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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ザ・コーヴ」(2) 近頃の現象[三百六十六] 

ザ・コーヴ」は
太地町民への名誉毀損の疑いあり


 ルイ・シホヨス監督はナショナル・ジオグラフィックの元写真家。映画は、1960年代の人気テレビドラマ「わんぱくフリッパー」で活躍し、イルカ保護活動家となったリチャード・オバリー氏が、和歌山県太地町のイルカの追い込み漁に潜入し録画。入り江に追い込んだイルカの群れが漁師たちに殺され、海面が血で染まる様子を映像化し、イルカ漁の残酷さを表現している。 
 この映画がアカデミー賞を受賞したことについて、太地町の三軒一高町長は「科学的な根拠がない虚偽の事実が伝えられたことを遺憾に思う。漁は和歌山県の許可を得て行っている。その国の習慣や実情に基づく長年の伝統や文化を重んじ、お互いに尊重することが大切だ」と述べている。
 このニュースは海外でも報じられており、米ABCニュースは「『ザ・コーヴ』は話題になった映画だが、憂慮すべきテーマのため、興行的に見ると米国の人々には不人気だった」と伝えている。
 また米エンターテインメント紙「ハリウッド・リポーター」は「映画は世界に影響を与えることができる。『ザ・コーヴ』は人々の意識を変える武器だ」という同監督のメッセージを伝えた。(サーチナ)

 
【雑感】映画の内容が明らかになるにつれ、私は制作者たちへの怒りがこみ上げてきた。映画の友人が内容を精細に伝えてきた。
 
 前にも言ったが、和歌山県南部の人間にとってイルカ肉は昔からありふれた食材であり、近所の魚屋で並べられているものである。私自身が少年時代を太地町と文化的によく似ている和歌山県新宮市で過ごしていたのでよく判る。
 
 ところが、映画ではまるで太地町民がイルカの密漁でもしているかのように編集・演出されており、ナレーションも「この小さな町には重大な秘密がある」などと誤解を煽っている。
 何度も言うが、イルカ漁は昔から行われてきており、イルカ肉は魚屋で売られている平凡な食材だ。秘密でもなんでもない。制作者たちが主観にまかせて勝手に「秘密」であるとでっち上げているだけだ。
 
 また町民たちは撮影クルーたちに「イルカ漁に反対しにきたのか」との質問に対し「違うよ」と答える。秘密にしているのは町民ではなく制作クルーの側だ。
 そしてイルカ漁の場面では、まるでスパイ映画のようなBGMが流れ、まるで太地町民を悪の秘密結社のように演出されていたそうだ。これではヤコペッティよりヒドイ手法ではないか。
 
 またイルカ肉の水銀含有率を引き合いに出して日本人の健康被害を警告しているが、イルカ漁を見て涙を流す白人女性クルーは「水銀汚染に晒されている太地町民」のために泣いてはいない事は明白だ。そもそも太地町民の健康を気遣ってのエコロジー映画なら、太地町民の名誉を著しく毀損する挙には出ない。人の命よりもイルカが大事なのだろう。
 
 欧米人の偽善、単なる偽善に留まっていれば良いのだが、過去の歴史を見れば判るように、その偽善が大量虐殺を生んでいる。
 なぜイルカの命が大事なのか? 昔からグリーンピースなどもイルカ問題を取り上げていたが、必ず出る理由に「イルカは賢いから」がある。では、牛や豚は馬鹿だから殺しても良いという事になる。そもそも、平然とアメリカ先住民を虐殺し土地を奪うことができたのも、つい最近までハリウッド映画ではアメリカ先住民を野蛮で好戦的な悪人として良心の呵責なく描くことができたのも「未開」で「異教徒」だったからだ。
 
 「映画は世界に影響を与えることができる。『ザ・コーヴ』は人々の意識を変える武器だ」という監督のコメント、たしかに映画はそんな性質を持っているから政治工作によく使われてきた。しかし、それ以上に身の毛がよだつ悪寒を感じる。
 同じように欧米人は聖書を人々の意識を変える武器にして名実ともに世界侵略を行ってきた歴史があるからだ。おかげで南米の民族文化は壊滅的打撃を受けた。
 
 異教徒を躊躇なく殺す、あるいは殺すまではいかなくても民族の文化を否定してしまう。初詣客に向かって偶像崇拝を悪いことだと決め付けキリストへの帰依を勧めるキリスト教徒たち。
 ローマ帝国がまだキリスト教に支配される前の時代のローマ皇帝マルクス・アウレリウスは、キリスト教徒たちを「頑なな人たち」と評した。私は欧米人のもともとの気質よりもキリスト教の性質が影響していると考えている。
 
 いずれにせよ、「ザ・コーヴ」は映画としては面白いかもしれないが、太地町の名誉を著しく傷つけている。ドキュメント作品として当然一方の当事者の反論をいれなければならないが、それもない。ジャーナリズムとして致命的な手抜きだ。そして世界で最も有名な映画賞の「ドキュメント部門」で賞を獲得したため、頑なで狡猾な制作者たちの独りよがりな主観にまかせた映像が、「事実」として全世界へ流布されていくことになる。
 
