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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「アギーレ/神の怒り」 孤独を楽しむ時に〔10〕

アギーレ/神の怒り」 孤高のクラウス
 

 
【原題】AGUIRRE, DER ZORN GOTTES
【英題】AGUIRRE: WRATH OF GOD
【公開年】1972年  【制作国】西独逸  【時間】93分  
【監督】ヴェルナー・ヘルツォーク
【音楽】ポポル・ヴー
【脚本】ヴェルナー・ヘルツォーク
【言語】ドイツ語
【出演】クラウス・キンスキー(ロペ・デ・アギーレ)  ヘレナ・ロホ(イネス・デ・アティエンサ)  ルイ・グエッラ(ペドロ・デ・ウルスア)  セシリア・リベーラ(フローレス・デ・アギーレ)      
【成分】パニック 不気味 恐怖 絶望的 切ない 熱帯 1560年 南米 ドイツ語  
   
【特徴】今でもときどき映画館で上映される名作。
 ナスターシャ・キンスキー氏の父親で稀代の怪優クラウス・キンスキー氏が主演。ありもしない黄金郷を目指し破滅へとつき進むアマゾン探検隊の支配者を怪演する。
 
【効能】孤高のクラウスが虚に吼える様は、真夏の蒸し暑さと騒々しさを吹き飛ばす。狂気を体感してうだるような暑さを和らげる。
 暑苦しい熱帯のジャングルにむさ苦しい男達の中でヒロインたちの涼しげな顔は一服の清涼感を与える。
 
【副作用】ラストは破滅なので、ハッピーエンド好みには納得できない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。   
ジワジワ破滅が面白い 

 観たのは高校生の頃だったか? インカ帝国を滅亡させたスペイン人たちをドイツ人俳優が演じるので、ドイツ語の台詞に違和感を感じたが直ぐに慣れた。1時間半程度の比較的短い作品だが、全体に重厚感が満ちていた。(余談1)
 
 インカを滅亡させた事で有名なピサロ率いる「アマゾン探険隊」は、アマゾン川上流を斥候するため分遣隊を出す。クラウス・キンスキー氏はその分遣隊の副長アギーレを演じる。
 
 鬱蒼とした密林に、緩やかに流れる茶色の河、そこに大きめの筏を組んで重い鉄の塊の大砲を積み、重い鉄の棒でもある火縄銃で武装した男たち数十人が乗り込み、さらに隊長の愛人とアギーレの娘が「盛装」姿で乗り込む。(余談2)画面を観ただけで暑苦しい。
 
 アギーレは程なく反乱を起こし、隊長に重傷を負わして傀儡の隊長に挿げ替え引き続き「副長」として隊内の実権を握り、在るのか無いのか判らない黄金郷征服に向けて行軍を続ける。
 アギーレの行動が唐突に見えるかもしれないが、当時のヨーロッパ人にとってはローマ法王の威光が届かない世界だ。しかもコルテスのアステカ帝国征服の前例がある。教化されていない「未開の土地」で、本国から完全に生殺与奪を含めた全権を委任された部隊。金銀豊かな国を滅ぼし略奪強姦し放題の前例。リーダーの器量によっては、アギーレのように凶暴で強ければクーデターを起こす事もありうるだろう。(余談3)
 
 重火器で装備した分遣隊は黄金郷征服に向けて岸辺の村を襲ったり、原住民と戦ったりするが、慣れない気候で体調を壊す隊員が出始め、少しずつ頭数が減り、やがてアギーレ1人になってしまう。アギーレは1人両手を挙げて仁王立ちになり狂気の台詞を吐く。
 
 ここではヨーロッパ人のアメリカ先住民虐殺などの要素は完全に省いている。捕虜となったインディオたちも台詞の無い無個性なキャラに描かれているし、アマゾン川流域にいる「食人族」もあまり姿は表さず、不気味で薄ら怖い存在で描かれている。(余談4)
 あくまでも未知の世界で孤高の人間が狂気に走る様を描いたものと理解したほうが解り良いだろう。この孤立感は単なる秘境に放り出された程度ではない。神の威光が届かない「蛮族」の地での孤立である。
 ヨーロッパ人の側面の一つが楽しめる映画だ。
  
(余談1)「蒼き狼・・」で日本語を話すジンギスカン達には最後まで慣れなかった。

(余談2)何でむさ苦しい「男の世界」に年頃の女性が参加しているのか未だに解らない。愛する「夫」や「父」に付いて来たにしても、とても探険する格好ではない。当時の事情に詳しい方がいたら教えてほしい。
 このシチュエーションでは、まるで「黒いエマニエル」のラウラ・ジェムサー氏が主演しそうな場末のエログロ食人族モノにありそうな構図だ。
 アギーレの娘はハイティーンの色白で涼しげな美少女、周囲のむさ苦しい男たちは何故ちょっかいをかけないのか不思議だったが、あの恐怖の副長の娘だから手が出せなかったことに気付き納得。

(余談3)たしか19世紀初頭の事件だったと思うが、無能な提督に率いられた艦隊が遭難し無人島に漂着した。生き残ったクルーたちは海軍の階級など無視して派閥をつくり殺し合う。
 ジュール・ベルヌの「十五少年漂流記」のような秩序ある世界は夢か?

(余談4)この感覚はヨーロッパ人が共通に抱いているものなのか? 「シン・レッド・ライン」などの日本軍の描写も似ている。
 それにしても重火器で虐殺しておいて。よく言うな、ヨーロッパ人は。今でも南米の先住民は悲惨な状況だ。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
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70年代を代表するドイツのロックグループ、映画の音楽を担当した。
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