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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「パッチギ!」 青春回帰〔10〕 

パッチギ!
朝鮮学校を舞台にした初のエンタメ

 

 
【朝題】박치기
【公開年】2004年  【制作国】日本国  【時間】119分  【監督】井筒和幸
【原案】松山猛
【音楽】 加藤和彦
【脚本】羽原大介 井筒和幸
【言語】日本語 一部朝鮮語
【出演】塩谷瞬(松山康介)  高岡蒼佑(李安成)  沢尻エリカ(李慶子)  楊原京子(桃子)  尾上寛之(チェドキ)  真木よう子(鄭康子)  小出恵介(吉田紀男)  波岡一喜(モトキ・バンホー)  オダギリジョー(坂崎)  光石研(布川先生)  加瀬亮(野口ヒデト)  江口のりこ(ヘヨン)       
 
【成分】笑える 楽しい 切ない かわいい コミカル 1968年 京都 在日コリアン 朝鮮学校 
    
【特徴】朝鮮学校を舞台にした愛と暴力と葛藤の青春映画。和製ウエストサイド物語と評しても良い。国内の映画賞をほぼ総なめの問題作だ。
 在日コリアンをテーマにした邦画はこれまで反差別啓蒙を目的にした文科省推薦的教育映画の側面が強く説教臭いのが特徴だった。そういう意味では初の青春エンタメの作品といえよう。

 チマチョゴリの朝鮮高級学校(朝高)の制服姿の沢尻エリカ氏が清楚で可愛らしい。
 
【効能】在日コリアンと日本人との関係が比較的判り易く描写。民族差別の難儀さを学べる。
 
【副作用】暴力の連続なので気分が悪くなる。朝鮮韓国に反感を持っている人には誤解と偏見にまかせた歴史観に見えて憤懣を抱く。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ハッキョ(学校)を知る入門編

 朝鮮学校を本腰に取り上げ話題になった最初のエンタメ映画になるのだろうか? そういう意味では悪くないのではないかと思う。
 
 私は「パッチギ」(余談1)よりも後の世代だが、それでも「在日」の友人知人らと昔話をするとき、やはり喧嘩をしたことが話題に上がる。今もそうかもしれないが、お互い気楽に付き合う相手ではなかった。その辺の部分はデフォルメされているとはいえ無難に表現されているのではないか。(余談2)
 
 私が中高生だった頃も、左翼思想に傾倒した教師が教科書から脱線して旧日本軍の戦争責任を問う授業をしていたし、今にして思えば強烈なのは音楽の授業は完全に教科書を無視して独自に作成した楽譜を配布して歌を習った。その中には沖縄民謡や反戦歌などが多数あり、特にショスタコヴィチの「スターリングラード市民は前進する」は強烈である。今でも私の好きな歌だ。(余談3)
 しかし、当時の私はそんな教師たちに反発して保守に傾倒し、部落研究会の級友と喧嘩した。左派教師が目につきやすいよう黒板にシュタールヘルム(第二次大戦中にドイツ兵が被っていたヘルメットが有名)を被ったドイツ兵の落描きを描いたりした。
 
 制服姿の沢尻エリカ氏が可愛い。上品にフルートを吹く場面などは監督の目のつけどころが良いと思う。というのも、ハッキョは各種学校の扱いだから文部省からの補助金も少ない。だから学費は高いし教師の給与は低い。当時は朝高まで行ったら破産するとまでいわれていた。「在日」の就学対象者でハッキョに通うのは昔も今も2割程度である。
 この一場面だけでも沢尻氏扮するリ・キョンジャが如何に大切に育てられたか、民族教育を受けさせるために親が努力しているかが垣間見えるシーンだ。
 
 「在日」をテーマにしたモノの評価が低すぎる傾向がある。しかし俯瞰で見てみると、同種テーマであるはずの「ウエストサイド物語」や「ロッキー」や「ゴッドファーザー」などが大好評というのは如何なものだろうか?(余談4) それどころか「パールハーバー」に至っては日本への悪意まるだしなのに喜々として見る日本人たち。
  
 日本にもハリウッドに負けない映画を創る素材は沢山ある。なのにできないしマニアックとして評価される。それがどうも不公平であり不当に思えて同調できない。それどころか、韓国朝鮮の「反日」には敏感でアメリカの「蔑視」に鈍感の傾向があるのは、恥ずかしいことである。
 同時に、ハリウッド映画に反発しながらも、ハリウッドの映画創りの懐の深さを思い知らされ観てしまう。

