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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ハート・ロッカー」 孤独を楽しむ時に〔46〕

ハート・ロッカー」 
元夫の「アバター」に競り勝った?

 
 
  
【原題】THE HURT LOCKER
【公開年】2008年  【制作国】亜米利加  【時間】131分  
【監督】キャスリン・ビグロー
【原作】
【音楽】マルコ・ベルトラミ バック・サンダース
【脚本】マーク・ボール
【出演】ジェレミー・レナー(ウィリアム・ジェームズ二等軍曹)  アンソニー・マッキー(J・T・サンポーン軍曹)  ブライアン・ジェラティ(オーウェン・エルドリッジ技術兵)  レイフ・ファインズ(請負チームリーダー)  ガイ・ピアース(マット・トンプソン軍曹)  デヴィッド・モース(リード大佐)  エヴァンジェリン・リリー(コニー・ジェームズ)  クリスチャン・カマルゴ(ケンブリッジ大佐)
 
【成分】パニック 勇敢 知的 イラク戦争 アメリカ軍 イラク 英語 一部アラビア語  
       
【特徴】ビグロー監督の十八番、職人気質の世渡下手な仕事中毒の男の世界。一応、戦争映画ではあるがハリウッドお得意の派手な銃撃戦は無い。そこがビグロー監督の良さである。
 イラクに派遣された米軍爆弾処理班の下士官が主人公。爆弾を処理する極度の緊張感の中でしか生甲斐を見つけられない男の悲喜劇でもある。少し前の日本人サラリーマンなら共感できたか?
 晴雨堂好みのマニアックな内容では本来アカデミー賞に相応しくないはずなのだが、アメリカ保守層の熱烈な支持を得たのか、本来ならアカデミー賞総ナメしてもおかしくない「アバター」を抑えて2009年度最多部門受賞。
    
【効能】仕事人間に漂う極度の緊張感を体感し良作を堪能した有意義な満足感を得る。常に死と隣り合わせのイラク駐留アメリカ軍の境遇に理解か深まる。
 
【副作用】アメリカ大国主義の保守層に支持された作品ゆえ、嬉々として観てしまうと米軍の侵略に加担したかのような罪悪感を感じる。
 全体に派手さが無く地味なつくりなので退屈する。延々と女性不在の男の世界が続くので気が滅入る。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
私好みの映画、本来はマイナー作品だ。
  
 この作品、私の趣味に合致した映画であり、本来ならメジャーな作品にはなりえない。たとえば、ビグロー監督がメガホンを取った「K‐19」(余談1)、ソ連原潜の悲劇をリアルに描いた力作であり、私にとっては「Uボート」と並んで潜水艦映画の8千メートル級峰にあたる。ところがアメリカではあまり売れなかった。
 今回の映画にしても、舞台がソ連原潜内部からバグダッド市街戦の最前線に移っただけ。主人公は同じく職務中毒の仕事人間の男臭い男たち、性格や価値観が違う2人の男のぶつかり合い、そして物語には欠かせないヒロインは事実上不在。変に劇的過ぎる派手なアクションは無い。作品の性格は「K‐19」とさほどに変わらないのに、今回のアカデミー賞では最多部門受賞とは、どういうことだ? 

 この内容では日本全国のシネコンで上映されない。主要都市のマニアックな名物映画館で上映される程度に終わる。ところがアカデミー賞の今期最多受賞ともなれば、全国一斉ロードショーだ。「アバター」より遥かに低予算なので、各地の映画館でそこそこ売れただけで元とれるだろう。
 やはり万人が楽しめる映画は元夫キャメロン監督の「アバター」だ。絢爛豪華なアカデミー賞に相応しいのは「アバター」のはず。
 
 やはり政治的な思惑が働いているとしか思えない。ただビグロー監督自身は、政治云々とか体制に迎合しているとか、そんな意識は無いと思う。
 たぶん彼女は職人気質のような優秀でなおかつ世渡り不器用な男が好きなのではないか、そんな男の周りに漂う独特の緊張感が大好きなのではないか、彼女の映画づくりを観ていたらそんな気がする。またそんな性分だからこそ、一時はジェームズ・キャメロン監督に惹かれ短期間ではあるが夫婦になったと私は見ている。

 今回にしても、そんな男の緊張感を表したかった。リアリティを損なう無粋な脚色はやりたくない。となれば、あまり脚色や演出をいじらなくても劇的に重く勝負できる舞台は、やはり戦争だろう。戦争といっても、ハリウッド映画お得意の贅沢に火薬を使ってドンパチは迫力はあっても嘘臭くなる。では普通の歩兵部隊や戦車部隊ではなく、最も危険で緊張する爆弾処理班だ。「K‐19」でも敵船と魚雷やミサイルの打ち合いはやっていない。むしろ戦闘よりも危険な原子炉の修復がメインだ。
 戦争となれば、ネタとして使い古された第二次大戦でもベトナムでもない、現代のイラクだ。彼女にとって大好きな絵が撮れる舞台がイラクであって、それがアメリカ体制権力の利害と合致しアカデミー賞で反映されただけだ。(余談2)
 
 ビグロー監督の手腕は昔から買っている。本作はまことに私好みの観応えある映画だった。爆弾処理の緊迫感、狙撃兵の恐怖、任務が終わって家に帰った主人公の緊張感の無い脱力した生気の無い顔、散髪をしないのか髪は伸びている。妻は心得たもので主人公の「世界」を批判も賛同もせず立ち入らない。日本の仕事人間の家庭でもありそうな光景だ。
 ラスト、また同じ任務につく。前回の1ヵ月と違って今回は1年。再び髪を青々とGIに刈上げ目は輝き姿勢には力がみなぎっている。
 
 それにしても、歩兵というのは海軍や空軍と違って最も安い装備なのだが、米軍のは金がかかっている。世界一高級な装備をゴテゴテ付けた兵隊ではないか。イラクのゲリラはろくなもん付けていないが。
 
(余談1)「K‐19」で原子炉担当の若い技術兵を演じていた人が、今回はインテリで育ちの良い軍医大佐として出演している。「K‐19」からそんなに年月が経っていないのに、大佐の階級が似合う老け顔になっていた。

(余談2)本来のアカデミー賞の趣味を考えたら「アバター」が最多受賞でなければならない。やはり、万人ウケの作品を装いながら、体制否定のメッセージが挿入されていることに選考者たちの勘に障ったか? 大袈裟にいえば、あれは過去500年にわたる白人の世界侵略を批難しているともとれる。手塚治虫氏や宮崎駿監督の作品では当たり前のテーマなので鑑賞者は気が付かないかもしれないが、アメリカ人の保守派には少し刺激がある。
 
 「ハート・ロッカー」は、権力者からみたらプロパガンダに利用できる。米兵は世界中から評判が悪い。国内もけっして良好ではない。これを観れば米兵が如何に神経をすり減らし命をかけているか。良心的なことを言っていたら作中の軍医みたいに殺されると。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(作品賞)(2009年) LA批評家協会賞(作品賞)(2009年) NY批評家協会賞(作品賞)(2009年)
 

 
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[映画][2010年]ハート・ロッカー

先ごろアカデミー賞作品賞等を受賞した、イラクで爆弾処理に就く男たちを描いた映画。 イラク戦争に関連する映画って少ないなあ、と思ってたんですが、僕はよく知らなかったのですが実はそんなに少ないわけでもないみたい。 話題にならず日本にもあまりやってこないというこ

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