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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「劔岳 点の記」 感動からエナジーを得よう〔13〕 

劔岳 点の記」 
山岳映画の金字塔

 

  
【原題】
【公開年】2008年  【制作国】日本国  【時間】139分  【監督】木村大作
【原作】新田次郎
【音楽】
【脚本】木村大作 菊池淳夫 宮村敏正
【言語】日本語
【出演】浅野忠信柴崎芳太郎(陸軍参謀本部 陸地測量部測量手))  香川照之宇治長次郎(測量隊案内人))  松田龍平(生田信(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫))  モロ師岡(木山竹吉(陸軍参謀本部 陸地測量部測夫))  螢雪次朗(宮本金作(測量隊案内人))  仁科貴(岩本鶴次郎)  蟹江一平(山口久右衛門)  仲村トオル(小鳥烏水(日本山岳会))  小市慢太郎(岡野金治郎(日本山岳会))  安藤彰則(林雄一(日本山岳会))  橋本一郎(吉田清三郎(日本山岳会))  本田大輔(木内光明(日本山岳会))  宮崎あおい(柴崎葉津よ(柴崎芳太郎の妻))  小澤征悦(玉井要人(日本陸軍大尉))  新井浩文(牛山明(富山日報記者))  鈴木砂羽(宇治佐和(宇治長次郎の妻))  笹野高史(大久保徳昭(日本陸軍少将))  石橋蓮司(岡田佐吉(立山温泉の宿の主人))  冨岡弘(-)  田中要次(-)  谷口高史(-)  藤原美子(-)  タモト清嵐(-)  藤原寛太郎(-)  藤原彦次郎(-)  藤原謙三郎(-)  前田優次(-)  市山貴章(-)  國村隼(矢口誠一郎(日本陸軍中佐))  井川比佐志(佐伯永丸(芦峅寺の総代))  夏八木勲(行者)  役所広司(古田盛作(元陸軍参謀本部 陸地測量部測量手))  
        
【成分】ロマンチック 勇敢 知的 切ない かっこいい 山岳映画 アウトドア 剱岳 富山県 1907年  
   
【特徴】剱岳初登頂を目指す2組のパーティを描いた山岳映画。まるでアムンゼン隊とスコット隊の南極点初到達レースにも似ている。アムンゼンは個人的な冒険心で、スコットは英海軍大佐として大英帝国の威信を賭けて。
 本作はCG多用の当世に敢えて逆らい全て剱岳オールロケーションを敢行、空撮すら無い。アナログの迫力を魅せてくれる。俳優たちの過酷な登山をやりながらのリアルな演技と雄大な剱岳の風景は、明治の日本人の力強さと日本の原風景の美しさを改めて感じさせるだけでなく、映画づくりの原点を回帰させてくれる。
  
【効能】剱岳の美しさに癒される。明治の知性と力強さに励まされる。主人公に理想的な上司像を見る。
 
【副作用】脚色不足で退屈する。盛り上がりに欠け、がっかりする。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
スタッフ・俳優の皆さんに敬意を表します。
 
 山を登った事がある方、上級向け登山をしたことが無くても少しハードなアウトドアを経験した事があれば、この絵を撮るのがどれほど過酷で重労働なのか想像がつくと思う。本物の劔岳を撮ろうとした監督以下スタッフと俳優の気迫を感じる美しい映像の連続に感動するばかりだった。
 
 遠方からズームアウトした画像で、巨大な山の残雪を進む小さな人影を映したり、岩場を必死に登る様を超望遠で映したり、広角と望遠を切り替えたメリハリのある画像で世界に誇るべき立山連峰の雄大さと小さい人間の対比を雄弁に捉えた、これは大変な労苦である。俳優もスタッフも登山以上に過酷な重労働だったに違いない。実際の柴崎隊や小島隊に近い体験をしたのではないか。CGや空撮でやり過ごすことなく、実際に登って撮ったことは絵づくり役づくりに効果覿面だ。劔岳の絵だけでも鑑賞に値する。
 風雨や雪の描写も迫力があり、今までの「八甲田山」や「植村直己物語」といった極地モノ作品よりも迫力があった。
 
