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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ゲシュタポ卍(ナチ)死霊軍団 カリブゾンビ」 孤独を楽しむ時に〔48〕 

ゲシュタポ卍(ナチ)死霊軍団 カリブゾンビ」 
ピーター・カッシング出演の
格調高いB級ゾンビ映画。


カリブゾンビ.gif
日本未公開・未ソフト化 

【原題】SHOCK WAVES
【公開年】1976年  【制作国】亜米利加  【時間】86分  
【監督】ケン・ウィダーホン
【原作】
【音楽】
【脚本】

【出演】ピーター・カッシング(SS指揮官)  ブルック・アダムス(ローズ)  フレッド・ブッチ(-)  ジャック・デビットソン(ノーマン)  ルーク・ハルピン(キース)  D・J・シドニー(-)  ドン・スタウト(ダブ)  ジョン・キャラダイン(船長)  クレランス・トーマス(釣り人)

【成分】パニック 不気味 絶望的 ナチスドイツ 武装親衛隊 ゾンビ ホラー 熱帯ジャングル 廃墟 カリブ海 1970年代  

【特徴】似た様な邦題のB級ゾンビ映画に「ナチス・ゾンビ 吸血機甲師団」があるが、本作のほうが作りはしっかりしている。血飛沫や臓物ズルズルの残酷描写に慣れてしまっているホラーファンには地味でインパクトの無い場面が延々続いて退屈かもしれないが、私は無闇に派手な残酷描写に走らない上品なホラー映画に見える
 本作のゾンビはナチスドイツが開発した水陸両用不死身の改造人間という設定なので、ゾンビ役の俳優たちは常に無表情で泡を出さずに水中を闊歩したり仰向けに寝ていたりと肺活量が要求される演技を有能にこなしている。また武装親衛隊の制服と大きなゴーグルが不気味さと格調の高さを印象付ける。
 さらに、なんとイギリスホラー映画界の大御所ピーター・カッシング氏がそれらゾンビ兵士を管理する元武装親衛隊指揮官の役で登場する。カッシング氏の存在が低予算ゾンビ映画の質を数倍にあげているような感がして面白い。そのうえ、西部劇の大御所ジョン・キャラダイン氏が第一殺され役として出演、贅沢な作品だ。

【効能】血飛沫・飛び散る臓物が登場しない上品なゾンビ映画が夜の静けさを引き立てる。ピーター・カッシング氏の存在に儲けた気分になる。

【副作用】平板で地味な展開に退屈する。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
英国ホラーの大御所ピーター・カッシング
西部劇の大御所ジョン・キャラダインが共演! 
贅沢なB級ゾンビ映画。


 似たような邦題の作品で「ナチス・ゾンビ 吸血機甲師団」がある。奇しくも邦題の音韻と第二次大戦中のドイツ軍の軍服を着たゾンビといった具合に共通キーワードがあるが全く関係ない。本作のほうが作りがしっかりしている。
 出演俳優もジョン・フォード監督の西部劇で有名なジョン・キャラダイン氏とイギリスのドラキュラ映画で御馴染みピーター・カッシング氏の共演と、超贅沢。ヒロインは下積み時代といっても良いのだろうか、映画デビューしたてのブルック・アダムス氏が黄色いビキニ姿で登場する。(余談1)

 「ナチス・ゾンビ」では顔を簡単に青く塗っているだけだが、「カリブゾンビ」では地味ながら丁寧なメイクだ。
 第二次大戦末期、ナチスドイツは戦況を好転させるため生身の兵士を不死身の水陸両用殺人兵器に改造、ところが実戦に投入したゾンビ兵士のコントロールが利かなくなり味方兵士まで殺すようになったので船でカリブ海まで運び沈没させて封印、しかし戦後30年経って地殻変動で沈没地点の海底が隆起し、殺人ゾンビが時おり周辺の陸地に出没するようになった、という設定である。
 長い間、海底で暮らしていたので顔面蒼白、皮膚がふやけて微妙に皺だらけ、髪の毛は脱色してプラチナブロンド、しかしロメロ監督らのゾンビと違ってあくまで改造人間なので生物としての生活力はあるようだ。また紫外線に弱く、強い日光が目に入ると脳が破壊されて死んでしまうため昼間はゴーグルを付けている。(余談2)

 かなりむかしに深夜のTV番組で観たので、よく憶えていない。たしか冒頭は唯一の生存者であるヒロインがボートで漂流しているところを助けられるか、あるいはSSゾンビが海底でブロンドの髪を揺らせながら普通に歩いている場面か、どちらかが冒頭だったように思う。
 海底を歩くシーンはけっこう長まわしで撮っていたように思うので、演じている俳優は肺活量が要求されて大変だったろう。しかも海パンやウエットスーツではなく、武装親衛隊の制服をきっちり着こなして演技するから動きにくかったと思う。不死身のゾンビなので、少しでも苦しそうな顔はできない。常に無表情。

