「ソナチネ」 孤独な少女の物語。
(未ソフト化)
【原題】SONATINE
【公開年】1984年
【制作国】加奈陀
【時間】91分
【監督】ミシュリーヌ・ランクト 【音楽】フランソワ・ランクト
【脚本】ミシュリーヌ・ランクト【言語】フランス語
【出演】パスカル・ビュシエール(シャンタル) マルシア・ピトロ(ルイゼット) ピエール・フォト(バスの運転手)
【成分】悲しい 絶望的 切ない 悩める10代 仏語 モントリオール
カナダ ケベック州 【特徴】カナダ・フランス語圏の大都市モントリオールを舞台にした危うい孤独な思春期の少女が突き進んでしまう危険なゲーム。冒頭で2人の少女が「
ソナチネ」と笑いながら朗らかに言う。ラストは辛い。
【効能】女性の中には思春期時代の自分が見え、男性は少女の危うい琴線に触れたような気になる。
【副作用】暗いどんよりとした冬の様な冷たさを感じる。日本ではビートたけし氏の「
ソナチネ」と間違える恐れがある。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
クラスメイトを思い出す。 日本では北野武監督の「
ソナチネ」が有名だが、この
カナダ作品のほうが北野作品よりも10年ほど前に公開されているので「本家」だ。内容も雰囲気も全く違う。
この「
ソナチネ」は学生時代に観た。当然のことながら、高校生くらいの少女を演じる俳優たちは私と同世代かやや歳下の女優であり、彼女たちが扮するキャラに似た女性は身近にいたので、私には強く印象に残っている。
カナダの作品だが全編フランス語だ。だから
ケベック州が舞台なのだろう。(余談1)20年以上昔に観たきりなので記憶が変質しているかもしれないが、黒地にタイトルが白く?表示されたときに2人の少女が声だけの出演で笑いながら軽快に「SONATINE!」と掛け声をかける。そこから物語がスタートする。
だから軽快な青春ドラマかと思って観ていたが、内容は陰鬱なものだった。
主人公は2人いる。1人は大人しそうな美少女、引っ込み思案な性格なのか言葉ですら意思表示ができないでいる。もう1人は一見すると派手で行動力があって発展的だが、コミュニケーションが不器用だ。自己表現が違えど、主人公たちは孤独である。
物語前半はそんな彼女たちのエピソードを個別に淡々と描写していく。描写が行き届いているのは、やはり監督が女優あがりだからか。当時、藝大に通っていた私は、この映画を観ながら「なるほど男性では描けない」と感心したものだ。
物語後半は、2人が連れ立って都会を放浪し、大量の睡眠薬をもって地下鉄に乗り、「誰も止めなければ死んでしまう」と大書きしたプラカードを周囲に見せながら危険なゲームをする。
2人が最初から友人だったのかは覚えていない。しかし助け合って前進していく「友人」ではなく、たまたま死への波長が合ってしまった「共鳴者」だ。2人連れ立っていても、2人はお互いに孤独であることを確認するのみのようだった。(余談2)
危険なゲームは、これだけ大勢の乗客が乗り合わせているのだから誰か気付いて孤独から解放してくれるかもしれない、という期待を込めた行動だった。自分たちのことを確実に誰かに気がついてほしくて人込みの中で睡眠薬を服用した。全くナンセンスな行動だ。
結局、2人は孤独のままだった。
この作品はDVD化されていない。(余談3)いま孤独や無関心は現代病ともいわれている。自殺サイトなど、それだけ「同志」が集まったら何か新たな打開策が生まれてもいいものを、結局自殺しか考えない。そんな時代だからこそ、観て欲しい映画である。ビートたけし氏へのファンには申し訳ないが、彼の「
ソナチネ」よりも、こっちの「
ソナチネ」だ。
(余談1)
ケベック州はフランス語を母語とする自治体。むかし、
カナダからの分離運動で新聞を騒がせた。
(余談2)大学時代、女友達から過去の自殺未遂体験などを聞かされた。その話している仕草が主人公たちにそっくりだった。あのとき私の脳裏にビートルズの「She Said She Said 」の曲が流れた。
(余談3)前に読売テレビの深夜番組「シネマ大好き!」で放送された字幕完全版をビデオに録画したはずだが、トランクルームに押し込んだまま所在がわからない。
