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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「カムイ外伝」 孤独を楽しむ時に 

カムイ外伝」 
大後寿々花が光っている。

 

 
【原題】
【公開年】2009年  【制作国】日本  【時間】120分  【監督】崔洋一
【原作】白土三平
【音楽】岩代太郎
【脚本】宮藤官九郎 崔洋一
【出演】松山ケンイチカムイ)  小雪(スガル(お鹿))  伊藤英明(不動)  大後寿々花(サヤカ)  イーキン・チェン(大頭)  金井勇太(吉人)  芦名星(ミクモ)  土屋アンナ(アユ)  イ・ハソン(カムイ(少年時代))  山本浩司(-)  PANTA(絵師)  佐藤浩市(水谷軍兵衛)  小林薫(半兵衛)
        
【成分】悲しい パニック 勇敢 知的 絶望的 かっこいい 忍者 17世紀 
   
【特徴】
  
【効能】
 
【副作用】
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
カムイ伝」と「カムイ外伝」の狭間。
 
 この秋(2009年)は新作時代劇が次々と発表される。私はこの「カムイ外伝」を本命時代劇と位置づけ、「BALLAD」や「TAJOMARU」は駄作覚悟で観に行った。予想に反して「BALLAD」は佳作だったし、アイドルアクション劇と思っていた「TAJOMARU」も堅実な時代劇になっていた。これら2作は特に期待していなかったので逆に新鮮に感じたが、本作「カムイ外伝」は期待が大き過ぎたためか首を傾げる場面が目に付いてしまった。
 
 原作の「カムイ伝」は階級闘争を描いた極めて左翼的反体制的漫画だった。主人公カムイは、最終的にアイヌ民族が和人に対し蜂起するシャクシャイン戦争にアイヌ側に加担して闘う。カムイは17世紀初頭の架空の小藩を舞台にした階級闘争というだけでなく、現代の体制権力にも矛先を向けた大河ドラマである。(余談1)
 
 崔洋一監督の性格から「カムイ伝」を描きたかったはずだが、これはあまりに長大な大河ドラマ過ぎて映画向きではない。やむなくエンタメ性のある「カムイ外伝」の映画化とし、スパイス程度に「カムイ伝」の雰囲気を入れようとした。それは理解できる。
 
 イメージは期待通りだった。私は子供の頃から歌舞伎由来の長い揉み上げがあるカツラと小奇麗な晴着を着た生活感の無い時代劇が嫌いだった。本作では白土三平氏が描く17世紀日本の風俗がリアルに再現されていた。自毛を活かしたカツラメイク、小汚くて露出度の多い庶民の服、汗と体臭が漂う空気感は見事だった。
 
 カムイ役は、私は山本耕史氏が原作のイメージに近いと思っていたが、松山ケンイチ氏でも別に違和感は無かった。小雪氏のアクションも板について良くなっている。特にカムイに恋をする漁村の乙女サヤカを演じる大後寿々花氏は素晴らしい。陽に焼け気が強く生活臭のある少女を熱演した。それ以前に彼女は和服の方が良く似合う。
 まずい演技をする子役もいなかった。変にワザとらしい現代的ヒューマニズムを口にする場面も無かった。宮藤官九郎氏は一応原作イメージを壊さないよう努力したあとは判る。
 
 ただ、「カムイ外伝」の魅せ場は格闘術なのだが、これが拙いと作品全体がヒドいように感じてしまう。同じ忍者モノで真田広之氏主演の「忍者武芸帖 百地三太夫」の方がリアルさと迫力のうえではるかに優れている。公開当時1980年、CGが無かった時代、JACの俳優やエキストラたちが実際に忍者の技を再現しているので見応えがある。
 ところが本作のCG合成とワイヤーアクションによる格闘場面はぎこちない。まだ、自らワイヤーアクション初心者であると認めていた韓国の「火山高」の方が綺麗に撮れていた。けが人続出という前評判に期待してしまったが、その割には完成度は高くなかった。ある程度はCGで絵が作れるし潤沢な資金と時間と労力をかけたとなれば、格闘場面を期待するのが人情だ。千葉真一氏や真田広之氏が創り出した絵以上のものを。
 
 ラストが気に入らない人も多いと思うが、「カムイ」はあれで良いと思う。カムイは紋次郎と同じくアウトローの中のアウトロー、アイヌ民族が蜂起したシャクシャイン戦争でカムイはアイヌ側に立つが、アイヌ勢は松前藩の戦略と鉄砲隊で鎮圧される。仲間や身内ができたと思ったら、また独りになる孤高の戦士がカムイだ。
 本作は、評判が良ければ続編をつくりやすいようにしているが、これは難しいのではないか。 

(余談1)時代劇の多くは漫画でも小説でも映画でもヒーローは刀をさした侍というのが大半を占める。一見すると下町のヒーロー遠山の金さんも、素顔は従五位下左衛門尉と大名なみの官位を持ち、幕府の評定に名を連ねる幕閣、自分の知行所へ行けば「殿様」と呼ばれるお偉がたである。下級官吏の近藤右門も住所不定無職の椿三十郎や拝一刀も、最下層の非人から見れば呑気な身分である。
 最下層の人間で超有名ヒーローになったのは、実写では「木枯し紋次郎」、漫画アニメでは「カムイ」ぐらいだ。奇しくもこの2人のヒーローは学生運動が盛んだった60年代後半から70年代前半にブレイクした。
 
 「カムイ伝」では忍者カムイだけが主人公ではない。最下層から本百姓の指導者に成り上がる正助と、次席家老の御曹司から落ちぶれる竜之進の3つの物語が絡み合っていた。そのため、カムイはときおり女形みたいな美少年侍に変装したりゾンビみたいな怪物になって暴れたりと、物語の裏方に回って暗躍する。
 そんなカムイ1人を主人公にしたのが「カムイ外伝」で、「カムイ伝」より物語はシンプルにヒーロー物に構成されている、ちょうどTVの「木枯し紋次郎」のように。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 
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私も先日カムイの映画版を見たばかりです。
木枯し紋次郎もカムイのアニメも子供の頃大好きでした。
そうか~、両方とも最下層のヒーローだったんですね。
色々お勉強になりました。
全くそういう事も解らず、ただ、小学生にとっては、クールで孤高で淋しげな感じがカッコイイ!!ってそれのみで惹かれてました。とはいえ、そういう感覚って大人になっても変わらない様で、今もセレブや特権階級の人より、そういう人のお話の方が好きです(^^ゞ

私も、大後寿々花ちゃんは、今後も期待大な女優さんだな、って思いました。楽しみです~
[ 2010/04/01 09:17 ] [ 編集 ]
latifa氏へ

> 小学生にとっては、クールで孤高で淋しげな感じがカッコイイ!!ってそれのみで惹かれてました。とはいえ、そういう感覚って大人になっても変わらない様で、今もセレブや特権階級の人より、そういう人のお話の方が好きです(^^ゞ
 
 まことに同感です。加齢とともに趣向の幅は広がっていきますが、基本は変わりませんね。


> 私も、大後寿々花ちゃんは、今後も期待大な女優さんだな、って思いました。楽しみです~

 「アイドル」にはならず、着実に俳優としてのキャリアを積み上げていってほしいと願っています。話題作だけでなく、演技力が要求されるマイナーな役柄にも挑戦してほしいですね。
[ 2010/04/02 09:25 ] [ 編集 ]
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