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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「キング・アーサー」 ストレス解消活劇〔14〕 

キング・アーサー
歴史ファンには興味深い作品
 
 

 
【原題】KING ARTHUR
【公開年】2004年  【制作国】亜米利加 愛蘭 英吉利  【時間】126分  
【監督】アントワーン・フークア
【音楽】ハンス・ジマー
【脚本】デヴィッド・フランゾーニ
【言語】イングランド語 一部ラテン語 ゲール語
【出演】クライヴ・オーウェン(アーサー)  キーラ・ナイトレイ(グウィネヴィア)  ヨアン・グリフィズ(ランスロット)  ステラン・スカルスガルド(セルディック)  スティーヴン・ディレイン(マーリン)  マッツ・ミケルセン(トリスタン)  ジョエル・エドガートン(ガウェイン)  ヒュー・ダンシー(ガラハッド)  レイ・ウィンストン(ボース)  レイ・スティーヴンソン(ダゴネット)  ティル・シュヴァイガー(シンリック)  イヴァノ・マレスコッティ(ゲルマヌス)
          
【成分】スペクタクル 勇敢 切ない かっこいい ローマ史劇 ブリタニア 5世紀
      
【特徴】エクスカリバーや魔女が登場するヒロイックファンタジーではない。近年の考古学調査で定説になりつつあるアーサー王像を元に映画化。ここでは中世のアーサー王ではなく、ローマ時代末期の将軍アーサーが登場する。
 5世紀ごろのローマ帝国を描写した、ローマ史劇としては珍しい内容となっている。
 
【効能】歴史好きにとってはワクワクする内容。矢を射るキーラ・ナイトレイ氏の姿に萌え。
 
【副作用】ヒロイックファンタジーを期待して観ればガッカリする。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
5世紀のローマ帝国を描写した珍しい映画
 
 一応スペクタクル時代劇だが、これまでの「ベン・ハー」「スパルタカス」「エル・シド」「ブレイブハート」など、過去の大合戦劇に比べて特にスバ抜けて迫力がある訳ではない。
 また従来の「アーサー王」モノと違って魔法やエクスカリバーが登場するヒロイックファンタジーでもない。だから、物足りなさを感じた人は大勢いたと思う。特に「ロード・オブ・ザ・リング」のような雰囲気を期待していた人には裏切られた感を持ったかもしれない。
 
 歴史ファンには興味深い映画である。ローマ史劇は数多く製作されているが、殆どが紀元前1世紀のシーザーの時代から紀元後2世紀の「グラディエーター」の時代までである。ゲルマン民族の大移動時の4世紀から6世紀にかけてのヨーロッパを舞台にした映画は日本ではお目にかかれない。(余談1)
 
 ハドリアヌスの長城がCG無しに復元、入浴の習慣が無くなった頃のローマ人の中世ぽい不潔さ、4世紀から5世紀にかけてのローマ軍の軍装、ウォードたちが話すケルト語? 1世紀のローマ軍と戦ったブリテン島の女王ボウディッカを彷彿させるキーラ・ナイトレイ氏、当時のゲルマン人の姿を再現したサクソン人たち。(余談2)
 当時のキリスト教内部の対立、被支配民族ケルトと支配民族のローマ人、新たな支配者のゲルマン支族サクソン人の関係。歴史好きには面白い時代である。
 ここまで金をかけてセットを組んだのなら、もっと踏み込んで、主人公のアーサー達はラテン語台詞を、ヘンドリックはドイツ語発音まるだしの古代英語で全編通して欲しかった。また、ラストのお涙頂戴シーンは平凡すぎて感動できない。もう少し民族問題を明確にして欲しいところだ。でないとアーサー王誕生がイマイチ判りづらいかもしれない。
 
 アーサー王の伝説も、もともとは中世の話ではなく、5世紀にブリテンからローマ軍が撤退したあと、ローマ化した原住民たちが次々と来襲するサクソン人らに抵抗した物語が元になっている説が有力になりつつある。
  
(余談1)学校の世界史の授業では5世紀末にゲルマン人によって西ローマ帝国が滅ぼされたことになっている。しかし実際はローマ帝国の国会にあたる元老院は6世紀まで存続していた。
 その頃までは大量の記録文書を作成していたはずだが、ゲルマン人の略奪などで散逸して殆どが消滅。中世暗黒時代の到来である。したがって、この時代の情報量は少ない。

(余談2)ハドリアヌス帝はスコットランドとイングランドの国境線辺りに万里の長城のミニサイズのような城壁を造った。
 3世紀のカラカラ帝の大浴場が示すように、ローマ人は入浴好き温泉好きだったが、4世紀にキリスト教がローマ帝国を支配するにつれて肌を見せない習慣が定着し、それとともに3世紀後半には入浴も廃れた。
 「ベン・ハー」などに登場するローマ軍は四角い盾をもっているが、4世紀以降は丸い盾に十字にギリシャ語で救世主を表す文字を書く。冒頭の場面で出てくるローマ軍兵士が持っている盾がそれである。
 確認はしていないが、ケルト族の風習で戦で青い化粧をほどこすのがあるそうだ。「ブレイブハート」でも主人公ウォレス達が顔に青い化粧を塗っている。ブリタニアの女王ボウディッカは2世紀の歴史家タキトスの著作に登場。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
晴雨堂関連作品案内
キング・アーサー・オリジナル・スコア(CCCD) サントラ
ANIMEX 1200シリーズ 76 組曲 円卓の騎士物語 燃えろアーサー TVサントラ
エクスカリバー [DVD] ジョン・ブアマン
 
晴雨堂関連書籍案内
キング・アーサー (竹書房文庫) フランク・トンプソン
アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル ローズマリ・サトクリフ
アーサー王伝説 (「知の再発見」双書) アンヌ・ベルトゥロ
図説アーサー王伝説事典 ローナン・コグラン
「ケルト神話」がわかる ダーナの神々、妖精からアーサー王伝説まで 森瀬繚
 

 
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