主演の
パスカル・ビュシエール氏の最近の画像を見たことがあるが、イメージが異なっている。あれ?もっと繊細可憐な美少女だったように思ったのに、濃い顔つきになっている。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作 【受賞】ヴェネチア国際映画祭(新人賞)(1984年)
晴雨堂関連作品案内月の瞳 [DVD] パトリシア・ロゼマ監督 パスカル・ビュシエール主演
彼女たちの時間 [DVD] カトリーヌ・コルシニ監督 パスカル・ビュシエール主演
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ソナチネ」が有名だが、この
カナダ作品のほうが北野作品よりも10年ほど前に公開されているので「本家」だ。内容も雰囲気も全く違う。
この「
ソナチネ」は学生時代に観た。当然のことながら、高校生くらいの少女を演じる俳優たちは私と同世代かやや歳下の女優であり、彼女たちが扮するキャラに似た女性は身近にいたので、私には強く印象に残っている。
カナダの作品だが全編フランス語だ。だから
ケベック州が舞台なのだろう。(余談1)20年以上昔に観たきりなので記憶が変質しているかもしれないが、黒地にタイトルが白く?表示されたときに2人の少女が声だけの出演で笑いながら軽快に「SONATINE!」と掛け声をかける。そこから物語がスタートする。
だから軽快な青春ドラマかと思って観ていたが、内容は陰鬱なものだった。
主人公は2人いる。1人は大人しそうな美少女、引っ込み思案な性格なのか言葉ですら意思表示ができないでいる。もう1人は一見すると派手で行動力があって発展的だが、コミュニケーションが不器用だ。自己表現が違えど、主人公たちは孤独である。
物語前半はそんな彼女たちのエピソードを個別に淡々と描写していく。描写が行き届いているのは、やはり監督が女優あがりだからか。当時、藝大に通っていた私は、この映画を観ながら「なるほど男性では描けない」と感心したものだ。
物語後半は、2人が連れ立って都会を放浪し、大量の睡眠薬をもって地下鉄に乗り、「誰も止めなければ死んでしまう」と大書きしたプラカードを周囲に見せながら危険なゲームをする。
2人が最初から友人だったのかは覚えていない。しかし助け合って前進していく「友人」ではなく、たまたま死への波長が合ってしまった「共鳴者」だ。2人連れ立っていても、2人はお互いに孤独であることを確認するのみのようだった。(余談2)
危険なゲームは、これだけ大勢の乗客が乗り合わせているのだから誰か気付いて孤独から解放してくれるかもしれない、という期待を込めた行動だった。自分たちのことを確実に誰かに気がついてほしくて人込みの中で睡眠薬を服用した。全くナンセンスな行動だ。
結局、2人は孤独のままだった。
この作品はDVD化されていない。(余談3)いま孤独や無関心は現代病ともいわれている。自殺サイトなど、それだけ「同志」が集まったら何か新たな打開策が生まれてもいいものを、結局自殺しか考えない。そんな時代だからこそ、観て欲しい映画である。ビートたけし氏へのファンには申し訳ないが、彼の「
ソナチネ」よりも、こっちの「
ソナチネ」だ。
(余談1)
ケベック州はフランス語を母語とする自治体。むかし、
カナダからの分離運動で新聞を騒がせた。
(余談2)大学時代、女友達から過去の自殺未遂体験などを聞かされた。その話している仕草が主人公たちにそっくりだった。あのとき私の脳裏にビートルズの「She Said She Said 」の曲が流れた。
(余談3)前に読売テレビの深夜番組「シネマ大好き!」で放送された字幕完全版をビデオに録画したはずだが、トランクルームに押し込んだまま所在がわからない。
主演の
パスカル・ビュシエール氏の最近の画像を見たことがあるが、イメージが異なっている。あれ?もっと繊細可憐な美少女だったように思ったのに、濃い顔つきになっている。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
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