「天使と悪魔」 ローマ観光を楽しもう 【原題】ANGELS & DEMONS
【公開年】2009年
【制作国】米
【時間】138分
【監督】ロン・ハワード 【原作】ダン・ブラウン 【音楽】ハンス・ジマー
【脚本】デヴィッド・コープ アキヴァ・ゴールズマン
【出演】トム・ハンクス(ロバート・ラングドン) アイェレット・ゾラー(ヴィットリア・ヴェトラ)
ユアン・マクレガー(カメルレンゴ) ステラン・スカルスガルド(リヒター隊長) ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(オリヴェッティ刑事) ニコライ・リー・コス(暗殺者) アーミン・ミューラー=スタール(シュトラウス枢機卿) トゥーレ・リントハート(-) デヴィッド・パスクエジ(-) コジモ・ファスコ(-) マーク・フィオリーニ(-)
【成分】ゴージャス パニック 知的 キリスト教 ローマ バチカン
【特徴】。
【効能】。
【副作用】。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
豪華なローマ観光オリエンテーリング。 若い頃、オリエンテーリング3級指導員の講習を受けたことがある。オリエンテーリングとは、地図とコンパスを頼りにチェックポイントをたどりながらゴールを目指すスポーツだ。ハードなスポーツではないが、地図とコンパスの扱いが達者でなければならないし、地形を読み取る技術と推理力と判断力が要る。頭を使うスポーツだ。また競技となればダラダラ歩く訳にはいかず、クロスカントリーみたいで意外に体力も要る。(余談1)
本作はまさにオリエンテーリングだ。ガリレオが残した文書とルネッサンス時代のキリスト教にまつわる薀蓄を頼りにローマ市中を走り回る。
オリエンテーリングは前人未到の森林を走るわけではない。精細な地図が存在する地域に競技主催者があらかじめコースをセッティングし、競技者は主催者から手渡された地図を見てコースまでの道のりを分析判断する。本作で登場するイルミナティとガリレオの暗号は、犯罪の首謀者が予めセッティングしたコースを主人公ラングドン教授に走らせるため残した地図のようなものだ。
オリエンテーリング方式のミステリーは、土曜ワイド劇場などにしばしば登場するトラベルミステリー「十津川警部シリーズ」で判るように、物語の性格上さまざまな現場へ移動し現場にまつわる薀蓄を披露する。だからNHK大河ドラマと同じく観光宣伝に利用しやすく、ドラマ化には観光資本とのタイアップはつきものだ。本作の制作目的の一つにバチカン周辺の観光宣伝が大いにあるはずだし、少しは法王庁の政治的宣伝もあるだろう。
この映画は万人にとってはローマ観光気分に浸れるしミステリー加減も心地よいドンデン返しだ。難解にし過ぎると万人は退屈するし、単純にし過ぎるとミステリーではなく低俗サスペンスになり伝統と格式のバチカンを舞台にする映画には相応しくない。潤沢な予算に見合った体裁を整えつつ物語を単純に改編させ商業的に大成功をおさめる。さすがは
ロン・ハワード監督だ。(余談2)
しかし、映画の意図が最初から見えてしまったようで少しつまらない。仮に原作通りであっても、アイディアはキリストの神とSFが大好きな手塚治虫氏が好んで使用しそうなものなので新機軸は感じられない。配役から真犯人も推測できてしまう。2時間強の作品であの顔ぶれでは、真犯人役に相応しいキャラはおのずと限定されてしまう。見るからに悪人面は真犯人ではない。
2時間ドラマの豪華版だ。
(余談1)OLと略される事が多い。オリンピック正式種目にする運動が展開されているが、今のところボーイスカウトなどを中心に全世界に競技者は広がっているが、競技人口そのものは北欧に集中しているためと、広いフィールドで行われるため観戦に向かないなどでIOCは難色を示している。
もともとはスウェーデン軍の歩兵演習に編み出された競技である。スウェーデン製の競技専用コンパスを用いて方位や距離を割り出す。市販の安い方位磁石ではかなりしんどい。
(余談2)特に、カメルレンゴのパトリック・マッケンナの設定が簡略化されてしまっている。手塚治虫氏が好みそうな運命の皮肉と葛藤なのだが、映画では強烈な皮肉も感じられないし、カメルレンゴの葛藤もイマイチ薄い。
因みに知人がカメルレンゴを人名と勘違いした。そんな人が多いと思うので説明すると役職名である。法王の秘書長だ。機能としては内閣の官房長官のようなものと思えばいいだろう。
