「私は猫ストーカー」
猫が居る穏やかな町の風景を楽しもう。 【原題】【公開年】2009年
【制作国】日本国
【時間】103分
【監督】鈴木卓爾 【原作】浅生ハルミン 【音楽】蓮実重臣
【脚本】黒沢久子
【出演】星野真里(ハル) 江口のりこ(真由子) 宮崎将(鈴木) 品川徹(猫仙人) 諏訪太朗(僧侶らしい男) 寺十吾(編集者) 岡部尚(健吾) 瀬々敬久(植木に水をやる男) 黒沢久子(猫に餌をやっている女) 麻生美代子(大家) 徳井優(古本屋の主人)
坂井真紀(古本屋の奥さん)
【成分】楽しい かわいい 古本屋 猫
【特徴】タイトル負けしていない。タイトルに違わない猫映画である。穏やかな町の風景、猫がどっしりと鎮座する古本屋、晴雨堂好みの知的空間である。
低予算の良さ、自主制作風の良さを出しているので、映画としての味付けは極めて薄い。多くの映画ファンには退屈に見えるだろう。
【効能】猫のいる穏やかな知的空間に心が癒される。
【副作用】メリハリを感じないので退屈になり、時間と金銭の浪費感を味わう。脚色過多で猫を十分堪能する事ができず不満が生じる。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
古本屋猫額洞は私の理想空間だ。 私も連れあいも猫好きなのでけっこう盛り上がった。映画の舞台となった町のノンビリとした風情、主人公のバイト先の古本屋猫額洞の知的空間と赤い座布団に鎮座する肥えた猫、飄々と野良猫に餌をやる猫オバサンならぬ猫仙人、町を闊歩する多くの野良猫エキストラ。郷里にそんな空間をつくるのが私の夢である。
主人公は猫好きの少女ハル、イラストレータが本業のようだか、それだけでは食べてゆけないので古本屋のバイトをしている。(余談1)彼女はまだ暗い早朝に家を出て、猫を求めて散策する。猫を見つけると這うように近づき写真を撮る。
「おお、俺がよくやる事やんけ」私たち夫婦も以前は早朝散歩のついでに猫写真を撮っていた。ハルを演ずる
星野真里氏は愛らしい女の子だから良いが、私の場合は中年のオッサンなので単独だと間違いなく下着泥棒の変質者と誤解される。傍らには連れ合いが居なくてはならない。
ハルに懸想する茶色のダッフルコートの青年、猫額洞で本を物色する振りをしながらハルの近くに長時間居座ったり、街中で偶然を装って出会えば目当ての文芸書を店員のハルに尋ねる体を装って話しかける。話し出すと文芸書や小説家の薀蓄が長い。ハルにとってはやや鬱陶しそう。
「うわぁ、あんたソックリやん。相手がどんだけ白けてんか、引いてるんか、よう判るやろう」と連れ合いは勝ち誇った表情で私を批判する。
猫額洞の看板猫チビトラが失踪する。店主の妻は半狂乱。優しい夫にあたりちらす。夫の何気ない仕草や言葉の端々を想像力豊かに極端な拡大解釈して憶測による実像とはかけ離れたマイナス評価をして罵る。
「おまん、そのものやんけ」とすかさず私が指摘すると、意外に連れ合いは素直に認めた。
猫額洞の全員と猫仙人で手分けして探すがチビトラはついに帰ってこなくなった。古本屋の奥さん演ずる
坂井真紀氏、すっかり女優になった。
本作品、テーマがテーマだけに世間一般が面白いと思う映画にはつくり難い。制作陣も最初から低予算の昔の8ミリ映画の自主作品風を意識して観客にアピールしている。冒頭の若干露出オーバー気味の手ブレが多い映像がそれだ。
構成は、いつも同じ服装の少女ハルが猫ストーカーをやっている場面をメインに、バイト先の古本屋夫婦のエピソード、ハルに林檎を送る林檎農園の元カレ、ハルに想いを寄せるダッフルコートの青年、黒トンビの怪しい僧侶、猫仙人などの話を絡め、猫ストーカーに始まり、いつもの猫ストーカーでラストになる。
方向性は正しいと思う。下手に脚色すると「グーグーだって猫である」のように味付け過多になって猫映画から逸脱するからだ。私の好みを言うと、もう少し脚色臭を落としてほしかった。
濃い味の映画が好みの方には、映画らしくなくてつまらなく見えるだろう。さすがの私も映画館へ行ってまで観ようとは思えなかった。上映映画館も限られていて、チケット代と交通費を考えると安く見積もっても5千円の出費となる。ジブリの最新作なら徒歩で行ける映画館でレイトショー1200円で済む事を思えば、家計の圧迫度が痛い。DVDで十分だ。
(余談1)あの規模の古本屋に2人もバイト店員を置くのはデフォルメが過ぎる。店主夫婦だけで十分だろう、というよりバイトを雇う余裕は無いはず。
むかし付き合っていた女性が大きな古本屋に勤めていた。将来、自分の古本屋を立ち上げたいと修行のため入社した。2人で古本屋をやろうと誘われていたのだが、当時の私は別の事に興味があったし、片道500キロの遠距離交際だったので、結局わかれた。
