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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「MW-ムウ-」 ストレス解消活劇〔73〕 

MW-ムウ-」 悪役挑戦、玉木宏
 


【公開年】2009年  【制作国】日本国  【時間】130分  【監督】岩本仁志
【原作】手塚治虫
【音楽】池頼広
【脚本】大石哲也 木村春夫
【言語】日本語
【出演】玉木宏(結城美智雄)  山田孝之(賀来裕太郎)  山本裕典(溝畑)  山下リオ(美香)  風間トオル(三田)  デヴィッド・スターズィック(-)  鶴見辰吾(松尾)  林泰文(橘誠司)  中村育二(岡崎俊一)  半海一晃(山下孝志)  品川徹(望月靖男)  石田ゆり子(牧野京子)  石橋凌(沢木和之)
        
【成分】パニック 不気味 知的 反社会性 
   
【特徴】手塚治虫生誕80年を記念して制作された作品、玉木宏氏が初の本格悪役に挑戦していることでも話題になった。
 しかし原作の生臭さは相当に割愛されていてスマートな作品に仕上がっており、手塚ファンからは少なからずブーイングが発生している。
  
【効能】玉木宏氏の悪役ぶりにストレス解消。
 
【副作用】原作の根幹を描いていないので、看板に偽り有りに見えて不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
反体制を知らない者に「MW」は描けない。

 他の作品レビューで何度か述べているように、原作と映画・原版とリメイクは別物であり、観る側は割り切って作品を楽しむべきだと考えている。これまでのレビューを御覧いただければ、私が映画化あるいはリメイクにあたっての改編を如何に肯定的に捉えてきたか理解できよう。最近では「デス・レース」「ヤッターマン」「釣りキチ三平」、「DRAGONBALL EVOLUTION」でさえも肯定的要素を認め続けた。しかし、それも限度がある。 

 宣伝文言が醜い。「手塚治虫生誕80年」「過激な内容から禁断の問題作と呼ばれてきた」、「映像化不可能と言われた『MW-ムウ-』がついに映画化」とあった。なるほど。(余談1)
 だけど、仮に「ゾンビ」から人肉を喰らう屍が登場しないリメイクを創ったとしたら、それはリメイクと呼べるだろうか? 別に凝った腐乱メイクではなく単に顔を青く塗り、生きている人間に噛み付く動作をするだけでもゾンビ映画になるが、ゾンビが出てこないゾンビ映画は有り得ない。
 小学生でも観れる「エマニエル夫人」のリメイクを創ったとしても、奔放な性の遍歴を描けていなかったら、単なるラブコメであって、もはやエマニエル・アルサン氏原作の映画ではない。その逆の過激ポルノであっても男性目線にまかせて泥臭いポルノにしては単なる便乗企画に過ぎない。

 作品の根幹を描かず、映像化が難しい部分を最初から割愛していたら、「MW」と「手塚治虫原作」の名義を借りているだけで、「ついに映画化」など詐欺に近い誇大広告だ。
 
 キャスティングから、ある程度の内容は予測できた。まず、玉木宏氏が結城に扮している事で原作の生臭さは一掃されるだろうし、実際にスマートな悪党ぶりだった。原作は中学生の頃に読んだキリなのでだいぶ忘れているが、たしか結城はキュートで妖艶な美青年で両刀遣い(バイセクシャル)だったように記憶している。少年時代は美少年だったので賀来少年にレイプされた。そういった男同士の愛憎は映画では割愛されているし、このキャスティングでは絵にならない。青年時代のピーターが主演していたら、期待しただろうが。

 なぜ「MW」が禁断の問題作だったのか、それは反社会性であるとともに反体制だからだ。そして漫画界の超メジャーであった手塚治虫氏が当時の少年青年漫画では異例の内容を描いたから「禁断の問題作」とされたのだ。映画では「反社会性」は描けても「反体制」は描いていない。制作陣には「反権力」「反国家」「反体制」というものが理解できていないだろうし、理解できてもスポンサーが左翼過激派やアナーキストを喜ばすような映画を断固として許さないだろう。アイドル路線のスマートで売れる映画の枠からはみだす事はさせない。

 良かった点を強いていえば、玉木宏氏にとっては初の本格悪役で、ファンにとっては面白いだろうと思う。
 制作陣に言いたいのは、無理に「MW」の映画化に挑戦しなくても、他にも手塚作品がたくさんあるだろうに。
  
(余談1)手塚治虫氏はメジャーでTV出演にも好んで応じるミーハーな性格だが、生々しくて毒気のあるダークな作品も数多く発表している。
 私が映画化してほしい手塚作品は「シュマリ」だ。初めて読んだ小学生時代は、ヒロインが一人でシュマリの子供を出産する場面に妙な興奮を覚えた。アメリカ人が「開拓」という西部侵略と先住民虐殺を行ったと同じように、日本人もアイヌモシリ(北海道)を侵略した歴史の側面をこの作品で知った。
 この「シュマリ」も現代の日本映画界では扱えないだろう。「ダンス・ウィズ・ウルヴス」を産んだアメリカならできるかもしれないが。
 
 「ブラック・ジャック」のエピソードで、アフリカの奥地で身体が縮む奇病が蔓延する村があった。これは2時間枠の映画にしたら海外でもウケる感動的な作品になると思う。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆ 駄作
  


 
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こんにちは!
若い頃のピーターには笑ってしまいましたが、確かに。
私は原作漫画と映画とほぼ同時に読んだのですが、映画では、やっぱりバイセクシャルの部分を削ってしまったのは致命傷だったな・・と思いました。
ところで、こちらで「シュマリ」の事を聞いて、興味が沸きました。是非読んでみたいと思います。

PSイルカの映画の事書いていらっしゃいますね。私も同感です。
[ 2010/03/09 08:52 ] [ 編集 ]
latifa氏へ
 
 「シュマリ」はお薦めです。絶版になっていなければ、小学館から文庫で出ていると思います。

> PSイルカの映画の事書いていらっしゃいますね。私も同感です。
 
 「ドキュメント」ではありませんね、あの映画は。制作者側の主観に任せた絵を並べているだけではジャーナリズムではない。彼ら彼女たちが猟師たちとイルカ肉を食べながら取材するのであれば、まだ話はわかりますが。
 
 メンバーの女性が涙を流している場面がTVで紹介されているが、少なくとも太地町民の水銀汚染による健康被害を心配してないている訳ではない。エセエコロジストです。
[ 2010/03/10 02:52 ] [ 編集 ]
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