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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「真夏のオリオン」 ストレス解消活劇〔72〕 

真夏のオリオン」 
邦画版「眼下の敵」を目指した作品

 

 
【原題】
【公開年】2009年  【制作国】日本国  【時間】119分  【監督】篠原哲雄
【原作】池上司
【音楽】岩代太郎
【脚本】長谷川康夫 飯田健三郎
【言語】日本語 イングランド語
【出演】玉木宏(倉本孝行海軍少佐・イ-77潜水艦艦長)  北川景子(倉本いずみ/有沢志津子)  堂珍嘉邦(有沢義彦海軍少佐・イ-81潜水艦艦長)  平岡祐太(坪田誠軍医中尉・イ-77潜水艦軍医長)  黄川田将也(遠山肇・イ-77潜水艦回天搭乗員)  太賀(鈴木勝海・イ-77潜水艦回水雷員)  松尾光次(森勇平・イ-77潜水艦水雷員)  古秦むつとし(早川伸太・イ-81潜水艦水雷長)  奥村知史(小島晋吉・イ-77潜水艦水測員)  戸谷公人(山下寛二・イ-81潜水艦水測員)  三浦悠(久保憲明・イ-77潜水艦回天搭乗員)  山田幸伸(岡山宏次・イ-77潜水艦水雷員)  伊藤ふみお(有馬隆夫(イ-77潜水艦機関科員))  鈴木拓(秋山吾朗(イ-77潜水艦烹炊長))  デヴィッド・ウィニング[俳優](マイク・スチュワート(米海軍駆逐艦パーシバル艦長))  ジョー・レヨーム(ジョセフ・フリン(米海軍駆逐艦パーシバル副長))  吉田栄作(桑田伸作(特務大尉・イ-77潜水艦機関長))  鈴木瑞穂(鈴木勝海(現代))  吹越満(中津弘(大尉・イ-77潜水艦航海長))  益岡徹(田村俊雄(特務大尉・イ-77潜水艦水雷長))  
        
【成分】ロマンチック 勇敢 知的 かっこいい 海洋ロマン 第二次大戦 1945年 沖縄近海 日本語 英語 
   
【特徴】米駆逐艦と日本海軍潜水艦の死闘を描いた戦争映画。一応、敗戦直前にあった実際の海戦をモデルにしているが、内容はファンタジックにしている。あきらかに「眼下の敵」を意識した構成。
 伊号潜水艦内部のセットはかなり正確で、関係者からの助言等を得て気合を込めた映像づくりをしているのは窺われるが、たぶんに台詞や所作は当時でも現代でも軍人らしからぬトンデモが目立つ。
 ただ、「戦争」を知らない、知識が無い人たちにとっては快いエンタメ映画として楽しめるだろう。
  
【効能】気楽に観れる娯楽戦争映画なので気晴らしになる。
 
【副作用】有り得ないトンデモ場面でストレス大。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
ファンタジー太平洋戦争
 
 今なお潜水艦映画の不朽の傑作と讃えられている作品にアメリカ・西ドイツ合作の「眼下の敵」がある。58年公開の古い映画だ。アメリカ海軍の駆逐艦艦長とドイツ海軍Uボート艦長の騎士道精神あふれる知恵比べの戦い、米独をイーブンで描き、戦争というより試合のような清々しい映画だ。この作品は後の「原子力潜水艦シービュー号」「スタートレック」「宇宙戦艦ヤマト」にも影響を与えている。

 潜水艦映画の金字塔とさえ評価されている誉れ高い作品だが、私はあまり傑作とは考えていない。エンターテイメントの名作であり楽しめる作品なのだが、私の志向はやはりリアルな艦内生活を再現したウォルフガング・ペーターゼン監督「Uボート」やキャスリン・ビグロー監督「K-19」であり、実際に起こった戦争を面白おかしくスポーツ試合のように描くのは好まない。どうせスポーツにするのであれば、いっそ完全に架空世界のフィクション、例えば「海底二万哩」や「スタートレック」の方が割り切れて楽しめる。
 
