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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

男優評 笑福亭鶴瓶 「ディア・ドクター」 (2009) 

ディア・ドクター
「俳優」らしくないリアルさ。

 
 東京映画記者会(デイリースポーツなど在京スポーツ7紙の映画担当記者で構成)で制定する「第52回ブルーリボン賞授賞式」が16日、東京・銀座ブロッサムで行われた。「ディア・ドクター」で主演男優賞に輝いた落語家・笑福亭鶴瓶(58)や、「おっぱいバレー」で主演女優賞を受賞した綾瀬はるか(24)らが出席。初主演作で栄冠をつかんだ鶴瓶は、「釣りバカ日誌」コンビ・三國連太郎(87)&西田敏行(62)からその演技を大絶賛され、“役者株”をさらに上げた。(デイリースポーツ)


 笑福亭鶴瓶氏、(余談1)そういえば意外にも本作が映画初主演だ。たしかに俳優歴も長いが、チョイ役・脇役・助演ばかり、彼の本職はあくまで落語で準本職はバラエティ司会者、俳優業は主役を張るほどに力を割けないといったところだったか。
 
 鶴瓶氏に限ったことではなく、関西出身の「俳優業」を本職としない芸能人は人物設定を「大阪出身」にしてもらい、台詞を言い易くしている。「俳優」としてアマチュアというよりも、本業が別にある芸人は「俳優」以外にも力を割かなければならない。本作でも重要な助演ポジションに出演している香川照之氏のように、変幻自在にその土地の人間になりきり方言を操るには役作りの手間がかかるのだろう。

 さて、初主演の役柄は無医村状態の村で医師を演じ続けるモグリ。医療関係の商品を販売する営業マンをやっていたので、そこそこの医学的知識はあり、得意先で医師の所作を見てきたから、そこそこ医者の振りをすることができる。至らない部分はベテラン看護師の「補助」と、自身が常に腰低く丁寧に気さくに振る舞い本物の医者以上に地域医療に尽くす事で診療所医師の地位を守ってきた。

 おそらく看護師も彼がモグリである事に、うすうすどころか完璧に気がついていただろうが、医師の不在は診療所閉鎖と失職につながるため疑惑を敢えて封印していた。また彼が常に生真面目に村人に尽くす医師を演じ続けている事に敬意すら抱く。
 負傷して気胸となった若者の呼吸困難を救ったとき、モグリ医師と本物ベテラン看護師の関係が雄弁に物語っている。看護師の的確な判断と機転と指示で処置したものなのに、村人からはモグリ医師の手柄となり名声はさらに高まる。たぶん、そんなシチュエーションはこれまでにも何度かあったはずだ。しかし彼は図に乗らず逃げ出さず、萎えかけた気力を奮い立たせ普段通り急患に応じる。そんな彼を安堵の笑顔で見る看護師。

 周囲の村人も無医村状態に陥るのが嫌なため、若干「?」と思うことがあっても、彼を医者として遇する。おそらく陰では看護師の活躍があったのだろう、難しい治療をクリアしたり、冒頭の喉を詰まらせた老人をたまたま蘇生に成功したり、そんな事が何度か重なって尊敬を集めるようになった。後に捜査に来た刑事が「皆であの男を本物に仕立て上げたんじゃないのか」と指摘したような状況になる。

 彼の下で研修医となった若者に至っては、刑事の事情聴取では「おかしいと思った」「目を光らせていた」「機能しているものを(よそ者)が裁く義務は無い」と言っていたが、「今にしてみれば」というべきところを「最初から判っていた」という輩と同じで、実際は疑うことなく彼独特の医療スタイルとして敬意を持っていた。そして事件後に東京の病院に戻った若者は彼の患者に対する対話スタイルを取り入れている。

 地の言葉で台詞を言っても構わないというハンデをもらいながらも、本物以上の本物を演じる偽者を演じる微妙な演技を実に自然に行っている。もちろん、落語も演じる芸であるのでけっして俳優は素人という訳ではなく芸歴はベテランであるのだが、彼の演技は俳優らしくないリアリティを出している。香川照之氏の演技が典型的だが、俳優は自然体で演じているようで独特の発声やデフォルメがあるのだが、鶴瓶氏には無い。この微妙な表情はどこから出るのだろうか? 落語家でありながらプロ俳優を差し置いて主演俳優というのも役作りに関係あるのか?

(余談1)笑福亭鶴瓶氏を間近で見た事がある。私がまだ学生だった頃だった。大学から家に帰る途中、近鉄阿倍野駅のホームで大股開いて座っている刈上げ頭のトレーナーにジーンズ姿の鶴瓶氏を見かけた。
 当時は腰まで伸ばしていた髪をバッサリ切って刈上げ頭にした頃だったように思う。なんだか大学の六回生・七回生にいそうな雰囲気だった。近くにマネージャーがいたかもしれないが、独りで電車待ちをしているところ声をかけてきた中年のオッサンと気さくに笑顔で話をしていた。

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[ 2010/02/18 04:06 ] 映画・・男優評 | TB(0) | CM(0)
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