「ラーメンガール」
ハリウッドがラーメンをとりあげた。 【原題】THE RAMEN GIRL
【公開年】2008年
【制作国】亜米利加
【時間】102分
【監督】ロバート・アラン・アッカーマン 【原作】 【音楽】カルロ・シリオット
【脚本】ベッカ・トポル
【言語】日本語 イングランド語
【出演】ブリタニー・マーフィ(アビー)
西田敏行(マエズミ) 余貴美子(レイコ) パク・ソヒ(トシ・イワモト) タミー・ブランチャード(グレッチェン) ガブリエル・マン(イーサン) ダニエル・エヴァンス(チャーリー) 岡本麗(ミドリ) 前田健(ハルミ) 石井トミコ(メグミ) 石橋蓮司(ウダガワ) 山崎努(ラーメンの達人)
【成分】笑える 楽しい 切ない かわいい 東京
【特徴】ハリウッドが制作した「日本映画」「美味しんぼ」か。注目若手女優の
ブリタニー・マーフィ氏とベテラン
西田敏行氏の共演が話題になった。殆どを日本人キャストと日本ロケで敢行。
【効能】ラーメンが食べたくなる。
【副作用】非日本的雰囲気が微かに感じられて違和感。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
ラーメン屋ブリタニー・マーフィ。 よくあるネタである。TVドラマ・小説・漫画、無数にある。本作とほぼ同時期に公開された映画にも同種展開の物語がある。在日華僑の中国料理店主役の藤竜也氏とその中国料理店に弟子入りする若い女性役の中谷美紀氏によるヒューマンドラマ「しあわせのかおり」だ。
この「
ラーメンガール」は「しあわせのかおり」とあまりにもシチュエーションが似すぎている。在日華僑の師匠と心に傷のある若い日本女性の弟子、日本人師匠と傷心のアメリカンギャル。ただ「しあわせのかおり」は三原光尋監督らしいノスタルジックなヒューマンドラマに仕立てていっているのに対し、本作のアッカーマン監督は日米文化摩擦と「美味しんぼ」のようなラーメン対決などを盛り込んで面白おかしくも織り込んでいるのが特徴かな。
無数に同種作品がある中で話題にそこそこなったのは、ハリウッドが日本のラーメンを題材にとったからである。典型的な白人ギャルが場末のラーメン屋に弟子入り志願、典型的な日本のラーメン屋の親父が師匠としてパワーハラスメント的指導を行う。
その白人ギャル役に若手有望女優の
ブリタニー・マーフィ氏、ラーメン屋の師匠に
西田敏行氏、これも公開前非常に話題になった。(余談1)
さて、本作の内容なのだが、要所要所はしっかりしていたと思っている。まずキャスティング、脇に余貴美子氏、石橋蓮司氏、山崎努氏を起用したのは大正解だ。もちろん日本人エージェントの助言があっての事だろうが、良き判断だった。
ラーメンの中身もよくできている。一口にラーメンといっても様々な種類がある。舞台となっているのは東京下町(余談2)の古き良き時代からある「中華そば屋」だから、もし博多ラーメンや流行の担担麺が出てきた時の激しい失望と怒りに備えて覚悟をしていた。嬉しい誤算で普通の中華そばだった。
日本人師匠とアメリカ人ギャル、当然の事ながら日米文化摩擦も物語の重要なテーマになるが、この描き方も巧くできていた。もっとも、ラーメン云々以上に日米摩擦のほうが作品の根幹なので制作陣は総力をあげてこの部分の脚本や演出にこだわったはずである。
日米摩擦とラーメン、この2大テーマについてはアメリカ人監督以下スタッフたちも手抜きせず最後の砦を守るが如く頑張ったと私は評価する。
そのためか、別にハリウッド映画は他の作品も同様の傾向があるので今さら批判しても仕方が無いのだが、他の部分で粗が出てしまっている。キャストの殆どが日本人であるにも関わらずだ。
たとえば職人気質のラーメン屋親父を演じている
西田敏行氏、彼自身も演じながら首を傾げているはずだ。煙草を吸う、これはまだ良い。料理人は煙草を吸わないという「常識」が「美味しんぼ」で取り上げられてから普及してきたが、場末の中華料理屋でコックが厨房で一服というのは今でも多い。煙草すいながら調理する輩もいる。しかし、さすがに仕事場で酒を飲む人はいない。しかも洋酒はおらん。せめて一升瓶をラッパ飲みかカップ酒一気飲みにしてほしかった。それでもトンデモ場面なのだが。
他にも気になる描写は多々あるのだが、アメリカ人が制作した映画だからやむを得ない。それを判った上で観たのだから許そう。絶対に手を抜いてはいかん所は頑張ったのだから。
ラーメンの大御所役の山崎努氏が登場して思い出すのは伊丹十三監督「たんぽぽ」、あの名作と比べたら可哀相だ。
アメリカ人が日本に興味を持ち、ラーメンに興味を持ち、若手の人気ハリウッド女優が
西田敏行氏と共演した事に意義がある。これをきっかけにブリトニー・マーフィ氏が邦画にも進出して、英語訛りの流暢な日本語で演技をしてほしい。そう願ったのだが、残念だ。
(余談1)訃報にビックリした。2009年という年は、死ぬはずがない人が倒れる年だった。マイケル・ジャクソン氏は世界中に衝撃を与えた。日本では大原麗子氏、臼井儀人氏、亀山房代氏等、12月のそろそろ正月モードになる歳末で、また哀しいニュースを聞くことになるとは。
シャワーを浴びている最中に倒れ、母親が見つけたときは心停止の状態だったらしい。オーバーワークだったのか?