 エンタメに見慣れた方にはドラマ性が無いように見えるかもしれないが、私には程よい脚色だったと思う。逆にこれ以上いろをつけると私にはジャンクフード的味付過多となってリアリティが損なわれ、強行した厳しい山岳ロケが台無しになる。それでなくても、陸軍や日本山岳会をステレオタイプ的に描き過ぎだ。(余談1)
 浅野忠信氏扮する柴崎は謙虚なタイプの上司だ。実際に作中の柴崎的な人物を知っている。誰に対してもへりくだって接し目上風は吹かさない。松田龍平氏扮する若い測量夫は、上司には一応敬意を示すが下請けには偉そうにしてしまう、これも職場の後輩に似たような奴がいたので臨場感がある。作中では劔岳行を経て成長していく様が微笑ましい。仲村トオル氏が扮した小島烏水も育ちの良い明治の高等遊民的でグッドだ。(余談2)
 
 この映画を通して、立山連峰の美しさと当時の日本人の知性と胆力と絆をみてほしい。 
 
(余談1)日本山岳会は小島烏水が劔岳登頂の前年に設立した。日本のアルピニストの草分けであり、本職は銀行員。高学歴の高給取り、浮世絵コレクターの趣味人、欧州の登山家とも交流があるので、最新の登山知識と装備はもっていたと思う。
 ただ、小島隊は靴にピッケル、食事はキャンプ用ストーブに欧米風の厚めビスケット。柴崎隊はアイゼンを付けた草鞋に杖、食事は焚火に飯盒飯・蒸し芋。これは対立する2つのパーティを際立たせるため極端に描写したような気がする。逆なら有り得るが。
 
 当時の装備が概ね再現されている。100年前の登山は現在でいうブレザーか背広姿に毛の生えた格好で登っていて、薄衣で動きにくい。さらに滑落防止のロープも結ぶ間隔が短い。現在の登山パーティーは滑落者の巻添えになって落ちるのを防ぐため少し長さをもって各自ロープで結ぶ。100年前のマッターホルン登山などは間隔が狭いので1人が落下したら芋づる式に全員が落ちて遭難した。
 
 それから参謀本部陸地測量部の将校たちを如何にも頑迷傲慢に描いているのも気になる。たしかに軍事官僚に頑迷傲慢は少なくない。が、果たして千年も昔の先客に腹を立てるほど愚かだったのだろうか?
 
 因みに測量部の将校たちは参謀本部なので参謀を示す飾緒をつけている。第1ボタンと右肩に引っ掛けて胸に垂らしている金色の組紐である。
 
(余談2)他、宮崎あおい氏は可愛らしい新婚の細君を演じていた。色白で首が細いから後から映す和服姿が綺麗だ。新婚生活の風景は当時の知識人や中級役人をよく反映している。
 穏やかな亭主関白に憧れる男性や女性はけっこういるかもしれない。
 

 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
晴雨堂関連作品案内
八甲田山 完全版 [DVD] 森谷司郎
  
晴雨堂関連書籍案内
剣岳―点の記 (1981年) (文春文庫) 新田次郎 
誰かが行かねば、道はできない -木村大作と映画の映像- 木村大作
もうひとつの劔岳 点の記 山と溪谷社
   

 
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TBありがとうございました。

全てオールロケーション。
ほんと原点に戻った映画でしたね。
過酷な自然の中での命がけの登山、
心に迫ってくるものがありました。
[ 2010/01/20 07:28 ] [ 編集 ]
こんにちは♪
最近は山登り、ご無沙汰状態です。
出来たら再開したいと思っておりますが。。。
剱岳は熟練しないと登れないところなの、
私には無理です(笑)撮影は想像以上に大変だった
と思います。スタッフの方は機材を持っての登頂。
キャストの方も撮影のため、訓練されたのではないか
と思います。それにしても大変!
[ 2010/01/20 11:53 ] [ 編集 ]
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この作品に関しては私よりも山登りが趣味の母のほうが一足早く映画化の情報を知っていました。昨年かな?母が劔岳に登ったときにこの映画の撮影に遭遇したんだそうです。登山家さんやトレッキング愛好家らの間ではかなり話題の作品のようですね。先日、たぶんフジテレビだ...
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[2010/01/20 07:15] 花ごよみ
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監督・撮影:木村大作原作:新田次郎製作:坂上順、亀山千広プロデューサー:菊池淳夫、長坂勉、角田朝雄、松崎薫、稲葉直人脚本:木村大作、菊池淳夫、宮村敏正美術:福澤勝広、若松孝市編集:板垣恵一音楽:池辺晋一郎浅野忠信  柴崎芳太郎香川照之  宇治長次郎宮崎あ...
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