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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「富士山頂」 人生をふり返ろう〔8〕 

富士山頂」 青春の戦後復興



【公開年】1970年  【制作国】日本国  【時間】109分  【監督】村野鐵太郎
【制作】石原裕次郎 二橋進悟 久保圭之介
【協力】三菱電機株式会社 三菱重工株式会社 大成建設株式会社 朝日ヘリコプター株式会社 気象庁
【原作】新田次郎
【音楽】黛敏郎
【脚本】国弘威雄
【言語】日本語
【出演】石原裕次郎(梅原悟郎)  山崎努(伊石昇)  渡哲也(加田雄平)  芦田伸介(葛木章一)  佐藤允(辰吉)  中谷一郎(岡田)  本郷淳(川西)  市原悦子(茂子)  星由里子(美津子)  宇野重吉(村岡)  山内明(中林)  東野英治郎(加納)  金井進二(寺崎)  古谷一行(荒木)  露口茂(富沢)  清水将夫(伊佐山)  神山繁(主計官)  信欽三(初老の男)  玉川伊佐男(植松)  加藤武(山中)  小瀬格(大田)  田中邦衛(馬方)  武藤章生(管野)  浜田光夫(測候所員)  勝新太郎(朝吉)

【成分】勇敢 知的 かっこいい 山岳 

【特徴】元気象庁職員だった新田次郎氏が原作者。新田氏自身が富士山頂に測候所建設計画にかかわり、原作はその体験がベースになっている。それを石原プロモーションが実写映画化。

 原作は執筆者自身の体験を元にしているため主人公は気象庁の担当職員だが、映画化には工事にかかわった三菱電機の全面協力があったため主人公は三菱電機の若い技術者に変更され制作者である石原裕次郎氏自ら扮している。また原作では工事にかかわった社名は伏せられていたが、映画化では実名登場。

 主演の石原裕次郎氏をはじめ当時の第一線で活躍するベテランから若手までの俳優が総出演の感があるボリューム、実際に富士山高所をロケ地にするなど、日本が高度経済成長に邁進する力強い内容だ。

【効能】日本が未来への希望に満ち溢れた時期が描写しているため元気をもらえる。日本人技術者の逞しさに奮起する。

【副作用】官僚と企業との共同事業成功の映画化のため、国策映画ぽくて不快感。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
2009年7月4日地上波初放送?

 石原裕次郎二十三回忌特別企画として、「幻の名作」と言われている「富士山頂」が7月4日21時からTV朝日系で初放送された。
 地上波初?あれ? ヘリコプター操縦士役の渡哲也氏とワイシャツ・ネクタイ姿の石原裕次郎氏が並んで話をしている場面が作中であるのだが、これは憶えている。小学生時代に観たおぼえがある。いったい、どこで観たのだろうか?TVで観たはずだが。何かの特集番組で一場面を抜粋紹介したのを憶えていたのだろうか?

 当時の石原裕次郎氏は、20代のやんちゃな兄ちゃんという役どころを卒業して、画期的な偉業を執念で成し遂げ戦後復興や高度経済成長を象徴した日本人たちを好んで演じていたように思う。「太平洋ひとりぼっち」の堀江謙一氏、「黒部の太陽」の下請け会社の棟梁、本作では三菱電機の技術者。(余談1)

 雄大な富士山の赤茶けた溶岩台地を走るブルドーザーや、建設資材を運ぶヘリコプターなど、けっこう凄い映像がある。富士山はいわゆる砂山といってもよい登り易い山だが、ロケーションとなると辛いだろう。
 物語の展開自体はドキュメント風に地味で淡々としていて、今回のTV放送までは映画史の土砂に埋没して殆ど忘れ去られていた感があったが、裕次郎氏ら制作陣の気合の入れようはかなりのもののようだ。
 山崎努氏、市原悦子氏、星由里子氏、古谷一行氏、露口茂氏、田中邦衛氏ら今や老境のベテラン俳優が、20代30代の働き盛りの若々しさで勢揃い、勝新まで登場している。これはけっこう貴重映像だ。

 私が一番好きな映像は、広大な溶岩石の高原をバックにした工事風景と、工事完成直後に来襲してきた台風に晒され、裕次郎がレーダー棟の鳥籠ドーム内部に入って損傷具合をチェックする場面だ。壁が風雨で軋みながらも耐えている様を拳を握りながら見入っている、技術者魂を感じさせる力強いシーンである。

(余談1)堀江謙一氏の小型ヨットによる無寄港太平洋横断は、「冒険」に理解のある欧米では絶賛された。
 黒部ダムは当時の日本の土木技術の総力をあげて造り上げた傑作である。原子力は無く火力発電も発展途上の時代では、ダムによる水力発電が日本の電力を支えた。
 富士山頂気象レーダーも、気象観測衛星が無かった時代で800キロ四方を観測できる事は画期的である。たしかアメリカの学会からも高く評価されている。

 ところで、富士山レーダーの工事発注は三菱電機と大成建設の2社に行った訳だが、現代の感覚では官製談合を真っ先に疑われる。作中では政財官のドロドロ光景は敢えて描写しなかったようだが。
 善い悪いは別にして、経理の透明性や事業の公平性に問題があっても勢いで成功させて結果オーライの空気が当時の日本にはあった。

 原作の新田次郎氏は「八甲田山死の彷徨」「劔岳 点の記」など山岳小説で有名だが、本作の場合は単なる山岳小説ではなく自伝的要素がある。というのも、ファンなら御存知のように富士山レーダー設置の責任者だからだ。
 気象庁の前身である中央気象台に入庁、戦前の富士山測候所で勤務していたから、彼にとっては大きな意味がある。「富士山頂」当時の新田次郎氏は既に作家デビューしていたが、現役の気象庁幹部職員であり気象観測技術の第一人者だった。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 良作





 
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