(余談2)少し位置関係が気になる。ホントに東京の下町かな? 東京の地理に疎いのだが、高級ビジネス街のラーメン屋のように見えるが。
もっとも、大阪梅田も80年代の再開発以前は、お洒落なガラスぴかぴか高層ビルが建ち並ぶ麓にトタン板の粗末な家屋で八百屋や魚屋や飲み屋が並ぶ一角があった。本作の舞台となったところも「東京のとある町」と理解しておこう。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作
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ラーメン屋ブリタニー・マーフィ。 よくあるネタである。TVドラマ・小説・漫画、無数にある。本作とほぼ同時期に公開された映画にも同種展開の物語がある。在日華僑の中国料理店主役の藤竜也氏とその中国料理店に弟子入りする若い女性役の中谷美紀氏によるヒューマンドラマ「しあわせのかおり」だ。
この「
ラーメンガール」は「しあわせのかおり」とあまりにもシチュエーションが似すぎている。在日華僑の師匠と心に傷のある若い日本女性の弟子、日本人師匠と傷心のアメリカンギャル。ただ「しあわせのかおり」は三原光尋監督らしいノスタルジックなヒューマンドラマに仕立てていっているのに対し、本作のアッカーマン監督は日米文化摩擦と「美味しんぼ」のようなラーメン対決などを盛り込んで面白おかしくも織り込んでいるのが特徴かな。
無数に同種作品がある中で話題にそこそこなったのは、ハリウッドが日本のラーメンを題材にとったからである。典型的な白人ギャルが場末のラーメン屋に弟子入り志願、典型的な日本のラーメン屋の親父が師匠としてパワーハラスメント的指導を行う。
その白人ギャル役に若手有望女優の
ブリタニー・マーフィ氏、ラーメン屋の師匠に
西田敏行氏、これも公開前非常に話題になった。(余談1)
さて、本作の内容なのだが、要所要所はしっかりしていたと思っている。まずキャスティング、脇に余貴美子氏、石橋蓮司氏、山崎努氏を起用したのは大正解だ。もちろん日本人エージェントの助言があっての事だろうが、良き判断だった。
ラーメンの中身もよくできている。一口にラーメンといっても様々な種類がある。舞台となっているのは東京下町(余談2)の古き良き時代からある「中華そば屋」だから、もし博多ラーメンや流行の担担麺が出てきた時の激しい失望と怒りに備えて覚悟をしていた。嬉しい誤算で普通の中華そばだった。
日本人師匠とアメリカ人ギャル、当然の事ながら日米文化摩擦も物語の重要なテーマになるが、この描き方も巧くできていた。もっとも、ラーメン云々以上に日米摩擦のほうが作品の根幹なので制作陣は総力をあげてこの部分の脚本や演出にこだわったはずである。
日米摩擦とラーメン、この2大テーマについてはアメリカ人監督以下スタッフたちも手抜きせず最後の砦を守るが如く頑張ったと私は評価する。
そのためか、別にハリウッド映画は他の作品も同様の傾向があるので今さら批判しても仕方が無いのだが、他の部分で粗が出てしまっている。キャストの殆どが日本人であるにも関わらずだ。
たとえば職人気質のラーメン屋親父を演じている
西田敏行氏、彼自身も演じながら首を傾げているはずだ。煙草を吸う、これはまだ良い。料理人は煙草を吸わないという「常識」が「美味しんぼ」で取り上げられてから普及してきたが、場末の中華料理屋でコックが厨房で一服というのは今でも多い。煙草すいながら調理する輩もいる。しかし、さすがに仕事場で酒を飲む人はいない。しかも洋酒はおらん。せめて一升瓶をラッパ飲みかカップ酒一気飲みにしてほしかった。それでもトンデモ場面なのだが。
他にも気になる描写は多々あるのだが、アメリカ人が制作した映画だからやむを得ない。それを判った上で観たのだから許そう。絶対に手を抜いてはいかん所は頑張ったのだから。
ラーメンの大御所役の山崎努氏が登場して思い出すのは伊丹十三監督「たんぽぽ」、あの名作と比べたら可哀相だ。
アメリカ人が日本に興味を持ち、ラーメンに興味を持ち、若手の人気ハリウッド女優が
西田敏行氏と共演した事に意義がある。これをきっかけにブリトニー・マーフィ氏が邦画にも進出して、英語訛りの流暢な日本語で演技をしてほしい。そう願ったのだが、残念だ。
(余談1)訃報にビックリした。2009年という年は、死ぬはずがない人が倒れる年だった。マイケル・ジャクソン氏は世界中に衝撃を与えた。日本では大原麗子氏、臼井儀人氏、亀山房代氏等、12月のそろそろ正月モードになる歳末で、また哀しいニュースを聞くことになるとは。
シャワーを浴びている最中に倒れ、母親が見つけたときは心停止の状態だったらしい。オーバーワークだったのか?
(余談2)少し位置関係が気になる。ホントに東京の下町かな? 東京の地理に疎いのだが、高級ビジネス街のラーメン屋のように見えるが。
もっとも、大阪梅田も80年代の再開発以前は、お洒落なガラスぴかぴか高層ビルが建ち並ぶ麓にトタン板の粗末な家屋で八百屋や魚屋や飲み屋が並ぶ一角があった。本作の舞台となったところも「東京のとある町」と理解しておこう。
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☆☆☆ 良
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