 太地町民は日本上映にあたっては顔にモザイク処理を施し、反論字幕を掲載するよう要求しているようだが、手ぬるい。内容を十分精査し、可能であれば名誉毀損で訴え、大々的に反論を展開するべきだろう。
 漁協を「ジャパニーズマフィア」と呼び、「漁協は隠蔽(いんぺい)するためにイルカの肉を鯨肉として販売している」など事実に反するものがある以上、十分名誉毀損で訴えることができると思うが。

 アカデミー賞をとってしまった以上、太地町も泣き寝入りをしては、さらに彼ら彼女たちは攻勢を強める。闘うべきだ。
 

 
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[ 2010/03/10 06:08 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(8)
それっぽくメッセージ性の強い作品に仕上げるために
大袈裟な編集をしてますよね。
そんな作品を世界的権威の
アカデミー賞が認めたことが悲しいです。

そもそも
文化もまるで違う他国のドキュメンタリー(海洋問題とか銘打ってるようですけど)を撮ること自体難しいことだと思いますよ。

とにもかくにも一度観てみたい気にはなりますが、
今回の受賞は残念の一言に尽きます。
世界の目の敵にされうる現地の方々が不憫です。

ただ、日本人の立場からみても
これまでイルカ漁に馴染みがなかったので
少しショッキングな映像はありました。


[ 2010/03/10 15:58 ] [ 編集 ]
PORUNGA氏へ

> それっぽくメッセージ性の強い作品に仕上げるために
> 大袈裟な編集をしてますよね。
> そんな作品を世界的権威の
> アカデミー賞が認めたことが悲しいです。
 
 マイケル・ムーア監督とて、ブッシュを可能な限り馬鹿に見えるよう演出しています。ドキュメント映画というのは、事実を編集技術によって如何に面白く魅せられるかが勝負です。
 ただ、「入り江」の場合は「嘘」がある。これは誇張とか誤解を煽るレベルではない。でっちあげだ。

> そもそも
> 文化もまるで違う他国のドキュメンタリー(海洋問題とか銘打ってるようですけど)を撮ること自体難しいことだと思いますよ。

 エセドキュメント風映画「食人族」でさえも、良心的な文化人類学者は食人族の村を訪問する際は信頼を得るために村人が差し出した血が滴る生肉を食べた。
 「入り江」の監督たちも太地町の信頼を得るために一緒にイルカ肉を食べたらどうなんだ。文化を理解するには、まず言語、言語が無理なら食べ物です。日本食を美味しそうに食べる外人に悪いイメージは置きにくい。刺身や納豆を嫌々ながらもトライして食べる姿には、むしろ好感を抱くものです。
 彼らは「理解したい」と言いながら太地町を訪れて、理解するうえでの初歩の初歩・基礎の基礎をやっていない。太地町への悪意は明白です。

> とにもかくにも一度観てみたい気にはなりますが、
> 今回の受賞は残念の一言に尽きます。
> 世界の目の敵にされうる現地の方々が不憫です。
 
 興行的に振るわなければ良いが。太地町は闘うべきです。

> ただ、日本人の立場からみても
> これまでイルカ漁に馴染みがなかったので
> 少しショッキングな映像はありました。
 
 私は元々地元民でしたから。そういえば、むかし手塚治虫氏の漫画「ブラック・ジャック」で、漂流中の船にいたギャングの1人がイルカをライフルで撃って食べようとすると、仲間から「イルカの肉なんて食えるのか? 食あたりになるぞ」と注意され思い留まる場面がありました。それをみて私は「ええっ! イルカの肉うまいのに、なんで! 手塚はアホか」と思ったものです。
 鯨肉と殆ど味は同じです。
 
 ショッキングといえば、イタリア映画の「木靴」でしたか、豚を生きたまま腹を割いて内臓を取り出し、肉にしたりソーセージを作ったりする場面があったように思います。私はそちらの方がショッキングですね。欧米人こそ、動物を殺して解体して肉にするのに慣れているではありませんか。「入り江」の方々はカマトトぶっている。
[ 2010/03/12 02:37 ] [ 編集 ]
海外でやってるからところがあるから和歌山もやっていいという理屈にはならない。
極狭い範囲の視野しかない土着の発想。話のすり替え。

昔から鯨を食べる習慣は日本全国にある。
動物性栄養源を漁業に依存してた島国日本は、鯨(特に大型)を貴重な資源として活用し、文化にも取り入れてきた。
更につい数10年前迄、欧米諸国でも捕鯨をしていた国も多々あるので、一部の異常なバッシングに対し十分釈明の余地はある。
実際知り合いのアメリカ人の殆どは、捕鯨は(規定付きで)仕方ないと納得している。

が、イルカを食べる習慣は和歌山の極限られたエリアのみで、普通の日本人には考えられない。
イルカを食べないと餓死する訳でもあるまいし、唯土着の原始的な習慣というだけで意地を張って継続し日本人全体から白目で見られる原始的な行為は廃止せよ。

