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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「チャップリンの殺人狂時代」 社会を冷笑したい時に〔5〕

チャップリンの殺人狂時代
社会への普遍的痛快批判

  

 
【原題】Monsieur Verdoux
【公開年】1947年  【制作国】亜米利加  【時間】124分  
【監督】チャールズ・チャップリン
【原案】オーソン・ウェルズ
【音楽】チャールズ・チャップリン
【脚本】チャールズ・チャップリン
【言語】イングランド語    
【出演】チャールズ・チャップリン(アンリ・ヴェルドゥ)  マーサ・レイ(アナベラ・ボヌール)  マリリン・ナッシュ(娘)  チャールズ・エヴァンズ(モロー刑事)  
 
【成分】コミカル 怖い 悲しい 知的 不気味 切ない 社会批判
 
【特徴】山高帽に窮屈な上着ダボダボズボンの放浪者チャーリーは出てこない。冷たい紳士のチャップリンが殺人犯を演じる。

 フランスに実在した殺人犯がモデル。オーソン・ウェルズが漠然とした企画段階でチャップリンに主演を打診、その場ではチャップリンは断るが、左派志向を強烈にしつつあるチャップリンはアメリカ資本主義を批難するべく乗り気になり、いつものように監督から主演までをこなす「チャップリンの映画」として制作、この経緯から原案はオーソン・ウェルズ名義となっている。オーソン・ウェルズが果たして反体制色の強い作品にするつもりであったかどうかは未確認。
 「モダンタイムス」以降、反体制姿勢を強めるチャップリンはこの作品で当局に要注意人物と見なされレッドパージによってアメリカ映画界から追放される。

 ラストで主人公が語る台詞「One murder makes a villain; millions a hero. Numbers sanctify(1人を殺せば犯罪者だ、百万の殺害は英雄。数が人殺しを神聖化する)」は映画史に残るとともに、強烈なアメリカ資本主義の非難である。
 
【効能】社会の不条理を表現、暗にアメリカを批判、溜飲さがる。
 
【副作用】怖いチャップリンなので、喜劇と思って鑑賞すると違和感を感じる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
恐いチャップリン

 初めて観たのは10歳頃と思う。子ども心に嫌だった。いつもの山高帽に小さいジャケット大きいズボン姿でコミカルに動くチャップリンではなく、ロマンスグレーの紳士で冷ややかなトーンの話し方をするチャップリンがいた。(余談1)
 冒頭で、近所のオバサンたちが「あの人、三日もゴミを燃やしている」と噂し合う。「殺人狂時代」というタイトルから、チャップリンが殺人犯を演じているのは明白、ときおりコメディアン的な仕草が見受けられるものの、「独裁者」までのチャップリンとは明白にキャラが違っていた。
 
 学生時代になると、おもしろいもので作品への印象がガラリと変わった。この作品が数多くあるチャップリンの映画の中で傑作になるのではないかと。
 もちろん喜劇王のチャップリンも好きだし、「独裁者」や「ライムライト」のヒューマニズム・チャップリンも好きだ。しかし名指しこそしないが、アメリカを中心とするボッタクリ資本主義とアメリカの正義の下に行う大量殺戮を批判したこの作品は痛快である。
 現に、この映画が公開される二年程前にアメリカは東京大空襲や広島・長崎原爆投下を行っていた。(余談2)
 
 この作品は名指しこそしなかったが、アメリカを批判したものとして赤狩り(レッド・パージ)に遭う。チャップリンは共産主義者だの、少女趣味の不道徳者(余談3)といったレッテルを貼られ、ハリウッドを追われヨーロッパへ避難して映画制作をするようになる。その辺の心情は「ニューヨークの王様」で窺い知ることができよう。
 
 気に入っている場面は、多くのファンは裁判での弁論だが、正味ラストでチャップリンが末期の酒を呑むところが私の一押し場面である。処刑を前にして酒をすすめられたとき、一度は断るがすぐに気が変わって「ラムはまだ呑んだことがない」とショットグラスを受け取り一気に呑む。
 その場面が忘れられずラム酒が好きになった。(余談4)
  
(余談1)淀川長治のラジオ番組で、チャップリンは自分の話し方が喜劇に向かないと考えていたらしくトーキーが主流になってもサイレントにこだわっていた、と紹介された。
 
(余談2)明らかにアメリカがやったことも国際法違反である。
 「メンフィス・ベル」でドイツを爆撃するアメリカ軍の編隊が、撃墜の恐怖をこらえて爆弾を目標のみに投下して病院や学校には危害を加えないようにする場面がある。この映画自体には悪意は抱かないが、では日本に対しては情け容赦なく女子供も殺し尽くそうとした訳か、と斜に構えてしまう。
 珍作「パールハーバー」に至っては、喧嘩うっているとしか思えん。
 
(余談3)チャップリンは4回結婚している。3番めに結婚したポーレット・ゴダール以外は全員ハイティーン。
 
(余談4)普段はスコッチをチビリと。好きなのはアイラ島の「ラフロイグ」だが銭が無いのでブレンデットの「バランタイン」。気合を入れるときにキューバのラムを呑む。
 
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ニューヨークの王様 [DVD] チャールズ・チャップリン
 

 
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