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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「パイレーツ・ロック」 絶望から脱出しよう〔32〕 

パイレーツ・ロック」 
海に浮かぶ梁山泊、あるいはシャーウッド。

 
 
  
【原題】THE BOAT THAT ROCKED
【公開年】2009年  【制作国】英吉利 独逸  【時間】135分  【監督】リチャード・カーティス
【原作】
【音楽】
【脚本】リチャード・カーティス

【出演】フィリップ・シーモア・ホフマン(ザ・カウント)  トム・スターリッジ(カール)  ビル・ナイ(クエンティン)  ウィル・アダムズデイル(ニュース・ジョン)  トム・ブルック(シック・ケヴィン)  リス・ダービー(アンガス)  ニック・フロスト(デイヴ)  キャサリン・パーキンソン(フェリシティ)  クリス・オダウド(サイモン)  アイク・ハミルトン(ハロルド)  ケネス・ブラナー(ドルマンディ)  シネイド・マシューズ(ミスC)  トム・ウィズダム(マーク)  ジェマ・アータートン(デジリー)  ジャック・ダヴェンポート(トゥワット)  ラルフ・ブラウン(ボブ)  リス・エヴァンス(ギャヴィン)  タルラ・ライリー(マリアン)  ジャニュアリー・ジョーンズ(エレノア)  アマンダ・フェアバンク=ハインズ(-)  フランチェスカ・ロングリッグ(-)  オリヴィア・ルウェリン(-)  エマ・トンプソン(シャーロット)
  
【成分】笑える 楽しい 知的 切ない コミカル 電波法 ロックンロール 海賊ラジオ イギリス 1966年
        
【特徴】1966年のイギリス、沖合いの公海上に浮かぶ老朽化した中型船舶、24時間ロックンロールを流し続ける海賊ラジオ局である。多くのリスナーに支えられて、個性的なDJたちは政府の弾圧を掻い潜って音楽番組を流し続ける。さながら海に浮かぶ梁山泊、舞台はイギリスだから海上シャーウッドか。
 演じる俳優たちも個性派ぞろい、物語のテンポも良く、些か悲劇的なラストにはなるが暗さは微塵も無く、常に前向きの光に溢れている。まさに晴雨堂好みの秀作。
   
【効能】意気消沈したとき、人生に絶望したとき、未来が明るくなる。
 
【副作用】ただの軽薄な馬鹿騒ぎにしか見えず白ける。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
漫画大国日本の梁山泊も危機にある。
 
 梁山泊・・・、腕におぼえある個性的な仲間たちが集い、官憲の力が及ばない山奥を拠点に、民衆を苦しめる国家権力に対して反旗を翻し闘う。子供のころ、そんな物語にワクワクしながら観たものだ。イギリスにも同様の物語がある。ロビン・フッドが活躍するシャーウッドの森だ。
 
 本作はさながら海に浮かぶマス・メディア界の梁山泊かシャーウッドのようなものだ。老朽の中古船舶の内装をラジオ局に改装して公海上に浮かべ、国家権力が許可しない番組を自由に放送する。法の規制を避けるためか、常に公海上に留まって寄港しないので、アクセスは支持者の漁船を使って出入りする。おそらく必要な機材やレコードや食糧の搬入も漁船を使っているのだろう。
 船には一癖も二癖もあるDJやスタッフが10名ほどそれぞれラジオ番組を受け持ち、当時放送を制限されていたロックンロールを24時間流す。リスナーは子供や中高生から20代の若者が中心、単なるリスナーというよりは支持者といった感じだ。
 
 船長兼ラジオ局代表は初老の分別ありそうな紳士クエンティン、若い頃はやんちゃしていたであろう過去があからさまではないが滲み出ている。物語はそのクエンティンの知人女性(あるいは元恋人?)の息子がドラッグと喫煙で高校を退学処分となり、更生のために隔絶した海賊ラジオ局に住み込むところから始まる。
 
 時代は1966年というから、私が生まれた年だ。この時代の事は直接は知らない。しかし私が中高生になった頃、60年代に青春をおくった若者たちが兄貴分・姉貴分となって流行った音楽や漫画やアニメや特撮やサヨク思想やらを教えてくれたものだ。
 特に60年代ロックは聴く機会が多かった。これは今TVで流れているCMのBGMに80年代に流行ったポップスが使用されているのと似ている。80年代に青春をおくった人が30代後半から40代になってCM制作の中枢に位置するようになったのと同じように、私が中高生時代では60年代に青春を過ごした人たちが40歳前後だった。
 だから、海賊ラジオ局で流れるサウンドは懐かしい。
 
 物語の舞台は男臭いが梁山泊やシャーウッドよりお洒落で平和的でコメディぽい。ちょうど「カルフォルニア物語」時代の吉田秋生氏か、「こいきな奴ら」時代の一条ゆかり氏が描きそうな内容かもしれない。これは少女漫画に相応しいネタだ。(余談1)
 
(余談1)日本でパイレーツ・ロックに似たものがあるとしたら、それは質・量ともに世界一の規模を誇る漫画同人誌即売会を運営するコミック・マーケット準備会だろう。
 過去、何度も頑迷で狭量で無知と偏見にまかせた悪書追放運動の攻撃を受けながらも、自由な創作発表の場を守ってきた。ちょうど、海賊ラジオ局代表のクエンティンのように周囲に目配りしながら。
 
 いま東京都では青少年や児童を守るという大義名分で幾らでも規制拡大が可能な漫画規制条例がつくられ、規制派はさらなる強化を目論んでいる。「パイレーツ・ロック」でも、官憲は新法をつくって非合法化し潰そうとする場面がある。それと同じだ。
 今でこそ、手塚治虫氏や宮崎駿氏の漫画やアニメが国際的に評価され、それを受けて体制権力や保守も若干は好意的に扱うようになった。が、官憲や悪書追放派は決定的な思い違いをしている。
 何も無いところから手塚治虫や宮崎駿が突然わいてきたのではない、彼らの背後には多くのパイレーツ・ロックのような存在があったからこそ出現できたのである。
 
 環境保護にしても、鴇を何羽か保護すればそれでOKか? 雷鳥を何羽か保護すれば大丈夫か? 否! 鴇や雷鳥が生息できる生態圏を丸ごとセットで守らなければ、少しだけの延命で終わる。
 裾野を焼き払ってしまっては、活力を失い滅んでいく。ゆくゆくは日本の文化や経済も活況を奪うことになる。そういう想像力を働かすことができない輩が歴史的にも常に社会を混乱させてきた。
 


晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
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パイレーツ・ロック オリジナル・サウンドトラック
 

 
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あらすじ1966年、イギリス。ラジオが流すポピュラー・ミュージックは1日45分。そんな中、海の上から24時間ロックをかけるゴキゲンな海賊ラジオ局が現れた・・・。感想下ネ...
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