「冒険者たち」
青春の黄昏を映した美しい作品 【原題】LES AVENTURIERS
【英題】THE LAST ADVENTURE
【公開年】1967年
【制作国】仏蘭西
【時間】110分
【監督】ロベール・アンリコ【原作】ジョゼ・ジョヴァンニ 【音楽】フランソワ・ド・ルーベ
【脚本】ロベール・アンリコ ジョゼ・ジョヴァンニ ピエール・ペルグリ
【言語】フランス語
【出演】アラン・ドロン(マヌー)
リノ・ヴァンチュラ(ローランド) ジョアンナ・シムカス(リティティア) セルジュ・レジアニ(パイロット)
【成分】楽しい 悲しい 勇敢 切ない かっこいい 黄昏 60年代 フランス コンゴ動乱
【特徴】青春の黄昏を感じさせる作品。宝探しにワクワクする
アラン・ドロン氏と
リノ・ヴァンチュラ氏とジョアンナ・シムカス氏の牧歌的雰囲気が切なく、赤道直下の大西洋の眩しい太陽と抑揚の無い淡々としたテーマ曲がお洒落でマッチしている。
【効能】バカをやって無為に過ごしていた頃のほろ苦い青春の日々がよみがえる。
【副作用】単なる山師3人組の低次元冒険に呆れる?
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
左翼系友人が酷評した映画 私は作品よりも先に映画音楽のほうを聴いた。最初の印象は何て単調で地味な音楽、何で唐突に口笛が入るのか? 映画音楽って「太陽がいっぱい」のように感動的な曲を使うものと思っていたのに、これは単なるBGMやないか。というものだった。
実際に映画を観ると、青春の最後の輝きを生きる3人の主人公にぴったりの曲だった。照りつける太陽が眩しい赤道直下の大西洋で、飄々としたムードで宝捜しをする3人など、映像と合わせてみると、実に映える映画音楽だった。漫画家の一条ゆかり氏あたりが描いたらマッチしそうな作品である。
しかし、左翼思想に傾倒した友人に言わせると、ボロンチョンである。「単なる3人の山師の物語やないか」「財宝はコンゴ人民から搾取したものだ。ヒロインの縁者に所有権は無い。コンゴ人民に返すべきだ」「こんなつまらん山師たちを『
冒険者たち』とは片腹痛い」などなど。
友人のご高説、理屈はもっともだし、「冒険」(余談1)については私も同意見だが、だからこの作品を全否定することには同調できない。というより、友人の論には少々カチンときたものだった。思想的に立派な主人公と悪辣な敵役の二元論構成の映画だけでは世の中窮屈で辟易する。社会の暗部を照らす映画ばかりでは気が滅入る。
もし3人の主人公がコンゴの民衆に宝物を返したら、それはまた3人の志や考え方からして、ありえないだろうし「現実的」でない。また、コンゴは日本にとっては遠く馴染みの無い国だが、フランスにとってはアフリカ諸国の動向というのは常に時事問題で取り上げられるネタであることが、この映画で判る。それで良いのではないか。
「スター」になることを夢見た平凡な3人の青春の残像というか残滓が放つ光ともいえる青春映画の佳作である。
(余談1)冒険というのは定義がある。
一「死の危険がある」
この条件を抜かして、単なるスリルを味わうものであれば、ホラー映画を観るだけでも冒険になる。
二「主体性がある」
徴兵で戦地に行くことは死の危険があるが、自分の意志ではない。兵隊は冒険家ではない。
三「歴史上初の快挙である」
誰もやったことが無いのが重要。いま南極点に到達しても、それは個人レベルでは意味があるが、人類史上云々の意味は無い。
四「社会的意義」
公共の利益があること。
最低でも、一と二は冒険の条件として必要。映画の3人は一攫千金を狙って最低レベルの冒険を不本意ながらやってしまう羽目になった。といえる。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆佳作 晴雨堂関連作品案内冒険者カミカゼ [DVD] 鷹森立一
千葉真一・秋吉久美子・真田広之の3氏による、リメイクというよりはパロディーといった感じの作品。軍艦島でのロケが新鮮。
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左翼系友人が酷評した映画 私は作品よりも先に映画音楽のほうを聴いた。最初の印象は何て単調で地味な音楽、何で唐突に口笛が入るのか? 映画音楽って「太陽がいっぱい」のように感動的な曲を使うものと思っていたのに、これは単なるBGMやないか。というものだった。
実際に映画を観ると、青春の最後の輝きを生きる3人の主人公にぴったりの曲だった。照りつける太陽が眩しい赤道直下の大西洋で、飄々としたムードで宝捜しをする3人など、映像と合わせてみると、実に映える映画音楽だった。漫画家の一条ゆかり氏あたりが描いたらマッチしそうな作品である。
しかし、左翼思想に傾倒した友人に言わせると、ボロンチョンである。「単なる3人の山師の物語やないか」「財宝はコンゴ人民から搾取したものだ。ヒロインの縁者に所有権は無い。コンゴ人民に返すべきだ」「こんなつまらん山師たちを『
冒険者たち』とは片腹痛い」などなど。
友人のご高説、理屈はもっともだし、「冒険」(余談1)については私も同意見だが、だからこの作品を全否定することには同調できない。というより、友人の論には少々カチンときたものだった。思想的に立派な主人公と悪辣な敵役の二元論構成の映画だけでは世の中窮屈で辟易する。社会の暗部を照らす映画ばかりでは気が滅入る。
もし3人の主人公がコンゴの民衆に宝物を返したら、それはまた3人の志や考え方からして、ありえないだろうし「現実的」でない。また、コンゴは日本にとっては遠く馴染みの無い国だが、フランスにとってはアフリカ諸国の動向というのは常に時事問題で取り上げられるネタであることが、この映画で判る。それで良いのではないか。
「スター」になることを夢見た平凡な3人の青春の残像というか残滓が放つ光ともいえる青春映画の佳作である。
(余談1)冒険というのは定義がある。
一「死の危険がある」
この条件を抜かして、単なるスリルを味わうものであれば、ホラー映画を観るだけでも冒険になる。
二「主体性がある」
徴兵で戦地に行くことは死の危険があるが、自分の意志ではない。兵隊は冒険家ではない。
三「歴史上初の快挙である」
誰もやったことが無いのが重要。いま南極点に到達しても、それは個人レベルでは意味があるが、人類史上云々の意味は無い。
四「社会的意義」
公共の利益があること。
最低でも、一と二は冒険の条件として必要。映画の3人は一攫千金を狙って最低レベルの冒険を不本意ながらやってしまう羽目になった。といえる。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆佳作 晴雨堂関連作品案内冒険者カミカゼ [DVD] 鷹森立一
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友人さんのご意見、たしかにごもっとも。
そういう見方もありますね。
私も彼らがどうやってコンゴ行きの資金を捻出したのかとか、
海に葬られるレティシアがマネキンに見えるとかが凄く気になりますが、
そんなうるさいこと言わずに、楽しんで観るべき映画だと思います。
「冒険者カミカゼ」面白いんでしょうか?
あまり食指が動きませんが。