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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「西太后」 ゴージャス気分を楽しむ時に〔5〕 

西太后」 
壮大な中国の悪女時代劇。

 

完全版6時間バージョン

【原題】火燒圓明園・垂簾聽政
【公開年】1984年  【制作国】中華人民共和国 英領香港  【時間】129分  
【監督】李翰祥
【原作】
【音楽】葉純文
【脚本】楊村彬
【言語】中国語 一部イングランド語
【出演】劉暁慶西太后)  梁家輝(咸豊帝・文宗)  陳(東太后)  張樹義(同治帝・穆宗)  周潔(麗己)  項坤(粛順)  張鉄林(恭親王・奕訴)  
        
【成分】スペクタクル ゴージャス 不気味 知的 権力闘争 宮廷 清朝末期 19世紀中頃 中国
   
【特徴】おそらく、人民中国が初めて手掛けたゴージャス時代劇スペクタクル。
 稀代の悪女と呼ばれている西太后が16歳で皇帝の后妃候補試験ともいえる「選秀女」に合格してから清王朝の最高権力を握る30前までの前半生を描いている。

 もともと、イギリス軍による圓明園略奪を主軸にした「火燒圓明園」と西太后が老臣たちを粛清して幼い同治帝を傀儡に全権を掌握する「垂簾聽政」の2つの作品を1つに合わせ6時間に及ぶ物語を2時間余に短縮しているため、作品の大味感は否めない。
 ただ、紫禁城の一大ロケーションと本格の京劇を観劇する場面など、清朝宮廷生活がゴージャスに再現。もともとは清楚な可愛らしいキャラだった劉暁慶氏が煌びやかな悪女を好演、大きく光る射るような瞳に萌えるM男も少なくないだろう。
 人民解放軍が東アジア人まるだしで顔を白く塗り赤髭やブロンドのカツラをつけてイギリス兵を演じているのが丸出しなのが微笑ましい。

 因みに本作から26年後に制作された「蒼穹之昴」での西太后は比較的実像に近いといわれている。演じた田中裕子氏は中国でも「似ている」と評判だった。
  
【効能】中国的ゴージャスに豊かな気分になれる。台詞が綺麗な普通話(標準語)なので中国語の学習に最適。
 
【副作用】史実を無視して西太后の残虐さを強調しすぎている点に不快感。中国的生臭さに気分が悪くなる。物語として大味感がある。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
中国ナショナリズムが生んだ歴史大作

 「西太后」、これは中国映画史上名高いメジャー映画なのだが、意外に現在では忘れ去られている。「ウォーロード」レビューアップを機会に書こう。

 李連杰氏(ジェット・リー)・劉徳華氏(アンディ・ラウ)・金城武氏主演の「ウォーロード/男たちの誓い」とは、清朝末期に盗賊団あがりの軍勢を率いて内乱収束に貢献する龐青雲将軍の栄光と悲劇を描いた映画だ。この作品で時の最高権力者として鋭い爪飾りをつけた手と腰から下だけ登場する西太后、彼女の半生を描いた作品が1984年に公開されている。
 
 公開当時、この映画はかなりの大評判だった。というのも、当時は文化大革命が終わって間も無い未だ人民服主流の時代、地味で文科省推薦的映画しかつくらないイメージがあった。ところが82年、若き李連杰氏を主演におそらく人民中国初の純カンフー娯楽作「少林寺」が大ブレイク、その余韻さめぬ84年に本作が公開された。

 清朝時代劇、絢爛豪華な衣装、人民解放軍を動員しての大エキストラ(余談1)、悪女と伝えられている西太后が宮廷内で権謀術の限りを尽くして成り上がり、やがて中国の最高権力を握るまでを描く歴史超大作。このスーパーエンタメ作を、あの頃はお堅いイメージだった人民中国が制作し日本でも上映されるということで、大手各紙が三段抜きの大宣伝。
 当時、私は大学で中国語を第二外国語科目に選択していた。中国語の先生は「綺麗な普通話(プートンファ、標準語)なのでぜひ観るように」と仰った。
 
 西太后には劉暁慶氏(リウ・シャオチン)が扮する。人民解放軍宣伝部隊が女優キャリアの始まりというのが中国らしい。山口美江氏をシャープな美人にした感じの女性で、宮廷にはいる少女時代から権力を握る壮年までを演じる。共演には西太后の色香に惑わされる咸豊帝に梁家輝氏(レオン・カーフェイ)、まだ白面の青年だ。皇帝の弟君役にはピーターに感じが似ている張鉄林氏。

 劉暁慶氏の悪女ぶりは迫力満点である。少女時代はまだ純心で可愛らしい所作の女の子だったが、宮廷内の権力闘争に打ち勝つため、最初は他愛ない策で皇帝の心をゲット、学校が舞台なら青春ドラマの1ページに過ぎないのだが、ここは魑魅魍魎蠢く宮廷である。寵愛をうけるようになってからは政治にも介入し、皇帝の弟と組んで政敵を次々と血祭りに上げていく。権力を握ってからの爛々と光る瞳と脂ぎって白テカりする表情は貫禄だ。
 
20歳前頃の劉暁慶 おそらく10代の劉暁慶.jpg
たぶん、20代の劉暁慶
 
西太后を演じる劉暁慶.jpg
西太后役で嫉妬深く権力志向の強い悪女を大迫力で演じた。
この頃33歳かな?
 
  
 この作品を観ていると中国の政治劇の恐ろしさが垣間見る。単純な物語に慣れてしまっている人には誰が善玉か訳が判らなくなってしまうだろう。一癖も二癖もある権力闘争劇、舞台に立つ登場人物たちが共通して心に抱く二文字は「人間不信」である。油断すると、突然の猛攻であっという間に失脚、命までとられる。
 
 「ウォーロード」の舞台は、西太后が政敵を葬り去り全権を握った頃である。

(余談1)冒頭で阿片戦争の描写があった。清朝軍とイギリス軍との大合戦なのだが、イギリス軍兵士たちは中国人まるだし、私は思わず映画館で失笑しそうになった。いくら遠目のアングルでも、刈り上げ頭の東アジア人がイギリス軍の軍服を着ているようにしか見えない。しかも、画面手前に映るエキストラ若干名だけには茶髪のカツラに白塗りメイクを施しているのが如何にもワザとらしくギャグだった。ただ、さすが本職は兵士なので、銃撃場面は機敏で美しい。
 なお、この「西太后」の本当のテーマは、イギリスの悪行を批難する事にある。フランスで中国の宝物をオークションにかけられ、中国政府は猛抗議しているのは有名なのだが、そのもともとの事件が本作にも描写されている。英仏連合軍による圓明園の略奪だ。


 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作





 
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