古今東西捕鯨の習慣は世界各国にあったが、犬猫を食べる習慣が極レアなように、イルカを食べる習慣も極レアである。その為に普通の日本人まで誤解されかねない。

美しい人ものや可愛いものが世界中で持て囃されるように、自然界には違いの基準というのが渾然と存在する。 それを道理という。 イルカを食べるのは犬猫を食べるようなもの。
自然界の道理に反した原始的な習慣「イルカ漁」は、即廃止すべきでしょう。

イルカを食っていけないのは理屈抜きで一般常識の話。
日本人には、大型のヒゲ鯨を食べることに抵抗ない人はまだまだ多いがイルカとなると「ゲッ、イルカ!?」と、拒絶反応する人が殆ど。

それは昔から、一般日本人にイルカを食べるという感覚がないから。
一般日本人にとってイルカは、意思疎通ができる海のイヌや猫みたいな存在。
アンケート調査でもそういう答えが出てる。

一般日本人はイルカは食べないのが現実。
[ 2010/03/12 04:34 ] [ 編集 ]
豊中市民氏へ

> 海外でやってるからところがあるから和歌山もやっていいという理屈にはならない。
> 極狭い範囲の視野しかない土着の発想。話のすり替え。
 
 太地町民がそんな反論をされているという事でしょうか? 反論の趣旨はむしろ「伝統文化」であって、「海外でやってるからところがあるから和歌山もやっていいという理屈」はあまり強調されていないように私は聞いております。 

> が、イルカを食べる習慣は和歌山の極限られたエリアのみで、普通の日本人には考えられない。
 
 仰るとおり、イルカ肉を食べる習慣は、現在では南紀地方に限られています。

> イルカを食べないと餓死する訳でもあるまいし、唯土着の原始的な習慣というだけで意地を張って継続し日本人全体から白目で見られる原始的な行為は廃止せよ。
 
 「原始的」とはたぶんに主観にまかせたマイナス表現ですね。

> 古今東西捕鯨の習慣は世界各国にあったが、犬猫を食べる習慣が極レアなように、イルカを食べる習慣も極レアである。その為に普通の日本人まで誤解されかねない。
 
 韓国・中国では犬や猫を調理して食べる地域がありますが、今ではレアです。広東地方では食用猫が売られていますが、北京市民はそんな習慣はありませんし顔をしかめます。しかしだからといって廃止や禁止はしません。

> 美しい人ものや可愛いものが世界中で持て囃されるように、自然界には違いの基準というのが渾然と存在する。 それを道理という。 イルカを食べるのは犬猫を食べるようなもの。
> 自然界の道理に反した原始的な習慣「イルカ漁」は、即廃止すべきでしょう。
 
 御自分の主観と自然界の道理を混同されていますね。
 
 結局のところ豊中市民氏のお考えは、マジョリティ(多数派)によるマイノリティ(少数派)の否定でしかありません。
 私はそのお考えには賛同できませんし、断固反対します。
[ 2010/03/12 07:43 ] [ 編集 ]
こんにちは、はじめまして。
豊中市民さんのコメントはあんまり深く考えない方がいいですよ。この方は、イルカ漁を肯定するブログなどに、すべて同じ文面のコメントを入れています。
ちなみに、私のブログにも来ましたし2ちゃんねるにも書いています。

それと、イルカ肉は東海地方の東部では普通の食材としてスーパーで売られていますよ。しかも「生肉」で。(笑)
[ 2010/03/15 05:25 ] [ 編集 ]
Bちゃん氏へ
 
 貴重な情報ありがとう。

> 豊中市民さんのコメントはあんまり深く考えない方がいいですよ。この方は、イルカ漁を肯定するブログなどに、すべて同じ文面のコメントを入れています。
 
 同じ文面? 安上がりな事しよって。私としたことが、まともに応対してしまった。

> ちなみに、私のブログにも来ましたし2ちゃんねるにも書いています。
>
> それと、イルカ肉は東海地方の東部では普通の食材としてスーパーで売られていますよ。しかも「生肉」で。(笑)
 
 それは嬉しい情報です。南紀しか見た事がなくて。

 若い頃に東海地方をチャリンコで旅行したことがありますが、資金難で毎日飯盒飯と鰯の缶詰とインスタントラーメンばかりでした。銭の節約でスーパーなどには寄ったことがなく、ひたすら走るだけでした。金銭だけでなく精神的にも豊かな旅行とはいえない有様、これは不明でした。
[ 2010/03/15 08:05 ] [ 編集 ]
こんにちは、はじめまして。

山形のスーパーでも塩漬けの物を売ってますよ。
「イルカ汁」は割とスタンダードな食べ物ですね。
身じゃなくて皮と油のぶぶんです。

[ 2010/05/07 14:15 ] [ 編集 ]
大きな猫氏へ
 
 おお、山形にも売っていますか。素晴らしい、百万の味方を得た気持ちです。

> こんにちは、はじめまして。
>
> 山形のスーパーでも塩漬けの物を売ってますよ。
> 「イルカ汁」は割とスタンダードな食べ物ですね。
> 身じゃなくて皮と油のぶぶんです。
[ 2010/05/11 23:09 ] [ 編集 ]
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