次いでに説明すると、バチカンにスイス衛兵隊がいるのは自前の軍隊がいない法王庁が16世紀にスイスから傭兵を呼び寄せ、それが現在も続いている。山岳地帯のスイスは当時産業らしい産業はなく傭兵で外貨を稼いでいた。時代が下って観光や精密機器などの産業が発展すると傭兵国家から卒業する。19世紀後半に国や自治体レベルで傭兵を輸出する事が禁止され、20世紀初め頃には個人の傭兵契約もできなくなった。ところが、唯一バチカンに駐屯する衛兵だけは伝統文化としての価値から例外として存続している。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作
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豪華なローマ観光オリエンテーリング。 若い頃、オリエンテーリング3級指導員の講習を受けたことがある。オリエンテーリングとは、地図とコンパスを頼りにチェックポイントをたどりながらゴールを目指すスポーツだ。ハードなスポーツではないが、地図とコンパスの扱いが達者でなければならないし、地形を読み取る技術と推理力と判断力が要る。頭を使うスポーツだ。また競技となればダラダラ歩く訳にはいかず、クロスカントリーみたいで意外に体力も要る。(余談1)
本作はまさにオリエンテーリングだ。ガリレオが残した文書とルネッサンス時代のキリスト教にまつわる薀蓄を頼りにローマ市中を走り回る。
オリエンテーリングは前人未到の森林を走るわけではない。精細な地図が存在する地域に競技主催者があらかじめコースをセッティングし、競技者は主催者から手渡された地図を見てコースまでの道のりを分析判断する。本作で登場するイルミナティとガリレオの暗号は、犯罪の首謀者が予めセッティングしたコースを主人公ラングドン教授に走らせるため残した地図のようなものだ。
オリエンテーリング方式のミステリーは、土曜ワイド劇場などにしばしば登場するトラベルミステリー「十津川警部シリーズ」で判るように、物語の性格上さまざまな現場へ移動し現場にまつわる薀蓄を披露する。だからNHK大河ドラマと同じく観光宣伝に利用しやすく、ドラマ化には観光資本とのタイアップはつきものだ。本作の制作目的の一つにバチカン周辺の観光宣伝が大いにあるはずだし、少しは法王庁の政治的宣伝もあるだろう。
この映画は万人にとってはローマ観光気分に浸れるしミステリー加減も心地よいドンデン返しだ。難解にし過ぎると万人は退屈するし、単純にし過ぎるとミステリーではなく低俗サスペンスになり伝統と格式のバチカンを舞台にする映画には相応しくない。潤沢な予算に見合った体裁を整えつつ物語を単純に改編させ商業的に大成功をおさめる。さすがは
ロン・ハワード監督だ。(余談2)
しかし、映画の意図が最初から見えてしまったようで少しつまらない。仮に原作通りであっても、アイディアはキリストの神とSFが大好きな手塚治虫氏が好んで使用しそうなものなので新機軸は感じられない。配役から真犯人も推測できてしまう。2時間強の作品であの顔ぶれでは、真犯人役に相応しいキャラはおのずと限定されてしまう。見るからに悪人面は真犯人ではない。
2時間ドラマの豪華版だ。
(余談1)OLと略される事が多い。オリンピック正式種目にする運動が展開されているが、今のところボーイスカウトなどを中心に全世界に競技者は広がっているが、競技人口そのものは北欧に集中しているためと、広いフィールドで行われるため観戦に向かないなどでIOCは難色を示している。
もともとはスウェーデン軍の歩兵演習に編み出された競技である。スウェーデン製の競技専用コンパスを用いて方位や距離を割り出す。市販の安い方位磁石ではかなりしんどい。
(余談2)特に、カメルレンゴのパトリック・マッケンナの設定が簡略化されてしまっている。手塚治虫氏が好みそうな運命の皮肉と葛藤なのだが、映画では強烈な皮肉も感じられないし、カメルレンゴの葛藤もイマイチ薄い。
因みに知人がカメルレンゴを人名と勘違いした。そんな人が多いと思うので説明すると役職名である。法王の秘書長だ。機能としては内閣の官房長官のようなものと思えばいいだろう。
次いでに説明すると、バチカンにスイス衛兵隊がいるのは自前の軍隊がいない法王庁が16世紀にスイスから傭兵を呼び寄せ、それが現在も続いている。山岳地帯のスイスは当時産業らしい産業はなく傭兵で外貨を稼いでいた。時代が下って観光や精密機器などの産業が発展すると傭兵国家から卒業する。19世紀後半に国や自治体レベルで傭兵を輸出する事が禁止され、20世紀初め頃には個人の傭兵契約もできなくなった。ところが、唯一バチカンに駐屯する衛兵だけは伝統文化としての価値から例外として存続している。
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