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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「八甲田山」 自分に喝を入れたい時に〔4〕 

八甲田山」 遭難モノ映画の秀作
 

 
【公開年】1977年  【制作国】日本国  【時間】169分  【監督】森谷司郎
【原作】新田次郎
【音楽】芥川也寸志
【脚本】橋本忍
【言語】日本語 一部津軽方言
【出演】高倉健(徳島大尉)  北大路欣也(神田大尉)  加賀まりこ(徳島妙子)  栗原小巻(神田はつ子)  三國連太郎(山田少佐)  東野英心(伊東中尉)  島田正吾(友田少将)  大滝秀治(中林大佐)  加山雄三(倉田大尉)  小林桂樹(津村中佐)  森田健作(三上少尉)   下絛アトム(平山一等卒)   緒形拳(村山伍長)   秋吉久美子(滝口さわ)   菅井きん(斉藤の伯母)  浜村純(中里村の老人)  丹波哲郎(児島大佐)  藤岡琢也(門間少佐)
 
【成分】泣ける 悲しい パニック 恐怖 絶望的 切ない 雪山遭難 軍隊批判 組織批判 明治 20世紀初頭
 
【特徴】撮影スタッフならびにエキストラに敬意を表する。新田次郎の渾身ルポルタージュといっても良いくらいの小説を見事に映像化。雪山登山の恐ろしさをよく描写している。

 当時のオールスターキャストで描かれ、「天は我らを見放した」は流行語になった。
 
【効能】雪山の恐ろしさを学べる。組織の欠陥がリアル、企業家は参考になる。真夏日に観ると涼がとれる。
 
【副作用】寒々とした暗い気持ちになる。主人公の上官に激怒して気分が悪くなる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
日本型組織の欠陥を痛烈に批難。
  
 高倉健氏・北大路欣也氏らが主演の雪山遭難モノ。明治時代、東北の二つの連隊が競い合ってそれぞれ雪中行軍部隊を出し、高倉健氏と北大路欣也氏はそれぞれ行軍隊の指揮官を演じる。(余談1)
 今にして思えば、当時の主役級俳優や大物俳優・アイドル俳優が勢揃いである。これほどの出演者に加えて、兵士役のエキストラ、雪山で撮影するスタッフたち、よく撮ったものである。
 
 公開当時はアウトドアに関心を持ち始めた時期で、極地探検モノや登山モノの本をよく読んでいた。この映画の原作もその一つとして読んだ。
 新田次郎は「八甲田山死の彷徨」を書くにあたって膨大な資料や取材を元に書いた、小説というよりルポルタージュといってもよい名作である。映画化にあたって、どれだけ原作の世界をフィルムに収められるか心配された方も大勢いただろう。異論はあるかもしれないが、私は少しも原作を損なっていないと思う。(余談2)
 
 俳優たちの熱演も素晴らしかった。特にエキストラがよく動いている。本気で寒かったのか、わざわざ演技する必要が無かったのか、遭難の生々しさがよく出ていた。寒さで感覚神経に異常をきたし褌一丁になる兵士の描写が、当時の私には衝撃だった。
 
 雪山遭難だけでなく、組織運用の問題も大きなテーマである。これは、軍隊だけでなく一般の登山パーティーでも遭難が起こるたびに問われる。責任の所在が曖昧になったり指揮系統が乱れたり、あるいはリーダーが状況を理解していなかったり。登山でも山に無知なリーダーがパーティを率いる事が今でも多々ある。山に詳しい友人は「そんなリーダーに付いていく登山参加者は、原付免許しか持っていない人間が運転するバスに乗り込むようなものだ」と評す。
 
 高倉健氏扮する陸軍大尉は、武家の出という出自の良いエリート士官、豊富な山の知識と周到な準備を背景にして上官に自分の意見を通させ、現場の全権を掌握して必ず成功する体制で雪中行軍を成し遂げる。
 一方、北大路欣也氏扮する大尉は平民から苦学して将校になり、高圧的な上官に向かって意見を押し通せない。万全の体制で臨もうにも常に上官に気兼ねして捗らず、行軍の指揮権を得ても雪山に無知な上官が顧問のような形で参加され、しかも現場で指揮権を奪われる。結果は雪山史上の大惨事になる。

 この映画は時代を経ても色褪せない秀作である。しかも雪山や軍隊に限らず、他の仕事でも当てはまるテーマだ。 
 
(余談1)TVドラマも制作された。高倉健氏の役を中山仁氏、北大路欣也氏の役を村野武範氏が担当した。このドラマも原作や映画に比して遜色ない出来である。

 デビューして間もない大竹まこと氏が映画とTVドラマ双方に出演している。映画では神田隊の兵卒役で最初の遭難者を演じる。TVドラマでは徳島隊の見習将校に「出世」して、中山仁氏扮する徳島大尉から「へそ曲がりは気をつけろ」と野営地でのミーティングで注意されムッとなる場面がある。これはアドリブの可能性があるかもしれない。大竹まこと氏のへそ曲がり具合は有名。
 何かのトーク番組で、大竹氏と同世代の俳優たちが下積みを大竹らと同じバイト先などで過ごした思い出話を語っていた。「正社員にならないか、と言われて俳優の道のため辞めるのが○○君。上司とすぐ喧嘩して辞めるのが大竹君」と話していた。
 
(余談2)青森第五連隊本部で手配に追われる士官や下士官の描写があった。担当者のデスクごとに電話が置かれていた事に当時の私はびっくりした。自分の認識以上に明治時代は機械化が進んでいたのは新鮮だった。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
晴雨堂の関連書籍案内
八甲田山死の彷徨
八甲田山から還ってきた男―雪中行軍隊長・福島大尉の生涯
生存率5%の闘い―八甲田大量遭難の謎と真実


 

 
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八甲田山 これはホンモノではないのか。 もはや映画ではないみたいな。 ほんとに雪山で凍えながら撮影してるんじゃないんすかね、この映画。 演技じゃなくてほんとにやってどうするみたいな。 すげえきれいに撮れてるんだよなあ、雪山が。 撮影は木村大作でさすが..
[2009/04/27 19:55] カフェビショップ
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