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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「愛を読むひと」 カップルで考えよう〔2〕 

愛を読むひと」 
ケイト・ウィンスレット、見事な老役。

 


【原題】THE READER
【公開年】2008年  【制作国】亜米利加 独逸  【時間】124分  【監督】スティーヴン・ダルドリー
【原作】ベルンハルト・シュリンク
【音楽】ニコ・ムーリー
【脚本】デヴィッド・ヘア
【出演】ケイト・ウィンスレット(ハンナ・シュミッツ)  レイフ・ファインズ(ミヒャエル・ベルク)  デヴィッド・クロス[俳優](青年時代のミヒャエル・ベルク)  レナ・オリン(ローズ・メイザー/イラナ・メイザー)  アレクサンドラ・マリア・ララ(若き日のイラナ・メイザー)  ブルーノ・ガンツ(ロール教授)  ハンナー・ヘルツシュプルング(ミヒャエルの娘ユリア)  ズザンネ・ロータ(ミヒャエルの母カーラ)
        
【成分】泣ける 悲しい パニック 知的 切ない セクシー 思春期 1950年代~1980年代 
   
【特徴】原作者自身が体験した思春期の頃の恋愛をベースにドイツの戦後史を描く。前半は少年と熟女の愛欲の日々、後半はドイツが抱える戦争の遺産に押し潰される2人のプラトニックな愛の経緯を流す。
  
【効能】ケイト・ウィンスレットの熟女の魅力と見事な老女役に感動。
 
【副作用】主人公マイケルの、一見すると純粋で無償の愛に潜む保身と打算に嫌悪感を感じる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
陰のある女性に夢中になる少年。

 原作者ベルンハルト・シュリンク氏はドイツの法律学者で小説家、この物語は彼の少年時代の出来事をベースにしているといわれている。
 前半は少年と熟女の夢のような愛欲の日々、後半はナチスドイツの負の遺産が2人に圧し掛かる。が、既に前半部分で何気ない習慣や表情に暗い影が忍び寄っている。

 中年以降の主人公ミヒャエル(マイケル)を演じたレイフ・ファインズ氏は期待通りの演技、ヒロインのハンナを演じたケイト・ウィンスレット氏は予想外の魅力、彼女の老け役は素晴らしかった。そして若い頃のミヒャエルを演じたデヴィッド・クロス氏、撮影当時17・8だったと思うが、多感で衝動を抑えきれない思春期時代とやや自制心がつき誤魔化すのが少しだけ上手くなった法学生の青年時代、この演じ分けも巧みだ。
 
 本作には脇に「ヒトラー 〜最期の12日間〜」のヒトラー役で世界的著名になったブルーノ・ガンツ氏が主人公の恩師に扮し、ヒトラーの秘書役だったアレクサンドラ・マリア・ララ氏が戦犯法廷のユダヤ人側証人に扮していた。
 デヴィッド・クロス氏をはじめドイツ語圏俳優がけっこう出ているのに台詞が英語というのは勿体無い。(余談1) 

 筆名が同じという訳ではないが、主人公ミヒャエル(マイケル)に同気してしまう。若い頃の私は内面に問題を抱えている女性に惹かれてしまう傾向が強かった。だからミヒャエルはハンナの仕草や表情や部屋の生活臭などから滲み出るものを感じてしまったように思える。それに思春期の強い性衝動が加わってしまうと強烈だ。
 高校の可愛いクラスメイトがモーションかけても、可愛いけれども妹のように予測できて夢中になるほど魅力を感じない、そのように見える。
 
 ミヒャエルとハンナの関係はひと夏で途切れる。ハンナにとって鬼門を脅かされる事態が起こり、ミヒャエルに別れを言わずに去ってしまったからだ。ところが8年後にミヒャエルは偶然にもハンナを目撃してしまう。ゼミの一環に戦犯法廷(余談2)を傍聴した時、裁判長が聞き慣れた女性の名あげる。証言台に立つハンナのあの時と変わらない首筋。激しい動悸に襲われているだろうミヒャエルの視線や表情が良かった。
 
 法廷で彼女を救えるのは、彼女の鬼門を知っているミヒャエルだけ。鬼門を証言すれば彼女の減刑は間違いない。15歳の時なら迷わず証言しただろうが、20歳を過ぎたミヒャエルにはそれができない。証言する事で彼女が守ってきた自尊心を潰してしまう事に悩み、自分の保身もおそらく考えただろう。この微妙な葛藤が切ない。(余談3)
 
 無期懲役となったハンナは10年ほど虚しい囚人生活をおくるが、ある日カセットテープが贈られ、再生するとかつての激しい高ぶりが甦り驚く。テープにはミヒャエルの朗読が録音されていた。テープを介してではあるが再び愛し合っていた頃の関係が再開される。生きる喜びを取り戻した老ハンナの表情が美しい。もっとも、カセットを贈るようになったのは、ミヒャエルが離婚して独暮しを始めるようになってからだが。

 20年で刑期を終えミヒャエルが身元引受人になる。ハンナにとっては30年ぶりの再会。もしミヒャエルが大戦中の過去ではなく、愛し合っていた頃の過去だけを話していたら、ラストは変わっただろうか?
 
(余談1)脇役の中にはドイツ語イントネーションの英語になっていた人もいた。
 
 アレクサンドラ・マリア・ララ氏はトム・クルーズ氏の「ワルキューレ」からオファーされたらしいが、あっさり断ったらしい。「ワルキューレ」よりは本作の方が印象に残るだろう。

(余談2)日本では「戦犯容疑者」の公職追放はほどなく緩和され岸信介が首相になるほどだが、ドイツでは時効なしで追及される。特にSS(親衛隊)は地の果てまで追い詰められるといった感じだ。
 SS幹部の中には、バチカンの高官による手引きで南米に逃れた者もいて、ゆえにイスラエルとバチカンはその事でも対立している。
 
(余談3)私が学生の頃、ある女性が深刻な事態に直面して相談を求めてきた。が、法的には簡単にケリがつく問題だったので、市役所の相談窓口や弁護士の連絡先を電話で教えただけに済ませた。
 実際に市役所が斡旋してくれた弁護士が間に入って解決したのだが、なぜ私は直接彼女のもとへ行って相談にのってやらなかったのか。どこかに巻添えになりたくない気持ちが出ていたのではないか、彼女に自分の保身を見透かされてはいなかったのか、そんな後悔がある。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(主演女優賞)(2009年) ゴールデン・グローブ(助演女優賞)(2008年)


 
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