「もう、あなたは大阪に根が生えてしまったんだね」と少し棘のある寂しそうな語調だった。もし私が大学出たての若者だったら、後先考えずチャリンコに身の回りのモノを積んで彼女の元へ飛び込んだだろうけど。
いや、その気が無かったんやな。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作 晴雨堂関連書籍案内私は猫ストーカー 浅生ハルミン
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古本屋猫額洞は私の理想空間だ。 私も連れあいも猫好きなのでけっこう盛り上がった。映画の舞台となった町のノンビリとした風情、主人公のバイト先の古本屋猫額洞の知的空間と赤い座布団に鎮座する肥えた猫、飄々と野良猫に餌をやる猫オバサンならぬ猫仙人、町を闊歩する多くの野良猫エキストラ。郷里にそんな空間をつくるのが私の夢である。
主人公は猫好きの少女ハル、イラストレータが本業のようだか、それだけでは食べてゆけないので古本屋のバイトをしている。(余談1)彼女はまだ暗い早朝に家を出て、猫を求めて散策する。猫を見つけると這うように近づき写真を撮る。
「おお、俺がよくやる事やんけ」私たち夫婦も以前は早朝散歩のついでに猫写真を撮っていた。ハルを演ずる
星野真里氏は愛らしい女の子だから良いが、私の場合は中年のオッサンなので単独だと間違いなく下着泥棒の変質者と誤解される。傍らには連れ合いが居なくてはならない。
ハルに懸想する茶色のダッフルコートの青年、猫額洞で本を物色する振りをしながらハルの近くに長時間居座ったり、街中で偶然を装って出会えば目当ての文芸書を店員のハルに尋ねる体を装って話しかける。話し出すと文芸書や小説家の薀蓄が長い。ハルにとってはやや鬱陶しそう。
「うわぁ、あんたソックリやん。相手がどんだけ白けてんか、引いてるんか、よう判るやろう」と連れ合いは勝ち誇った表情で私を批判する。
猫額洞の看板猫チビトラが失踪する。店主の妻は半狂乱。優しい夫にあたりちらす。夫の何気ない仕草や言葉の端々を想像力豊かに極端な拡大解釈して憶測による実像とはかけ離れたマイナス評価をして罵る。
「おまん、そのものやんけ」とすかさず私が指摘すると、意外に連れ合いは素直に認めた。
猫額洞の全員と猫仙人で手分けして探すがチビトラはついに帰ってこなくなった。古本屋の奥さん演ずる
坂井真紀氏、すっかり女優になった。
本作品、テーマがテーマだけに世間一般が面白いと思う映画にはつくり難い。制作陣も最初から低予算の昔の8ミリ映画の自主作品風を意識して観客にアピールしている。冒頭の若干露出オーバー気味の手ブレが多い映像がそれだ。
構成は、いつも同じ服装の少女ハルが猫ストーカーをやっている場面をメインに、バイト先の古本屋夫婦のエピソード、ハルに林檎を送る林檎農園の元カレ、ハルに想いを寄せるダッフルコートの青年、黒トンビの怪しい僧侶、猫仙人などの話を絡め、猫ストーカーに始まり、いつもの猫ストーカーでラストになる。
方向性は正しいと思う。下手に脚色すると「グーグーだって猫である」のように味付け過多になって猫映画から逸脱するからだ。私の好みを言うと、もう少し脚色臭を落としてほしかった。
濃い味の映画が好みの方には、映画らしくなくてつまらなく見えるだろう。さすがの私も映画館へ行ってまで観ようとは思えなかった。上映映画館も限られていて、チケット代と交通費を考えると安く見積もっても5千円の出費となる。ジブリの最新作なら徒歩で行ける映画館でレイトショー1200円で済む事を思えば、家計の圧迫度が痛い。DVDで十分だ。
(余談1)あの規模の古本屋に2人もバイト店員を置くのはデフォルメが過ぎる。店主夫婦だけで十分だろう、というよりバイトを雇う余裕は無いはず。
むかし付き合っていた女性が大きな古本屋に勤めていた。将来、自分の古本屋を立ち上げたいと修行のため入社した。2人で古本屋をやろうと誘われていたのだが、当時の私は別の事に興味があったし、片道500キロの遠距離交際だったので、結局わかれた。
「もう、あなたは大阪に根が生えてしまったんだね」と少し棘のある寂しそうな語調だった。もし私が大学出たての若者だったら、後先考えずチャリンコに身の回りのモノを積んで彼女の元へ飛び込んだだろうけど。
いや、その気が無かったんやな。
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☆☆ 可
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