「ニュースの天才」
実際にあった虚名記者の栄光と転落。 
ニュースの天才 [DVD]
【原題】SHATTERED GLASS
【公開年】2003年
【制作国】亜米利加
【時間】94分
【監督】ビリー・レイ 【原作】 【音楽】マイケル・ダナ
【脚本】ビリー・レイ【言語】イングランド語
【出演】ヘイデン・クリステンセン(スティーブン・グラス)
ピーター・サースガード(チャールズ“チャック”・レーン) クロエ・セヴィニー(ケイトリン・アヴィー) スティーヴ・ザーン(アダム・ペネンバーグ) ハンク・アザリア(マイケル・ケリー) メラニー・リンスキー(エミー・ブランド) ロザリオ・ドーソン(アンディ・フォックス) マーク・ブラム(ルイス・エストリッジ) チャド・ドネッラ(デヴィッド・バッチ) ルーク・カービー(-) テッド・コッチェフ(-) クリスチャン・テシエ(-) アンドリュー・エアリー(-) キャロライン・グッドオール(-) シモーヌ=エリース・ジラール(-) キャス・アンヴァー(-)
【成分】知的 絶望的 ジャーナリズム アメリカ 実話
【特徴】実際にあったアメリカの権威ある有名誌の若手エース記者による捏造事件を映画化。「スター・ウォーズ」シリーズで若きダース・ベイダーを演じた
ヘイデン・クリステンセン氏が一見草食系男子のフリをしながら大胆に真っ赤な嘘を記事にしていく虚名記者を上手く表現している。
原題を直訳すれば「粉々にされたガラス(ガラス)」、主人公の名前にかけたタイトルだが、私は邦題のほうが話の本質をよく突いているように思える。
【効能】人からの心服を得るテクニックを学べる。プレゼンの基本を学べる。虚名の虚しさを悟る。
【副作用】世間と人生を舐めてかかる。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
弱者のフリをした加害者。 90年代末だったか、けっこう大きなニュースだった。第1報はラジオで聞いたように思う。大統領専用機に常備されている一流誌の若手売れっ子記者が実は嘘でまかせの記事を書き続けていた。彼が手掛けた記事の多くは意図的な捏造。そんな事、ありえるのか?と我が耳を疑ったものだ。
しかしそれから2・3年後、なんと日本でもトンデモ捏造事件が発覚、考古学界では大スターのアマチュア学者が発掘した旧石器時代の遺物の大半が嘘っぱちだったという。おかげで日本の考古学会が定説化させていた歴史は根底から見直さざるを得ず、中学高校の教科書は書き直され、「遺跡」を町興しのテーマにしていた自治体は論拠を失い青ざめた。(余談1)
日本のトンデモ捏造事件の方が影響が大きく悪質だ。それに比べたら、まだ本作で取り上げた捏造記事事件のほうはまだ容易に起こりえて可愛らしい。それに主人公のモデルとなった記者は、捏造で社会的に抹殺された訳ではなく、ジャーナリストは辞めたが弁護士というこれまた知的な職に転身した。彼は話術が優れていそうだから、最初から弁護士になれば良かったかもしれない。本作を観て主人公にムカついた人は、「悪いことして何で零落れんのや、不公平や」と憤るだろう。(余談2)
本作で記事を捏造して花形記者になる主人公を「スターウォーズ」シリーズで若き日のダースベイダーを演じた
ヘイデン・クリステンセン氏が扮する。一見ナイーヴで母性本能をくすぐる草食系男子風の「天才記者」をリアルに好演。
彼の上司役に「K‐19」で見事にロシア人技術士官を演じた
ピーター・サースガード氏が悩める実直な編集人を演じた。彼は風貌や物腰からイギリスの俳優かと思っていたら、イリノイ州出身のアメリカンだった。
この作品は字幕版で観るよりは、吹替版のほうがより話の面白さが伝わると思う。映画館で観たときより、こないだローカルTV局で放送された吹替のほうが面白かった。
(余談1)本作の主人公は嘘八百の記事を調子よく並べて敏腕記者と讃えられ、個室を与えられて他記者の指導までやってしまうほど出世してしまうが、この考古学の捏造者は一介のアマチュア考古学マニアから捏造遺跡で日本考古学界の英雄となり、民間研究所の副理事長へと出世した。
日本の捏造者は、いわば日本の旧石器時代まるごと捏造したようなものだが、毎日新聞が捏造現場をスクープするまで何故か学会は追及しなかった。異論や反論が無かった訳ではない。あるニュースで紹介された学者のインタビューでは、捏造者は製造業に従事する高卒の工員でアマチュアの考古学者だったから、異論を唱えると学歴差別をしているように見えそうで嫌だったから言えなかった、という。インテリの劣等感か。学歴に頼らず独学で築き上げた者に弱いのかもしれない。
