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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」 社会を冷笑したい時に〔31〕 

ダイアリー・オブ・ザ・デッド」 
観客視点の社会派ゾンビ映画。

 

 
【原題】DIARY OF THE DEAD
【公開年】2007年  【制作国】亜米利加  【時間】95分  
【監督】ジョージ・A・ロメロ
【原作】
【音楽】ノーマン・オレンスタイン
【脚本】ジョージ・A・ロメロ
【言語】イングランド語
【出演】ミシェル・モーガン(デブラ)  ジョシュ・クローズ(ジェイソン)  ショーン・ロバーツ(トニー)  エイミー・ラロンド(トレーシー)  ジョー・ディニコル(エリオット)  スコット・ウェントワース(アンドリュー)  フィリップ・リッチョ(リドリー)  クリス・ヴァイオレット(ゴードー)  タチアナ・マスラニー(メアリー)  ジョージ・A・ロメロ(警察署長)  ウェス・クレイヴン(ニュースの声)  スティーヴン・キング(ニュースの声)  サイモン・ペッグ(ニュースの声)  ギレルモ・デル・トロ(ニュースの声)  クエンティン・タランティーノ(ニュースの声)
        
【成分】パニック 不気味 勇敢 知的 切ない ジャーナリズム ゾンビ ホラー
  
【特徴】今回のパターンは、銃器になれたSWAT隊員ではなく、平凡なピッツバーグ大の学生たちによる映画サークルとその顧問の教授が主人公。ゾンビ映画を撮っていたら、本物のゾンビに取り囲まれ逃げ惑う。
 作中で市中の混乱を伝えるニュース映像でアナウンサーの声をホラーやバイオレンス物を手がける著名な映画人がカメオ出演、ロメロ監督自身もゾンビ騒ぎを否定する胡散臭そうな警察署長役で出演している。
  
【効能】終末ロマンを空想していた青少年時代を思い出す。
 
【副作用】パターンがナンネリに見えてつまらない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ロメロ馴染みのピッツバーグ

 素直に恐怖やスリルや新機軸を求めているホラー映画ファンが観たら、たぶんつまらないと思う。そういう方々はマンネリB級ホラーを見せられたような気持ちになってしまうだろう。
 
 私にとってはかなりツボにはまった作品だった。個人的には最大限の敬意と賛辞をおくりたい。主人公たちは銃器に慣れた兵士でも警官でもなく平凡な大学生であり、課題の自主映画を制作している点が感情移入しやすい。高校時代は私も友人たちの自主制作映画を手伝った事があるし、大学に入ってからはフォトジャーナリズムに興味を持った。
 だから主人公ジェイソンの感覚がなんとなく解る。おそらく顧問として撮影に同行したアンドリュー教授とジャーナリズムや報道写真などについて一晩中語り合ったり、社会問題やとりわけ戦争について激論したに違いない。撮影クルーは、そんなジェイソンと教授を中心に集まった学友たちだ。学友たちはオタク的なジェイソンや教授をからかったり小馬鹿にして弄りながらも憧れと敬意を抱いて付き合っている、そんな日常が目に浮かぶ。(余談1)
 
 作中では70年代の「ゾンビ」には無かった様々なアイテムが出てくる。パソコンを使って即興で映像を編集したり、YouTubeにアップされた全世界の映像を閲覧したり、あるいは自分たちが情報を発信したり。現代のネット社会は一個人がメディアを持ち発信できる。
 誰でもメディアを持ち発信できるという事は、なんのチェックも無く無批判に情報が垂れ流される。報道機関であればデスクや編集長がチェックを入れ事実関係の確認を行ったものだが、個人レベルの発信では主観にまかせた情報発信が抵抗なく行われる。稚拙な文章でも活字になって全世界に公開、昔では考えられなかった。
 しかし物事には必ず逆の面もある。チェックが入る事は過ぎると検閲になり、国家権力や企業の情報操作を受けることにも通じる。個人レベルでの情報発信ができる事は、権力による弾圧や規制を掻い潜って自由に言論を展開できる事でもある。
 
 作中ではゾンビが発生伝染、それこそインフルエンザのように世界中で蔓延し、政府機関・主要報道機関は麻痺、医療機関は壊滅、州兵は略奪に走り、社会は徐々に崩壊、その中でインターネットを通じた個人発信によるメディアでの情報が錯綜していく過程が丁寧に描写されている。
 最初はTVやラジオから情報を得ようとしていた学生たちはネットに頼るようになり、やがて自分たちが最新かつ有益な情報を発信する側になってしまった事に気付く。主人公ジェイソンは監督魂でカメラを回していたのが、ジャーナリストとしての使命感に目覚め生存者のため命をかけてゾンビ現象を報道するようになる。このジェイソンのカメラアングルが映画鑑賞者の視点として映画が動く。
 
 私はホラー映画としては観ていない。メディア関係の仕事を志している若者の視点で、ゾンビ現象のただ中でサバイバルをやっている様が妙にリアリティがあり親近感がある。

(余談1)舞台となっているのはアメリカのピッツバーグ。ロメロ監督はそこのカーネギー・メロン大学を出ているので、監督の地元でもある。因みに主人公たちが在籍しているピッツバーグ大学は世界的にも名門であり、工学部と医学部が強い。アフリカ系演歌歌手ジェロ氏の母校でもある。
 
 舞台はピッツバーグなのだが、出演者の多くはカナダ出身の若手俳優で固められている。何故だろう? 「ドーン・オブ・ザ・デッド」リメイクに主演したサラ・ポーリー氏もカナダ出身だ。サラ・ポーリー人脈なのか? カナダの俳優界にはアンチ・ハリウッドやロメロ信奉者が多いのか? それともたまたまカナダ人俳優がかたまっただけなのか。
 
 ところで、作中でインタビューを受ける胡散臭そうな警官隊の上役、ロメロ監督が扮している。ゾンビが蔓延している事を否定し、移民たちによる犯罪であると発表。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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