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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「インビクタス/負けざる者たち」 家族と一緒に感動しよう〔20〕 

インビクタス/負けざる者たち」 
実際に起こった感動の大団円を映画化。

 
 
  
【原題】INVICTUS
【公開年】2009年  【制作国】亜米利加  【時間】134分  
【監督】クリント・イーストウッド
【原作】ジョン・カーリン
【音楽】カイル・イーストウッド 、マイケル・スティーヴンス
【脚本】アンソニー・ペッカム
【言語】イングランド語
【出演】モーガン・フリーマンネルソン・マンデラ)  マット・デイモンフランソワ・ピナール)  トニー・キゴロギ(-)  パトリック・モフォケン(-)  マット・スターン(-)  ジュリアン・ルイス・ジョーンズ(-)  アッジョア・アンドー(-)  マルグリット・ウィートリー(-)  レレティ・クマロ(-)  パトリック・リスター(-)  ペニー・ダウニー(-)  
         
【成分】楽しい 知的 かっこいい ラグビー 南ア 1990年代前半 
       
【特徴】南アの実話を描いた原作小説を実写映画化。白人が黒人を虐待する、あるいは黒人が白人に復讐するといったアパルトヘイトの惨状をステレオタイプな表現で描かず、台詞や俳優たちの表情の端々で臭わす程度に抑えている。
 全体に爽やかなスポ根ドラマにし政治的な描写も最小限。ラストの大団円は予定調和だが実話を基にしているだけに説得力のある感動場面に仕上げている。
   
【効能】小学校高学年以上の子供がいたら家族団欒で観ると情操教育と家庭の癒しになる。
 
【副作用】善良なドラマであるのが逆に胡散臭くつまらなく感じる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
南アの大団円を素直に映画化。

 大団円になることは判っている話をどのように映画化するのか。実話の映画化というのは、原作の映画化にも似て2時間前後の映像作品に加工するためエピソードを貼り付けたり切り落としたりする。観客が納得しやすい形にデフォルメしたり、観客が理解しづらいモノは切り落としたり、当たり前のことだが。
 
 この南アの物語も並の構成なら、白人が黒人を虐待する場面や黒人が白人へ復讐する場面を強烈に入れたり、マンデラ大統領がテロリストや暴漢に襲われたり、大統領SPやラグビーチームが黒人派と白人派に分かれて対立したり、あるいは白人派と黒人派の狭間で板ばさみになり葛藤を抱えるといった描写が延々続く。
 
 ところが本作はいたってシンプルである。くどさが無い。あからさまな悪人は出てこない、というより善良な普通の市民しか登場しない。
 南アが抱える国内事情、これは冒頭の場面で雄弁に描写する。白人警官が黒人市民を虐待する場面を出すわけではない。道隔てた2つの広場、一方は黒人エリアで薄汚いボロ服を着た子供達が土ぼこりをたてながらサッカーに興じ、もう一方ではよく手入れされた緑の芝生で清潔そうなラガーシャツに身を包みラグビーの練習を行う白人青年たち。そこへマンデラ氏を乗せた車が通る。歓喜の黒人少年と不安げな白人青年たち。巧い描写だ。
 
 主人公はモーガン・フリーマン氏扮するマンデラ大統領とマット・デイモン氏扮するピナール主将の2人。優れたリーダーである2人は生まれも育ちも対照的、よくある構成なのだが説得力は絶大だ。
 かたや被差別人種の活動家で30年近く獄中生活、アパルトヘイト(余談1)が崩壊し自由の身となった彼は大多数の国民の支持を得て国家元首たる大統領に就任。国内外から評判の良いマンデラだが、家庭は破綻状態である。
 かたや支配階級であった白人でラグビー一筋人間。アパルトヘイト崩壊後は黒人勢力の報復を恐れる少数民族に転落したのを象徴するかのように、「国技」ラグビーの落ち目チームをあずかる主将を務めている。マスコミから辛辣に叩かれるは、イニシアチブを握った黒人勢力からチーム名やチームカラーの変更を迫られるは、さらに解雇の危機もあり散々な状態。しかし家庭は円満だ。
 
 この対照的な2人のリーダーがパートナーシップを組んで、ラグビーのワールドカップをネタに国民を連帯感に包んで盛り上げようとする。黒人と白人の対立から、同じ南アの「アフリカ人」として祖国再建に突き進むために。(余談2)
 映画で省略したのは、ドロドロとした人間の感情だ。実際には様々な軋轢があっただろうが、映画では表情や言葉の端々で臭わす程度に留めている。それよりも話をラストのワールドカップ優勝の大団円に向けて、一見すると地味で緩慢ながらも怒涛に突き進んでいく。それが稀に見る迫力と清々しさだ。
 
 考えてみれば、決勝戦の相手は民族融和が比較的巧くいっているニュージーランドというのも象徴的だ。あの国とて例外なく非白人と白人との紛争はあった。しかしイギリス系と先住民であるマオリ族は同格、マオリ語は公用語となっており、マオリ語の国名アオテアロアも正式国名である。
 人種差別を法的に撤廃したばかりの南アと、白人選手も当たり前のようにマオリ族の民族舞踊を踊るニュージーランド。それに勝って大団円か・・。
 
(余談1)民主主義と人種差別撤廃が進む現代に於いて、南アだけが国際世論の批難を浴びながらも最近まで露骨な差別制度を存続させていた。住む場所も利用する公共施設や交通機関も厳しく分けていた。
 この制度ができた原因の1つとして、映画にもなった「ズール戦争」がある。19世紀半ば、ライフル銃で武装した英国軍を旧石器時代の粗末な武器だけで卓越した用兵と戦術で追い詰めたズール族の存在が、南アの白人たちに黒人への恐怖を植え付けた。大英帝国に初めて敗北感を与えたのは、清国でも日本でもない、ズール族である。
 因みに現在(2009年)の南ア大統領はズール族出身である。 

(余談2)マンデラ氏が恐れたのは、知識や技術を担っていた白人が国外へ流出することである。第二次大戦後、多くのアフリカ諸国は植民地から独立していったが、その際に白人を追い出したり粛清したり、あるいは白人が逃亡したりで、政治経済の技術面で訓練を受けた人材に不足し難儀を極めることになった。
 政治とは綺麗事だけでも実利だけでも立ち行かない。綺麗事を信じ実行する意思の力と、それを裏付ける実利が合わさって初めて事が動き出す。多くの人々は愚かにも片方だけを信じ、片方を蔑ろにする。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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「インビクタス/負けざる者たち」オリジナル・サウンドトラック
マンデラの名もなき看守 [DVD] ビレ・アウグスト
ズール戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD] サイ・エンドフィールド
 
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インビクタス〜負けざる者たち ジョン カーリン


 

 
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