 もっと落ち着いて気兼ねなく映画創りができる時代への第一歩としてこの作品は評価できる。ただ、私個人としては努力賞的佳作とは思うが絶賛はできない。
  
(余談1)当時、やんちゃな旧友たちは額の生え際に剃りこみを入れて極端なM字型にしていた。それを「パチキを入れる」と言った。この言葉は大阪だけかな? この映画のタイトルを初めて見たとき、単語の由来はもしかして朝鮮語なのかなと思った。
 
(余談2)ディープな関西人にとっては、ハッキョ(学校)は良い意味でも悪い意味でも身近な存在だった。私たち家族は60年代初頭に四国から尼崎の下町に移り住んだ。近所には在日コリアンの人々が大勢住んでいて朝鮮学校もあった。着物よりもチマチョゴリを先に見たかもしれない。貧乏人同士、助け合って暮らしていた。
 生野区に住む知人など普段は「在日」の悪口を言うのだが、驚いたり感動したときに「アイゴー!(朝鮮語・感嘆の言葉)」と叫ぶ。
 だからディープな関西人から見て粗が少ない事が重要であるが、この作品は及第点ではないか。
 
(余談3)内容は、ナチスドイツの侵略で荒廃した町を復興させようと決意する歌。壮大なスペクタクル戦争映画の主題曲になりそうな歌である。人気の曲で、教育実習の音楽教師が「うまく弾けないのでやめる」と言うものならブーイングの嵐だった。
 ただ、ショスタコビッチは前衛的な音楽を作曲する人で、スターリンから「資本主義的」と睨まれていた。この楽曲はスターリンからの非難をかわすために作曲したという。つまり、ショスタコビッチは前衛音楽から売れ筋音楽まで難無くこなす才能を証明しているといえる。
 
(余談4)在米スパニッシュ・イタリアンの物語である。アメリカは自由で移民の国だから差別は日本よりマシと考えられがちだが、それだけに屈折していてえげつないところもあり、日本のほうがまだ優しいと思える場合も多々ある。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
【受賞】第48回ブルーリボン賞作品賞 第60回毎日映画コンクール日本映画大賞 第79回キネマ旬報ベスト・テン監督賞 新人女優賞 第27回ヨコハマ映画祭作品賞 第29回日本アカデミー賞優秀作品賞 優秀監督賞 新人俳優賞 話題賞

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パッチギ! オリジナル・サウンドトラック
パッチギ!LOVE&PEACE スタンダード・エディション [DVD] 井筒和幸
 
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パッチギ!的―世界は映画で変えられる 李鳳宇
「パッチギ!」対談篇 ・・・・・・喧嘩・映画・家族・そして韓国・・・・・・ (朝日選書) 李鳳宇
愛、平和、パッチギ! 井筒和幸
パッチギ! 朝山実
「在日コリアン」ってなんでんねん? (講談社プラスアルフア新書) 朴一
在日の地図 マンガで巡るコリアタウン探訪記 (ぶんか社文庫) 山野車輪
 

 
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[ 2008/01/15 19:27 ] 映画・・青春回帰 | TB(1) | CM(2)
確かに。私は本作未見ですが言わんとされてることよくわかります。例えば何か犯罪が起きても加害者が中国、韓国人なら鬼の首を取ったかのように「やっぱしヤツらは」と民族性に転化するのに同じ日本人にはそういう思考はしない。対米関係も含め、日本人として恥かしい限りです(-。-;
[ 2013/02/10 13:44 ] [ 編集 ]
アイヤーダイ氏へ

 私は保守ですが、公平性を失いたくないものです。バランス感覚を失うと偏狭になる。これは右翼も左翼も関係ありません。同じように見苦しいものです。
 
 私はどんな映画も短兵急に判断しません。必ず二通り以上の視点で評価します。それは自身の生き方でもあります。人から一方的に決め付けられて否定されたり斬り捨てられること多々ありますが、私はしません。

> 確かに。私は本作未見ですが言わんとされてることよくわかります。例えば何か犯罪が起きても加害者が中国、韓国人なら鬼の首を取ったかのように「やっぱしヤツらは」と民族性に転化するのに同じ日本人にはそういう思考はしない。対米関係も含め、日本人として恥かしい限りです(-。-;
[ 2013/02/11 04:15 ] [ 編集 ]
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私の周りでとても評判がよく やっとDVDを借りて見ました。 政治的配慮から発売中止となり、 放送も自粛されてきた「イムジン河」が発表された翌年の1968年の京都。 朝鮮学校の少女に一目惚れした日本人高校生の恋の行方と奮闘記。 日本の高校生と朝鮮高校の対立、?...
[2009/07/13 10:48] 映画、言いたい放題!
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