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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「十三人の刺客」 ストレス解消活劇〔77〕 

十三人の刺客」 稲垣吾郎の悪役は見事!
 
 

【原題】
【公開年】2010年  【制作国】日本国  【時間】141分  【監督】三池崇史
【原作】池宮彰一郎
【音楽】遠藤浩二
【脚本】天願大介
【出演】役所広司(島田新左衛門(御目付七百五十石))  山田孝之(島田新六郎(新左衛門の甥))  伊勢谷友介(木賀小弥太(山の民))  沢村一樹(三橋軍次郎(御小人目付組頭))  古田新太(佐原平蔵(浪人))  高岡蒼甫(日置八十吉(御徒目付))  六角精児(大竹茂助(御徒目付))  波岡一喜(石塚利平(足軽))  石垣佑磨(樋口源内(御小人目付))  近藤公園(堀井弥八(御小人目付))  窪田正孝(小倉庄次郎(平山の門弟))  伊原剛志(平山九十郎(浪人))  松方弘樹(倉永左平太(御徒目付組頭))  吹石一恵(お艶(芸妓)/ウパシ(山の女))  谷村美月(牧野千世(采女の嫁))  斎藤工(牧野采女(靭負の息子))  阿部進之介(出口源四郎(明石藩近習))  上杉祥三(-)  斎藤歩(-)  井上肇(-)  治田敦(-)  高川裕也(-)  桜井明美(-)  神楽坂恵(-)  内野聖陽(間宮図書(明石藩江戸家老))  光石研(浅川十太夫(明石藩近習頭))  岸部一徳(三州屋徳兵衛(落合宿庄屋))  平幹二朗(土井大炊頭利位(江戸幕府・老中))  松本幸四郎[9代目](牧野靭負(尾張家木曽上松陣屋詰))  稲垣吾郎(松平左兵衛督斉韶(明石藩主))  市村正親(鬼頭半兵衛(明石藩御用人千石))

【成分】スペクタクル 不気味 勇敢 絶望的 かっこいい チャンバラ 時代劇 1844年 日本

【特徴】1963年に公開された工藤栄一監督作「十三人の刺客」のリメイク。原作より大幅に派手さと残酷さを加えたが、集団同士の格闘チャンバラというコンセプト自体は上手く踏襲している。
 役所広司氏の力強い殺陣、松方弘樹氏の時代劇仕込みの華麗な殺陣、伊原剛志氏のキレのある殺陣、山田孝之氏の若々しい殺陣が楽しめる。
 何より、稲垣吾郎氏の悪役は秀逸!

【効能】悪い奴らを斬って斬って斬りまくる様を観てストレス解消。

【副作用】残酷場面があり気分が悪くなる。子供には見せられない残酷描写が目白押し。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
チャンバラに特化した格闘映画。

 チャンバラ時代劇が大好きな人の為の映画である。それ以下でもそれ以上でもない。

 観る人によっては、内容が軽いとか、人間ドラマに欠けている、といった類の注文はあるだろう。しかしこれは鍔迫り合いに特化した作品なので、それ以外の描写はチャンバラを引き立てるためのスパイスに過ぎない。
 性描写に特化したアダルトビデオに人間ドラマが少なかったからといって気にする人はどれだけいるか。逆に人間ドラマが描写され過ぎるとクドくなって敬遠する人もいる。

 さて、佳境のチャンバラに力の大半を割いているので、十三人の同志が集っていく過程は必要最小限にしている。裏切り者も出てこない。葛藤描写も無い。いたって単純。
 チラシには刺客の「軍師」は沢村一樹氏となっているが、単に知的キャラというだけで、軍議にいろいろ意見は言うが、策は殆ど首謀者役所広司氏が練り決裁する。参謀役の松形弘樹氏も伊原剛志氏も役所氏を盛り立てる事に専念、僅かに葛藤心理の描写があったのは役所氏の若い甥を演じる山田孝之氏のみ。
 むしろ稲垣吾郎氏扮する悪の松平斉韶(余談1)の人格障害ぶりを丁寧に描いていた。人間的に単純に描かれ過ぎの善玉十三人に比べれば、むしろ「将軍弟」「藩主」という特殊な環境で精神を病み人格破綻させ、現代の猟奇殺人犯の実像にも通ずる「人間的」に深みある描写かもしれない。また、これがしっかりしていないと善玉の心境描写を最小限にしているので後半のチャンバラ劇に説得力が無い。

