーラは冷淡なスポックに反感を隠さなかった。スポックに恋愛感情を抱いていたのは看護長のクリスチンだったはず。スポックはドクター・マッコイとよく対立するが本作ではカークと対立する。のっけからチェコフやスルーが艦橋のメンバーにいるのに、スコッティ機関長がいない。(余談1)キャラの性格や人物相関が異なっている。
マッコイの医療器具や機械の電子音、総合職の黄色・科学医療の青・機関技術の赤の艦内服も懐かしい、しかしどこか違う。制服の布質や袖章と襟の形状が違うし、カークの時代では揉み上げをテクノカットのように先端を尖らせて剃っていたのに、本作では「スタトレカット」をやってない。パッと見は「宇宙大作戦」のエンタープライズなのに、けっこう大きな違いがある。あれ?スポックの母親が死ぬなんて正史にはなかったぞ。バルカン星が崩壊するのも無かった。
ああ、そうか。未来からロミュランがタイムスリップして、カークの父親を殺したから歴史が変わったんだな。カークも家庭環境が変わったために正史では順調にキャリアを重ねてスピード出世するところ、グレて性格が変わりキャリアのスタートが遅れた。他の登場人物も微妙に性格や年齢が変わってしまった。
ということは、後のピカード艦長やシスコ艦長、ジェンウェイン艦長も変わってしまう事なのか? まったく新しい「
スター・トレック」の歴史を始める決意表明が本作なのか。
戸惑いと困惑の連続だったが、全く新しいカーク船長が始める歴史を見てみたい気持ちはある。当然、本作がそこそこ興行的に成功すれば続編やTVシリーズも新につくるのだろう。
(余談1)チェコフがTVシリーズのレギュラーになるのは中盤に入ってから。噂では、ソ連のメディアが「最初に有人宇宙飛行を成功させたのはソビエトなのに、エンタープライズにアメリカ人ばかりなのはケシカラン」との批判があったらしい。
スコッティは本作後半に登場、独特の訛りのある英語に、ああスコッティだと安堵した。
本作では完全にウフーラがヒロインとなった。なんとちょっとしたお色気場面も披露する。「宇宙大作戦」時代ではチョイ役レギュラーだったのに、アメリカ現代史を体感する。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作
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トレッキーの愉快な困惑。 一応、私はトレッキーである。大袈裟かもしれないが、TVシリーズ「宇宙大作戦」は私にとって活力を与えてくれる作品だ。
ほぼ同時期に制作されたイギリスの「謎の円盤UFO」ストレイカー司令官は常に思いつめ十字架を背負い続ける息苦しさがあったし、少し後で制作された日本の「宇宙戦艦ヤマト」は体育会系的な重い緊張感と厳しさがあった。それに比べてアメリカの「
スター・トレック」のカーク船長は陽気で明るくて、どんな苦難が立ちはだかっても常に楽天的に明るい未来を見続け活路を開いていく。子供のころはそんなカーク船長率いるエンタープライズ号が好きだった。
さて本作「
スター・トレック」はそのカーク船長の若い頃の物語であるが、違和感がある。いくら若いからといって、こんなに軽くて喧嘩っぱやな性格だったのか? 「宇宙大作戦」のカーク船長にしてもまだ34歳の青年だ。しかも独身である。齢を重ねたからといって性格や価値観が劇的に変化する訳ではなく、所帯を持ったり子供ができるなどの節目で変化して行く。独身であれば、17の高校生も25の青年も基本的に変わりはない。カークも港港に女ありの生活を続けて人生の節目を経験しないまま過ごしてきたから、基本は若い頃から貫禄の紳士だったはずだ。ところが本作のやんちゃなカークは別人だ。
スポックはさほど変わりはなかった。表情や話し方や歩き方はまさにスポック、遠目で見たらレナード・ニモイ氏が演じているようだ。あれ? ウフーラと恋仲だなんて? 「宇宙大作戦」ではスポックとウフーラは上司と部下以上の関係ではなかったはず。それどころか初期のウフーラは冷淡なスポックに反感を隠さなかった。スポックに恋愛感情を抱いていたのは看護長のクリスチンだったはず。スポックはドクター・マッコイとよく対立するが本作ではカークと対立する。のっけからチェコフやスルーが艦橋のメンバーにいるのに、スコッティ機関長がいない。(余談1)キャラの性格や人物相関が異なっている。
マッコイの医療器具や機械の電子音、総合職の黄色・科学医療の青・機関技術の赤の艦内服も懐かしい、しかしどこか違う。制服の布質や袖章と襟の形状が違うし、カークの時代では揉み上げをテクノカットのように先端を尖らせて剃っていたのに、本作では「スタトレカット」をやってない。パッと見は「宇宙大作戦」のエンタープライズなのに、けっこう大きな違いがある。あれ?スポックの母親が死ぬなんて正史にはなかったぞ。バルカン星が崩壊するのも無かった。
ああ、そうか。未来からロミュランがタイムスリップして、カークの父親を殺したから歴史が変わったんだな。カークも家庭環境が変わったために正史では順調にキャリアを重ねてスピード出世するところ、グレて性格が変わりキャリアのスタートが遅れた。他の登場人物も微妙に性格や年齢が変わってしまった。
ということは、後のピカード艦長やシスコ艦長、ジェンウェイン艦長も変わってしまう事なのか? まったく新しい「
スター・トレック」の歴史を始める決意表明が本作なのか。
戸惑いと困惑の連続だったが、全く新しいカーク船長が始める歴史を見てみたい気持ちはある。当然、本作がそこそこ興行的に成功すれば続編やTVシリーズも新につくるのだろう。
(余談1)チェコフがTVシリーズのレギュラーになるのは中盤に入ってから。噂では、ソ連のメディアが「最初に有人宇宙飛行を成功させたのはソビエトなのに、エンタープライズにアメリカ人ばかりなのはケシカラン」との批判があったらしい。
スコッティは本作後半に登場、独特の訛りのある英語に、ああスコッティだと安堵した。
本作では完全にウフーラがヒロインとなった。なんとちょっとしたお色気場面も披露する。「宇宙大作戦」時代ではチョイ役レギュラーだったのに、アメリカ現代史を体感する。
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