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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

男優評 稲垣吾郎 「十三人の刺客」(2010) 

十三人の刺客」 
ジャニーズ異例の素晴らしき悪役ぶり!

 
 私はSMAPに興味は無い。トップアイドルの木村拓哉氏には全くの無関心、リーダーの中居正広氏や子供に人気の香取慎吾氏も数多くいる芸能人の中の1人という程度の認識。しかし韓国語を流暢に話すチョナン・カンこと草彅剛氏と「特命リサーチ200X」や「催眠」で知的オタクキャラが確立した稲垣吾郎氏には熱い親近感を抱いている。
 
 さて、本作の悪役ぶりは素晴らしい。ジャニーズ事務所は所属タレントのイメージを守り過ぎる傾向が強いので、ジャニーズタレントが出演する映画はつまらないとの批判を映画ファンや友人のレビュアーからよく耳にする。ましてや悪役などトンデモ無いことだろう。
 ところが稲垣吾郎氏は難しい悪役をよくぞこなしてくれた。
 
 悪役というのは簡単ではない。特に勧善懲悪ものの物語ではラストで善玉に滅ぼされて観客たちが溜飲を下げスカッとさせる必要から、憎たらしいほど悪でないといけないのだ。(余談1)
 しかもただワルければ良いというものではない。単発の1時間モノの時代劇ならワガママなバカ殿でもいいのだが、本作のように大掛かりな待ち伏せの仕掛けを用意して、しかも13人も刺客を集めているのだ。そこまでして討たなければならないほどの悪行ぶり、ただのバカなら戦をするまでもなく、市村正親氏扮する有能な側用人が幕府と通じて謀略をめぐらせ厄介な主君を隠居させるだろう。実際、隠居や廃嫡する例はあった。(余談2)

 有能な側用人が忠義を示して刺客たちと戦わなければならないほどの圧倒的存在感と力、更生の余地が無いほど人格障害をきたした暗黒の奸雄を稲垣氏は演じなければならないし、よく演じきった。
 これは稲垣氏のオタクキャラと歴史への理解が功を奏している。
 
(余談1)例えば萬屋錦之助氏の代表時代劇に「破れ傘刀舟」がある。普段は酒飲みの町医者だが理不尽な悪行を目の前にすると義憤を爆発させ、愛用の銘刀同田貫を掴むや単身悪玉の屋敷に乗り込む。ラストの決め台詞は「てめぇら人間じゃねぇ!叩っ斬ってやる!」、悪玉をはじめ子分や家来を皆殺し。

 もし悪玉に少しでもヒューマンな顔を覗かせたら、逆に主人公刀舟が短気で血に飢えた殺人鬼に見えないまでも、皆殺しにする必然性は感じられなくなり、主人公に感情移入できず後味が悪くなるだろう。
 「こんなワルは殺されて当然」と思える悪役でないと、ラストは爽快な気分にならないのだ。
 
(余談2)現実の世界で数百の軍勢を前に13人は少ないのだが、時代劇としては多すぎる。どの物語も悪役も入れてメインキャストは5人から7人くらいに抑えているはずだ。というのも人数が多すぎると、顔と名前を観客が覚えられない。本作でも覚えられるのは13人のうちの5・6人までで、他は「刺客A」「刺客B」の感覚だ。
 
 登場人物が多い「ヤマト」でも、メインは沖田艦長・古代・島・森・アナライザー、それに加えて悪役デスラー総統とヒス副総統でまとまり、他は助演だ。
 戦隊モノが5人なのもそんな法則があっての事なのだ。
 

 ところで市村正親氏が演じた鬼頭半兵衛、やたら藩主松平斉韶への忠義を口にしていたが、実は当時の感覚からもズレている。忠義を尽くす相手はあくまでも明石藩であって、松平斉韶個人では断じてないのが日本型封建制の特色である。明石松平家を守るためには、たとえ藩主であっても無能であれば強制的に隠居させて新しい藩主を据える。
 実際にそれが起こった事件として有名なのが伊達騒動である。藩主伊達綱宗は放蕩三昧だったため叔父の宗勝が諫言したがそれでも放蕩は治らず、やむを得ず親族大名と相談のうえ幕府に訴え、藩主綱宗は20歳そこそこで隠居させられて2歳の嫡子が藩主に就いた。伊達騒動はその後が本番なのだが、ここでは割愛する。

 鬼頭は明石藩御用人役で参勤交代の大名行列の責任者を務めていた重臣、石高は千石、元々は主人公島田新左衛門と同じ幕臣だったが、将軍弟松平斉韶が明石藩主を継ぐにあたって明石藩士になったという設定、つまり幕府から「出向」したような側面もあるので、立場としても感覚としても松平斉韶に対して作中のような忠義を示すのは不自然。あのような大事になれば斉韶個人よりも将軍家の安泰と幕政の秩序を優先させるはずだ。
 
 もっとも稲垣斉韶は人格異常者であって知能障害ではない。鬼頭の忠誠心は斉韶個人への恐怖であると解釈できるし、作中でもそんな事が窺われる描写がある。
 

 
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[ 2010/12/20 12:15 ] 映画・・男優評 | TB(0) | CM(0)
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