 物語はある数名の男女がカリブ海の島巡りツアーを行うところから展開していく。クルーザーの老船長にジョン・キャラダイン氏が扮する。
 ところが事故で船は漂流、さらに幽霊船のような難破船が浮かび上がって衝突、クルーザーは大破して航行不能。幸か不幸か眼前に島が見える。止むを得ず一行は島に上陸。島の奥にはセレブの別荘かクラシックな高級ホテルのような白い建物が見え、そこを避難場所に定めた。中に入ると数十年も手入れしていないような廃屋。人の気配は無い。

 やがて一行は1人ずつ殺されていく。最初の被害者は泳ぎが達者のはずの老船長、疑心暗鬼になっていく中、奇妙な人々の存在に気が付く。顔面は蒼白でふやけたような皮膚、透き通るようなプラチナブロンドの髪、常夏のカリブの島なのに黒っぽいナチスドイツの武装親衛隊の制服を着た無表情の人々。
 誰もいないと思っていた廃墟には1人の老人が住んでいた。ピーター・カッシング氏扮する元SS指揮官である。彼の部屋には古ぼけてはいるが比較的綺麗なハーケンクロイツが飾られ、現役のナチ幹部として戦後30年もこの島で潜伏していたのだ。彼から驚愕の人間兵器の話を聞く。
 果たして主人公たちは生きて島から脱出できるのか? しかし冒頭で生存者は1人だけと判っているので、あとは全員カリブゾンビの餌食となる。 

 近年のゾンビ映画と違って、腹を噛み裂き内臓を引きずり出す残酷場面は皆無だ。幽霊のようにフラリと海から姿を現し、必殺仕事人のようにゆっくりと獲物に近づき、テキパキと首や頭を抑えて溺死させるだけ。無表情の蝋細工のような顔、黒っぽいナチスドイツのSS制服、大きなゴーグルが他のゾンビ映画に無い不気味さと上品さを加えている。
 SS指揮官のピーター・カッシングがまた似合っていて、彼の存在だけでB級ゾンビ映画が格調高い正統派ホラーに見えてしまう。

(余談1)「ナチス・ゾンビ」でゾンビたちが着用していたのはドイツ国防軍陸軍の軍服、「カリブゾンビ」ではナチス武装親衛隊の制服を着ている。

 ジョン・キャラダイン氏は西部劇の大御所俳優だ。ご子息には「燃えよ!カンフー」「キル・ビル」で有名なデビット・キャラダイン氏がいる。
 ピーター・カッシング氏は英ホラー界の大御所。50年代~70年代にかけてのドラキュラ映画には必ずといっても良いくらい、バンパイアハンターのヴァン・ヘルシング教授役で登場する。本作の後か前かは知らないが、「スター・ウォーズ」のモフ・ターキン総督に扮する。シャーロック・ホームズ役も素晴らしかった。

(余談2)ソンビが着ているSSの制服は通常の素材のようなので、30年も赤道付近の海水に浸かっていたらかなり損傷すると思うのだが。特に腰につけた弾帯や脚のジャックブーツなどは牛革なのでボロボロになって原形をとどめていないはず。
 フィリピン・ルパング島で戦後30年も潜伏していた小野田寛郎少尉の姿を見れば30年の時の長さが判る。小野田少尉が戦時中に着用していた軍服はボロボロになっていて、「武装解除」に応じたときは地域住民の衣服を盗って軍服にアレンジしたものを着用していた。革製の弾帯もところどころ千切れていて補修してあった。 
 本作のカリブゾンビの場合、人を殺す以外に必要な兵士としての技術や知識があったのだろうか? 作中では生きている人を見つけると、必殺仕事人みたいに近寄って首を絞めたり水につけて溺死させるだけだが、戦争中はたぶん銃器も扱っていたので兵士としての基礎的な動作はできたかもしれない。
 あるいはゾンビ兵士用に特別な素材で仕立てた軍服を着きていたとか。
 それから肩章には赤い兵科色が確認できる。陸軍なら砲兵だったと思うが、ゾンビ兵士たちも大砲を扱ったのだろうか?

 またお約束のサービス場面とはいえ、ブルック・アダムス氏が美しいビキニ姿で茶色く濁った川を泳ぐ場面は少し違和感。あんな状況であんな汚いところをよく水泳を楽しめるものだ。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作


 


 
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