 だから私にとって本作はどういう位置づけか理解いただけるだろう。「Uボート」「K-19」を100点とすれば、本作は観る前から40点をマイナスした状態なのだ。史実を参考にしているとはいえ、既に脚色された原作をさらに「ローレライ」の福井晴敏氏が映画用に脚色となれば、もはや内容は想像できるし実際に映画館で観ると面白いぐらいに予想通りの馬鹿馬鹿しい描写や有り得ない場面が目立つ。「眼下の敵」のようなエンタメを目指し過ぎてスベッている。(余談1)
 
 作品の悪口ばかり言っても仕方がないので良いところをあげると、まず伊号潜水艦の内部セットがかなり正確である事。これは制作陣の努力の賜物だろう。「Uボート」を参考にしたと思われる描写も多々あった。
 それから主役の玉木宏氏は艦長ぶりを好演していた。正確には軍艦の艦長というよりは探険船の船長を巧く演じたといった方が良い。エリートで頭が良さそうでノンビリした風情の若い艦長、歳上の叩き上げ水雷長や機関長に敬意を示しながら独特の貫禄で艦内をまとめているといった雰囲気は良かった。(余談2)
 吉田栄作氏の叩き上げ機関長ぶりも様になっていて、軽薄そうなアイドル俳優がいつのまにやら渋い俳優になったものだ。
 北川景子氏の存在は賛否あるかもしれないが、私は悪くないと思った。キスシーンを出さなかったのは英断だ。
 
 第二次大戦を知らない、あるいは知識が無い、戦争映画をあまり観た事がない方にはエンタメ佳作として楽しめるだろう。実際、「Uボート最後の決断」よりは遥にマシな映画であり、「U-571」と遜色ないデキにはなっている。

(余談1)日米両艦長は軍人ではなく民間人の感覚だ。潜水艦が敵艦の前で浮上する事は有り得ない。ラストは故障で潜航できない設定だったが、米駆逐艦が沈没した輸送船の救助にあたっているときの浮上はトンデモ場面だ。(日露戦争ならありえたかもしれないが)
 潜水艦の主任務は通商破壊、輸送船を狙う。軍艦を狙うにしても比較的ノロマな大型艦に雷撃を行い、足が速くて小回りが利く駆逐艦とは対決しない。駆逐艦に狙われたらひたすら爆雷の嵐が過ぎ去るのを待つだけだ。くだんのシチュエーションなら、潜水艦はこれ幸いと現場を離脱するか次の攻撃目標に向かう。駆逐艦なら浮上してきた潜水艦は白旗あげている訳ではないので、迷わず全砲斉射だ。
 
(余談2)機関長や水雷長は「特務」がついている。特務の意味は特殊任務をする士官ではなく、単なるノンキャリアの水兵から叩き上げで士官になった事を示す、簡単にいえばキャリアの士官と差別するために付けられたくだらん名称である。
 仮に艦長の少佐が指揮できなくなり士官は特務大尉と兵学校出の少尉の2人になった場合、現代の軍隊常識では次席の大尉が代行するが、当時の海軍では兵学校出の少尉が指揮して大尉は「部下」の少尉の命令に従う。
 
 あと、艦長たちの髪が長いのが気になる方もいるかもしれない。当時の記録フィルムや写真を見たことがあるが、髪が長くてまるで現代の大学生みたいな風貌だった。潜水艦の生活はかなり切り詰めているので、整髪する余裕が無いのかもしれない。
 しかし、日本近海で作戦行動をしているので、もう少し短くてもよかった。せめて第二種軍装(白い夏用詰襟)でウヰスキー飲んでいる場面だけでも刈上げにして前髪をポマードでオールバックにしてほしかった。
 


晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作

 
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映画「真夏のオリオン」オリジナル・サウンドトラック
眼下の敵 [DVD] ディック・パウエル
 
晴雨堂関連書籍案内
雷撃深度一九・五 (文春文庫) 池上司 原作
真夏のオリオン[文庫] (小学館文庫) 飯田健三郎
真夏のオリオン 福井晴敏
 



 
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