ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ザ・レイプ」 社会問題を考えたい時に〔22〕 

ザ・レイプ」 
田中裕子の体当たり問題作!

 
 
  
【英題】
【公開年】1982年  【制作国】日本国  【時間】100分  【監督】東陽一
【原作】落合恵子
【音楽】田中未知
【脚本】東陽一 篠崎好
【出演】田中裕子(矢萩路子)  風間杜夫(植田章吾)  伊藤敏八(谷口明)  津川雅彦(高木三郎)  後藤孝典(弁護人・黒瀬勇一郎)  長谷川初範(井上宏)  林美雄(秋山)
         
【成分】泣ける パニック 勇敢 知的 絶望的 社会派 フェミニズム 
     
【特徴】女性の社会的立場の弱さと男性優位の社会の理不尽さを描いた問題作。痴漢冤罪の被害を受ける男性が増加している現代では考えられない人権侵害と理不尽さが前面に強調され、タイトルからポルノ的表現を期待した男の子はガッカリさせられるかもしれない。
 田中裕子氏が体当たりの演技を魅せる。
   
【効能】女性の社会的不利な立場を理解するきっかけになる。
 
【副作用】全体に暗く救いようのないオチなので陰鬱な気分になる。
 ポルノを期待した人には延々続く裁判シーンに不快感。
 セックスについて過度に嫌悪と偏見を抱く恐れがある。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
フェミニズム的映画
 
 2009年9月4日、裁判員制度下での裁判で「画期的判決」が下された。1人暮らしの女性を狙った連続強盗強姦事件の被告人に懲役15年の判決だった。世間では裁判員制度で性犯罪を裁く事の難しさが議論されていたが、私は高校生時代に観た映画を思い出した。
 
 その映画は田中裕子氏主演「ザ・レイプ」である。当時、私も含めて高校生の男の子たちは映画の内容にがっかりしたものだ。殆どの男子は悲しいかな田中裕子氏の裸体とポルノ的表現を期待して観に行った。ところが作品の大部分は陰鬱でこ難しい裁判の場面ばかり。
 考えてみれば原作者は落合恵子氏である。世間では社会派・人権派・フェミニストと評価されている小説家だ。男の子が喜ぶようなポルノ小説を書くはずが無い。しかし、前宣伝などでは四肢を露にした田中裕子氏の水着写真などを使っていたし、簡潔明瞭なタイトルは「成人映画」しか想起できない、そんなスケベな青少年たちは騙されてしまった。(余談1)
 
 看板に偽りは無い。ヒロインは冒頭で顔見知りに空地へ連れ込まれてレイプされ、犯人を刑事告訴するも、保護されるべき被害者であるはずなのに今度は警察の取り調べで精神的にレイプされ、裁判では被告側弁護士によって傍聴席の恋人が見ている前で、法廷という衆人環視の公の場でも精神的レイプを受け精神的に丸裸に晒し者にされる。
 田中裕子氏の裸体目当てで観に行ったものの、この展開に憤りを抱き気分が悪くなってしまった。(余談2)どちらが被告なのか判らない扱い、とどめはラストの判決である。惨い法廷闘争の結果、恋人とも破局しプライバシーも晒され、多大な犠牲を払って勝訴したものの、懲役はたった4年である。「うわ、短かっ?」模範囚だったらもっと早い。あまりにも割が合わないし、下手をすれば犯人は出所後またお礼回りの報復レイプや恐喝に及ぶかもしれない。被害届出さないほうがマシではないか。やり得ではないか。
 
 あれから30年近くが経った2009年青森地裁裁判員裁判の報道をみると、隔世の感がある。被害者の氏名は伏せているし、被告人や傍聴席の人々と顔をあわせないよう別室で法廷に参加するビデオリンク方式がとられた。可能な限り被害者に心理的圧力を与えないよう配慮する努力がみられる。
 本作ではそんな配慮は全く無い。配慮の努力をはらうという発想自体が無い。警察の取り調べでは「なぜ、すぐ警察に行かなかったか?」「どうして、事件の後に恋人と愛しあったのか?」などと詰問される。裁判では被告側弁護士に「なぜ逃げようとしなかったのか」「あなたはその時、腰を動かしたのではないか」と名誉毀損ともとれる質問をする。さらにヒロインの過去の男女関係まで暴露だ。現代の感覚では明らかに人権侵害であり、パワハラであり、セクハラであり、同じ事を今の弁護士がやったら懲罰され民事で訴えられるだろう。
 
 2009年の判決は画期的で、殺人罪に匹敵する重い懲役15年だ。(余談3)被告側弁護士が主張したのは映画と同様の懲役5年だった。「ザ・レイプ」が示しているように、過去の判例がいかに軽すぎたか。また軽く見られていたかが判る。 
 
(余談1)反戦反核運動に熱心な社会科教諭が「ポルノ映画」の効用を力説していた。ポルノ映画の主人公にサクセスストーリーはない。社会の底辺で這うように生きる人々が主人公で、中盤に転機があってもラストは元のポジションに戻るか、より過酷な環境におかれる。極めて社会の現実を投影した内容だ、と。
 ポルノを大真面目に語っていた教師に私も含め生徒は漫談でも聞くかのように大笑いしたが、後にそれを心から納得するようになる。また、当時活躍していたポルノ映画監督の何人かは映画賞を総なめにするようなメジャー映画人へステップアップしている。
 
(余談2)私も後にある事で警察沙汰に巻き込まれた事がある。被害者の立場なのに取り調べはガラ悪く明らかに尋問だった。しかも同じ事を何度も根掘り葉掘り。警官は「人を見たら犯罪者と思え」とでも訓練されているのかな、と私は好意的に解釈して協力してやったが。
 この調子で性犯罪被害者もやられたら大変だな、と思う。おそらく本作のような事例で批判を受け、その反省なのか性犯罪被害者であると主張する人に気を遣うあまり訴えを鵜呑みにし、今度は痴漢冤罪が社会問題になっている。
 
(余談3)中国では強姦は公開で銃殺。今はどうなっているか知らないが。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
晴雨堂関連書籍案内
ザ・レイプ (講談社文庫) 落合恵子
 



 
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