ちなみに、あれだけ大それた捏造をしながら、現行法で該当する罪状が無かったらしく、訴えられたが不起訴になった。
(余談2)程度の差はあれ、本作のような調子のいいホラ吹きは大勢いる。彼ら彼女らの助言を馬鹿正直に聞いてヒドイ目にあった事は多々あった。サースガード扮する編集長へもろに感情移入してしまった。
傍目には権力振るう加害者に見えるが被害者である。
弱い振りをした加害者は非常に恐ろしい。関わりたくない。 晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作
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弱者のフリをした加害者。 90年代末だったか、けっこう大きなニュースだった。第1報はラジオで聞いたように思う。大統領専用機に常備されている一流誌の若手売れっ子記者が実は嘘でまかせの記事を書き続けていた。彼が手掛けた記事の多くは意図的な捏造。そんな事、ありえるのか?と我が耳を疑ったものだ。
しかしそれから2・3年後、なんと日本でもトンデモ捏造事件が発覚、考古学界では大スターのアマチュア学者が発掘した旧石器時代の遺物の大半が嘘っぱちだったという。おかげで日本の考古学会が定説化させていた歴史は根底から見直さざるを得ず、中学高校の教科書は書き直され、「遺跡」を町興しのテーマにしていた自治体は論拠を失い青ざめた。(余談1)
日本のトンデモ捏造事件の方が影響が大きく悪質だ。それに比べたら、まだ本作で取り上げた捏造記事事件のほうはまだ容易に起こりえて可愛らしい。それに主人公のモデルとなった記者は、捏造で社会的に抹殺された訳ではなく、ジャーナリストは辞めたが弁護士というこれまた知的な職に転身した。彼は話術が優れていそうだから、最初から弁護士になれば良かったかもしれない。本作を観て主人公にムカついた人は、「悪いことして何で零落れんのや、不公平や」と憤るだろう。(余談2)
本作で記事を捏造して花形記者になる主人公を「スターウォーズ」シリーズで若き日のダースベイダーを演じた
ヘイデン・クリステンセン氏が扮する。一見ナイーヴで母性本能をくすぐる草食系男子風の「天才記者」をリアルに好演。
彼の上司役に「K‐19」で見事にロシア人技術士官を演じた
ピーター・サースガード氏が悩める実直な編集人を演じた。彼は風貌や物腰からイギリスの俳優かと思っていたら、イリノイ州出身のアメリカンだった。
この作品は字幕版で観るよりは、吹替版のほうがより話の面白さが伝わると思う。映画館で観たときより、こないだローカルTV局で放送された吹替のほうが面白かった。
(余談1)本作の主人公は嘘八百の記事を調子よく並べて敏腕記者と讃えられ、個室を与えられて他記者の指導までやってしまうほど出世してしまうが、この考古学の捏造者は一介のアマチュア考古学マニアから捏造遺跡で日本考古学界の英雄となり、民間研究所の副理事長へと出世した。
日本の捏造者は、いわば日本の旧石器時代まるごと捏造したようなものだが、毎日新聞が捏造現場をスクープするまで何故か学会は追及しなかった。異論や反論が無かった訳ではない。あるニュースで紹介された学者のインタビューでは、捏造者は製造業に従事する高卒の工員でアマチュアの考古学者だったから、異論を唱えると学歴差別をしているように見えそうで嫌だったから言えなかった、という。インテリの劣等感か。学歴に頼らず独学で築き上げた者に弱いのかもしれない。
ちなみに、あれだけ大それた捏造をしながら、現行法で該当する罪状が無かったらしく、訴えられたが不起訴になった。
(余談2)程度の差はあれ、本作のような調子のいいホラ吹きは大勢いる。彼ら彼女らの助言を馬鹿正直に聞いてヒドイ目にあった事は多々あった。サースガード扮する編集長へもろに感情移入してしまった。
傍目には権力振るう加害者に見えるが被害者である。
弱い振りをした加害者は非常に恐ろしい。関わりたくない。 晴雨堂スタンダード評価
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