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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「選挙」 社会を冷笑したい時に〔2〕 

選挙」 
日本型民主主義の滑稽さを描写した傑作

 

 
【英題】CAMPAIGN
【公開年】2006年  【制作国】日本国  【時間】120分  【監督】想田和弘     
【出演】山内和彦(本人)    
 
【成分】社会派 政治 現代日本 ドキュメント
 
【特徴】日本型選挙を主軸に徹底描写した渾身のドキュメント作。監督の想田和弘氏は友人の市議選に同道しカメラを回す。選対事務所の楽屋裏が赤裸々に描写されている。
 
【効能】選挙に参加した事の無い主権者(国民・有権者)にとって、選挙のスタンダード風景を知る絶好の機会。これをきっかけに国民は政治改革に参加するかもしれない。
 
【副作用】日本型民主主義に呆れ、ますます政治離れを起こす?
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
日本の社会や政治を嘲え!
但し諸君もそんな社会の構成員なのだ!

 
 私は革新系候補者の選対事務所スタッフを経験している。名ばかりとはいえ選挙事務所の責任者である選対委員長も務めたことがある。この作品の内容は、身につまされるものだ。観ていると切ないというより哀しくなる。
 
 たぶん、政治に関わる以前の私だったら、学生時代の私なら、もっと辛辣に高所から見下ろすような姿勢で、純粋に作品のデキを評価する。何故なら、他人事だからだ。
 
 ニュースで、この作品を鑑賞した欧米人へのインタビューが流れた。欧米人諸氏は一様に「白手袋・たすき・ウグイス嬢・街宣車、意味無い」「名前連呼しているだけじゃないか、政策や主義主張を言わないなんて、選挙運動らしくない」「候補者は自分の主張を言っていない。言わされている」「売名行為で、支持しているわけでも好きでもない行事や集会をはしごするなんて奇妙だ」などの感想と意見。私も学生の頃は全く同意見だった。
 
 しかし、選挙の現場を何度か経験すると、欧米人がいう「当たり前」の選挙運動をこの日本で展開するには余程の超有名人でなければ殆ど無理だということを思い知らされた。
 私が応援したのは革新や市民派と呼ばれる勢力の候補なので、他の候補者たちよりは日本的選挙からは距離を置いているスタイルなのだが、それでも妥協を強いられる。箇条書に列挙しよう。
 
「たすき」殆どの有権者は名前を知らないので、名前をアピールするために必要。
 
「ウグイス嬢」男性の声より女性の声の方が耳障りが良い。多くの女性も男性の声は威圧的に聞こえるため、女性の声でないと安心しない。
  
「街宣車」広い選挙区を回りながら名前を連呼するには街宣車は不可欠。拡声器もショルダー式では音量が小さくバッテリーももたない。車に取り付けた拡声器でないとパワー不足。
 街宣車は各候補者に1台と定められているが、あくまで「一部」の候補者は自分の車以外に政党の街宣車、政党機関紙の街宣車という名目で複数台走らせている。広い選挙区ではたしかに1台は少ないだろう。
  
「名前の連呼」殆どの国民(主権者)は政策なんかまず聞かない。単なる雑音にしか聞こえない。そんな圧倒的大多数の主権者に名前を焼き付けるには連呼しかない。もっとも連呼はしないよりはしたほうがマシというレベルなのだが。
 
「自分の意見を言っていない」たとえ無所属候補であっても、候補者とは個人では立候補できない。多くの人々の支持を背景としなければ単なる泡沫候補でしかないのだ。当選を狙う候補者は支持基盤の意向に従うのは必然である。
 
 支持者たちも純粋に主義主張に共鳴して応援しているわけではないのだ。様々な思惑や利害関係がある。いたずらに我を通せば選対事務所は瓦解する。身内を敵に回しては選挙戦は戦えない。
 
「行事への積極参加」市民派・革新でも組合や市民運動の集会にはマメに出る。組織票をあてにできない候補者は特に地域の集会に参加する。殆どの主権者は政策の成果など全く見ない。新人にいたってはアピールできる実績も乏しいので政策を主張しても口だけと見なされる。
 自分たちの目の前に笑顔で登場して一緒に汗をかく姿を魅せるのが最も手っ取り早い手段であり、西洋型民主主義とは異なる日本では数少ない選択肢である。
 
 キリが無いので列挙はこの辺にしておこう。結論を言うと、「客観的」な姿勢や外国人たちや一般市民の理想論、そんな意見を持つ方々の多くは投票に行かない。だから選挙戦は投票してくれそうな人々のニーズに合わせたものなのだ。
 特に一般市民に言うが、小馬鹿にするなら一度でも選対事務所に入って汗を流してみろ! 
 
 監督・撮影・編集を1人で手掛けた想田和弘氏に敬意を表する。候補者と確固たる信頼関係の蓄積がなければできない映像だし、自民党も許容できないだろう。(余談1)
 
(余談1)自民党をほめたくはないが、楽屋裏を映画にすることを了解した懐には好意的に評価する。しばしば思うのだが、保守よりも革新や市民派のほうが制約がきつい。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
晴雨堂関連書籍案内
自民党で選挙と議員をやりました (角川SSC新書) 山内和彦
精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura) 想田和弘


 
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お邪魔します~。こちらへの掲載、とのことで飛んでまいりました。
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選挙運動、ワタシも遠縁のおじが立候補し、ささやかながら選挙運動の内部に潜入?したことがあります。
たまたまそこがそうだったのかもしれませんが、普段は気にもしない土地の有力者たちによるアレコレを間近に見るハメになり、何とも複雑な気持ちでした…(汗)
[ 2007/06/25 00:51 ] [ 編集 ]
諸星です。ブログ開設おめでとうございます。選挙、私も読みにきました。私も市民派といわれる候補の選対をしておりましたので、大変共感しました。
ブログもしみじみしていていいものですね。最近はレビュアさんも多く開設されているようでやってみたいなとも思うのですがが、私は、掲示板運営でちょっとむりそうです(笑)
ミカエルさんのまた違う一面も拝見でき楽しいです。
また、おじゃまします。

[ 2007/06/30 03:54 ] [ 編集 ]
こんにちは。
やっと、たどりつきましたよ。
ミカエルさんは、お料理されるのですね。素敵です。一緒に台所におられる奥様は、幸せですね。
夕方、試写会に行く時などは、夕飯を作りおきしてから行きます。たいてい、カレーになります。サラダは、冷蔵庫に入れて。カレーは、続きますね(笑)。最後は、オムレツにかけたり、カレーうどんにしたりしています。
スーパーの揚げ物は、食べません。揚げ物は、手間がかかkりますが、健康エコナで揚げています。(花王とは無関係ですよ)
時々、まいります。お話するとtころは、ここでよかったですか?
では。
[ 2007/06/30 23:32 ] [ 編集 ]
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映画館にて「選挙」 2005年秋に行われた川崎市議会議員補欠選挙で、自民党公認で出馬した山内和彦氏に密着したドキュメンタリー。監督・製作・撮影・録音・編集を1人でこなしたのは、山内氏とは東大同級生の想田和弘。 いやはや面白かった。 東大卒、切手コイン商を営む...
[2009/06/01 19:47] ミチの雑記帳
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