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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「さよならをもう一度」 カップルで考えよう〔7〕 

さよならをもう一度」 
パリのシャンゼリゼ通りが美しい

 
 
  
【原題】GOODBYE AGAIN
【公開年】1961年  【制作国】仏蘭西 亜米利加  【時間】120分  
【監督】アナトール・リトヴァク
【原作】フランソワーズ・サガン
【音楽】ジョルジュ・オーリック
【脚本】サミュエル・テイラー
【言語】イングランド語
【出演】イングリッド・バーグマン(ポーラ)  イヴ・モンタン(ロジェ・デマレ)  アンソニー・パーキンス(フィリップ・ヴァン・デル・ベッシュ)  ジェシー・ロイス・ランディス(ヴァン・デル・ベッシュ夫人)  ダイアン・キャロル(-)  ジャッキー・レイン(-)  ミシェール・メルシェ(-)
  
【成分】ゴージャス ロマンチック 切ない 恋愛 三角関係 1960年前後 フランス・パリ 白黒映画
                  
【特徴】フランソワーズ・サガンの代表作「ブラームスはお好き」を映画化。イングリット・バーグマン氏が三角関係に悩むアラフォー女性を好演。「サイコ」で不気味な人格異常者を演じたアンソニー・パーキンス氏が元の路線の純情青年を演じている。
 背景のパリのエッフェル塔やシャンゼリゼ通りの描写が美しく効果的である。観光を意識した作品ではないかと思う。
 当時の40歳と現在の40歳の微妙な認識の隔たりが興味深い。
    
【効能】恋愛について考える機会が得られる。パリ観光に思いを馳せる効果がある。
 
【副作用】イヴ・モンタンのセクハラ発言に不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
パリを舞台にした名優達の三角関係。
 
近年、日本各地で町興し村興しの着火剤として映画制作が脚光を浴びている。「長州ファイブ」の山口県、「バルトの楽園」「眉山」の徳島県、「君が踊る、夏」の高知県、「UDON」の香川県、「桜田門外ノ変」の茨城県。
 地元を舞台に映画を制作すれば、仮にヒットすれば広告料としての制作予算は回収でききるだけでなく映画が脚光を浴びている間は観光資源となる。さらに名作として長く愛されれば「二十四の瞳」のように半世紀以上にもわたって小豆島経済を助ける。
 予算獲得に悩まされている制作者側にとっても、地元自治体や商工会議所などが支援してくれると非常に助かる。下積み俳優にとっても地元ゆかりであれば起用されるチャンスだ。
 
 これは日本だけに限った事ではない。観光誘致も睨んだ映画制作は海外でも大昔から行われてきた。代表的な名作が作品全体がローマ観光である「ローマの休日」だろう。
 それと、この米仏合作の「さよならをもう一度」もパリ観光を意識した映画でもあるのは間違いない。パリを代表するエッフェル塔やシャンゼリゼ通りの街明りを効果的に背景として利用したラブロマンスだからだ。それに言語は仏語ではなく英語だ。
 
 原作は文学少女なら読んでる者も多いと思う、サガンの「ブラームスはお好き」。主演は、伝説の女優となりつつあるイングリット・バーグマン氏と、政治問題にもたびたび顔を出すフランスの名優イヴ・モンタン氏、そして「サイコ」で一躍スターとなったアンソニー・パーキンス氏。ほぼこの3人による三角関係のみで物語が展開していく。(余談1)
 バーグマン氏は四十路を迎えた熟女ポーラ役、イヴ・モンタン氏はイマイチかまってくれない内縁夫ロジェ、そしてアンソニー・パーキンス氏はポーラの取引先の息子フィリップ、良家のボンボンだ。もともと「サイコ」のノーマン役を務める前は青春スター的ポジションで、本作は元の路線というべき純情青年役で登場する。
 
 事実婚状態の「夫」ロジェとはかなり倦怠がきて褪めた関係。そこへ一回り以上歳下の男の子フィリップが登場する。フィリップはポーラに一目惚れ、ポーラも精力有り余る、いや失礼、情熱的な青年の求愛に押されて受け入れてしまう。(余談2)
 ところが、ポーラとフィリップの関係を知ったロジェに久方振りの嫉妬と恋愛の炎がつき、今までほったらかしだったのに絡むようになる。
 
 ラスト、ヒロインは長年連れ添った「夫」を選ぶか、若くて勢いのあるフィリップを選ぶのかを迫られ、けっきょく元の鞘に収まる事を選ぶ。今まで法的婚姻に興味が無かったロジェは、二度とフィリップのような虫に集られたくないのか、今度は結婚をする。
 しかし、結婚すると再び安心したのか元の倦怠状態へ。最後に見せたポーラの表情は「これで良かったのだ」という安堵の感情か、それとも「夫」への諦めの境地なのか、あるいは自分が選んだ道に対する後悔と諦めと安心の入り混じった感情なのか。
   
 年齢について60年代初頭と現代とでイメージが若干変化している事が興味深い。ヒロインのポーラはまだ40歳なのに現代女性では考えられないほど年齢を気にしている。また「夫」も歳若いフィリップと「妻」が付き合っている事を知ると、妻への独占欲なのか、愛憎の火がついてしまったのか「妻」が気にする年齢の事を何度も問題にして揺さぶりをかける。ヒロインが佳境でフィリップに別れを切り出したときも、自分の年齢を問題にして泣き叫ぶ。
 もちろん現代でも40はオバサン・オジサンなのだが、晩婚化と産科医療の進歩で当時ほどには気にしなくなった。
 
 私はバーグマン氏のこんな役はあまり好きではない。剣を振り回してむさ苦しい男どもをバッサバッサと倒していくとか、恋人を叱咤して支える猛女の役のほうが良い。 
 
(余談1)サガンの作品は姉がよく読んでいたが、私にはイマイチ好きになれなかった。一応は目を通したが、殆ど内容は覚えていない。

 イヴ・モンタン氏はフランスの俳優だが出身はイタリアである。

 アンソニー・パーキンス氏は前年に「サイコ」で有名になっている。本作公開時はノーマン・ベイツ役のイメージが色濃く残っていたはず。役作りの障害になっていたかもしれない。
 結局、本人が想像していた以上にノーマン・ベイツというキャラは根深くまとわりつき、やがて自身もそれを逆手にって進んでノーマン役を展開するようになる。
 
(余談2)社会的云々は別として、生理学的には真っ当な反応である。女性は閉経前に子供を作りたい本能に動かされて発情する事が多々ある。それなのに「夫」は構ってくれない状態、そこへ生物学的に若くて新鮮な男性があわられる。ポーラがフィリップに発情するのは自然の摂理である。恋愛感情もたぶんに遺伝子のプログラムに影響されているものだ。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
【受賞】カンヌ国際映画祭(男優賞)(1961年)
 
晴雨堂関連書籍案内
ブラームスはお好き (新潮文庫) フランソワーズ・サガン


 

 
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