 普通に考えたら、たった十三人で三百の軍勢と太刀で斬り合うのはありえないし、刺客となるプロセスも単純、物語全体が荒唐無稽。
 そんな荒唐無稽な世界をリアル風味にしている工夫が随所にある。武家の妻女が眉を剃りお歯黒を塗っている場面。谷村美月氏が演じていることに気付かない観客もいたことだろう。
 男女ともに歌舞伎由来のカツラではなく、自毛の生え際を活かした半カツラを使用。着物の着付けもTV時代劇のように常に糊付バッチリのような綺麗な形ではなく、着崩れや乱れもある。

 そしてラストのチャンバラ、実際の合戦は鉄砲や弓矢によるものが過半数で、後は槍隊による叩き合い突き合いなのだが、本作はチャンバラを楽しむ映画、早々に火薬や弓矢での戦いを諦め役所氏たちは太刀を抜いて鍔迫り合い。
 役所氏は力強い殺陣、松方氏は時代劇仕込みの華麗な殺陣、伊原氏のキレのある殺陣、山田氏の若々しい殺陣を存分に楽しませた後、斬っても斬っても討ち手を繰り出す明石藩の前に次第に消耗し、着衣は血と汗と泥で真っ黒、華麗な刀さばきも棍棒を振り回すような格闘戦になっていく刺客たちが素敵だ。

 稲垣吾郎氏も味がある。白を基調とした上品な衣装で時おり不気味に笑うだけの冷酷な白面の殿様も素晴らしいが、ラストの役所氏との一騎討ちで初めて感情を露にし、泥にまみれながら「一番楽しかった」と言い残す。最期の際になってやっと生きている実感を得た人格障害の君主がよく表現できている。

 私は予算規模と制作目的に適った完成度の高い作品だと思う。一緒に観た連れ合いは「気分悪い」とぼやいていたが。

(余談1)明石藩主松平斉韶は明治元年まで生きた実在の人物だが映画とは関係ない。たしか先代藩主の子供だったはずで、映画のように将軍弟ではない。

 ところで作中の松平斉韶も史実と同じく左兵衛督の官職を名乗っている。これがどれだけ偉いのかというと、通常の大名が得る官職よりランクは上だが、将軍の嫡子や作中で登場する尾張徳川家よりは下。相当官位は四位。
 官位は官職に相当する階級で、将軍の世継や世継候補および徳川御三家は三位、一般の大名は加賀の前田以外は四位が限度で殆どが五位。徳川御三家に準ずる待遇の前田氏でさえも三位には滅多になれない。
 作中の松平斉韶は将軍弟から明石の松平家へ養子に入った設定のようなので、妥当な家格である。将軍になれるかもしれない大名は三位、そうでない大名は四位まで、という線引きが暗黙にあった。

 左兵衛督の仕事は、本来なら帝やその家族を守る役所の長官で、現在の役職で近いのは皇宮警察のトップ皇宮警視監。
 しかし奈良時代で整備完成された律令制の官職は、官職名だけなら明治まで続くが、江戸時代では官職の役割は消えて家格を表すタイトルと化し実体は無い。「福井県知事」のはずの大岡越前守忠相が「警視庁長官」と「東京都知事」を兼任するようなものである。

 市村正親氏扮する鬼頭は、もともと刺客指揮者の島田と同じ数百石取の旗本という設定のようだ。将軍家の人間が他藩へ養子に行くに伴って旗本が家臣となる事がある。同じように、吉宗や慶喜が徳川宗家を継いで将軍になった時、一部の家臣が「旗本」になる例もある。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作


【受賞】シッチェス・カタロニア国際映画祭観客賞 おおさかシネマフェスティバル監督賞

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十三人の刺客 谺雄一郎
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