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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「僕がいない場所」 孤独を楽しむ時に〔47〕 

僕がいない場所」 
拠り所を奪われた少年の悲劇。
児童虐待を描いたポーランドの問題作。

 
 
  
【原題】JESTEM
【公開年】2005年  【制作国】波蘭  【時間】98分  
【監督】ドロタ・ケンジェルザヴスカ
【原作】
【音楽】マイケル・ナイマン
【脚本】ドロタ・ケンジェルザヴスカ
【言語】ポーランド語
【出演】ピョトル・ヤギェルスキ(クンデル)  アグニェシカ・ナゴジツカ(クレツズカ)
 
【成分】悲しい 絶望的 切ない 児童虐待 育児放棄 社会派 ポーランド  
       
【特徴】育児放棄を扱った問題作。被害者である少年の目線で映画が作られている。
 母親から見捨てられ拠り所を失った少年の物語であり、川辺に浮かぶ廃船で独り寝起きしながら、町の大人たちや苛めっ子グループの目を警戒し常に孤独な緊張感を抱きながら細々と暮らす。
 この様に共感するか衝撃を受けるかで、鑑賞者の子供時代に於ける社会的ポジションが判る。
   
【効能】児童虐待に於ける被害者の孤独を知る。緊張感ある孤独を楽しめる。
 
【副作用】全体に陰鬱な雰囲気で気分が暗くなる。ラストのバッドエンドで少年の行く末が心配になる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
ヒロインの姉の表情に注目。
  
 日本でも児童虐待が社会問題になっているが、本作はポーランドの話。実際にあった事をベースに映画化されたらしい。
 世界的に育児放棄や児童虐待が問題になっているのか? あるいは昔からそんな問題はどこでもあったのだが、近年の人権意識の向上にともなって以前なら問題にならなかった事が取り上げられるようになったのか?
 
 主人公は10歳くらいの少年、母親がいるにも関わらず孤児院に入れられている。(余談1)母親が育児放棄ををしたためだ。それでも少年は孤児院を抜け出し母親に会いに行くが、なんと男と同衾中というショッキング場面に遭遇する。
 母親の男はガキ大将をそのまま身体だけ大人になった感じのチンピラ、少年はその後も母親の情夫に絡まれる。
 
 母親から見捨てられている現実に直面する少年だが、孤児院に戻る気は無く母親が住む町に居座ることを決意し、川べりに遺棄されている廃船を雨露しのぐ寝床に定め、空き缶拾いなどをしてパンにありつく。町には親切な人もいるが町の苛めっ子グループから目をつけられて、逃げたり隠れたりと町での生活は孤独な緊張感がある。
 
 そこへ、廃船がある川辺の近くに住む中流家庭の親子と顔見知りになる。家は少し大きな一戸建て、日本でいえば少し前の「中流家庭」といったところだ。40歳くらいの父親と母親、少し大人びてきた12歳から14歳くらいの長女と少年と同じ10歳くらいの次女の4人家族。
 少年は最初のうち美しい長女に惹かれていたようだが、ほどなく劣等感に悩む次女と仲良しになる。次女は美しくて賢い長女に対し劣等感を感じ家族の中で疎外感を抱えていた。そこで廃船に住むホームレスとなった少年と意気投合する。
 
 ある日、母親との絶縁が決定的になる。「彼氏」が通ってこない事に泣き出し、少年が邪魔だと言い放たれてしまう。愚かな母親でも慕ってくれる息子に対しもはや取り返しの付かない行為だ。
 少年は絶望のあまり川に身を投げるが死に切れない。廃船の寝床で臥せっているとあの次女がやってくる。「クンデル君にはまだ私がいる。2人で一緒にどこかへ旅立とう」次女は憔悴した少年を励まし、2人だけの計画を実行にうつそうとするが・・。(余談2)
 
 どこまでも孤独と緊張を強いられている少年の悲劇を、子供の目線で映していく佳作だ。彼はどんな大人になってしまうのだろうか?
 
(余談1)少年は素人から主役に抜擢されたというが、玄人肌の演技を見せた。また顔色が悪く肌の張りもない。本当にろくな生活をしていない風体だ。
 同様の映画を邦画でやった場合、やはり垢抜けている様がリアリティを損ねてしまうだろう。
 
(余談2)町の大人たちは概ね少年には親切というよりは、黙認といった感じだった。次女の親も少年に対しては放任的黙認姿勢だ。子供が1人で家の前の廃船で寝起きしているのだ。普通は警察か役所に届け出るはずなのだが、基本は距離を置く姿勢、少年が廃船で焚火をしても「火の始末をしろよ!」と怒鳴って済ます程度だ。

 ただ、長女だけは違った。少年と歳が近くおまけに思春期だった。彼女だけは少年に「男の視線」を感じ警戒していた。
 決定的だったのは、次女がホームレス生活で汚れた少年を風呂にいれてやろうと、こっそり家のバスルームに連れて行った事件だ。長女が物音に気付き風呂場へやってきたので、少年を窓の外へ隠し自分が裸になって風呂につかって誤魔化したが、長女にはまるわかりだった。そのときの長女の不安そうな顔。
 
 ラスト、長女は「姉」として妹を守るために「姉の決断」を下す。長女の台詞は殆ど無いが、節目節目に挿入される彼女の顔のアップが、物語の進捗と結末を表していて興味深い。
 


晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】第49回ベルリン国際映画祭賞キンダーフィルムフェスト特別賞受賞 第30回ギディニア全ポーランド国際映画祭最優秀撮影賞・最優秀音楽賞・最優秀音響賞・シネマキッド映画賞受賞
 

 
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