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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「水滸伝」 絶望から脱出しよう〔33〕

水滸伝」 
日本TVドラマ史上空前の冒険活劇

 
水滸伝 林中役の中村敦夫.jpg
梁山泊軍を率いる林中役の中村敦夫氏 
水滸伝」DVD‐BOXのサイトより参照

水滸伝 DVD-BOX 舛田利雄
 
【原題】
【公開年】1973年~74年  【制作国】日本国  【時間】1200分  【監督】舛田利雄
【原作】施耐庵
【原案】横山光輝
【音楽】佐藤勝
【脚本】高岩肇 宮川一郎 舛田利雄 池上金男
【出演】中村敦夫(林中/林冲)  佐藤慶(高求/高俅)  土田早苗扈三娘)  大林丈史(宋江)  あおい輝彦(史進)  寺田農(公孫勝)  原田大二郎(花栄)  大前均(鉄牛)  渡辺篤史(阮小七)  松尾嘉代(小蘭)  水谷豊(徽宗皇帝)  
  
【成分】勇敢 かっこいい 水滸伝 時代劇 北宋 12世紀 中国 
                  
【特徴】日本テレビ開局20周年記念に制作されたテレビ時代劇、2クール26話。北宋期の中国の街並みを再現したオープンセットに、衣装や小道具など全て一から制作、当時の6億円が投じられた。
 「木枯し紋次郎」でブレイクしたばかりの若手俳優中村敦夫氏が主人公林中(林冲)を、悪役高求(高俅)には佐藤慶氏が渋く演じる。
 原作は明代に成立した施耐庵水滸伝だが、それを元に横山光輝氏が漫画化した作品を参考にドラマが創られている。さらに日本人に馴染みやすいよう、物語や人物相関は大幅に改変され、中村敦夫氏の林中と土田早苗氏のヒロイン扈三娘を軸にまとめられ、原作では高俅の奸計によって主人公たち梁山泊軍は滅ぼされるが、本作では納得しやすい勧善懲悪で高俅は林冲に討たれる。したがって本作で初めて「水滸伝」を知った方が原典を読んだら、納得できないラストと活躍しない扈三娘に気分を悪くするだろう。
 当時の映画からTVへシフトしてきたベテラン俳優とTVを活躍の場とするようになった中堅・若手の主だった俳優たちが集結しているドラマゆえ壮観だ。
 作中、「林冲」を「林中」と表記しているのは、単に活字が無かったからと思われる。
    
【効能】絶望に打ちひしがれても、活路を開き仲間を集い明るい展望を引き寄せる主人公たちの姿に明るい光を見る。
 林中の扮装をしている中村敦夫氏にブルース・リー氏の面影を見る。扈三娘土田早苗氏の女闘美に萌え。
 
【副作用】TVドラマであるため、エキストラに限りがあり当時はCGが無いため、スケールが小さく感じる。
 原作の水滸伝とは全く別物の作品になっているため、原作派は不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
佐藤慶の悪宰相が渋い。
 
 本放送時、私はまだ小学校低学年だった。当時は晩の9時に就寝するよう厳しく躾けられていたので、こっそりと襖の陰から十数分程度覗くだけだった。その行為ですら発覚するとビンタをくらったので、殆どオープニングしか観れていない。明確に憶えている場面は、オープニングの梁山泊軍の進撃風景と、黄布を首につけた近衛軍将校時代の林中と高求がタメ口で会話をしているところだけだ。
 今の子供なら夜の12時をまわっても深夜とは思わないだろうし、テレビも一家に1台だった当時とは違って各部屋に1台、いやワンセグがあるから各自に1台の時代となった。当時の私にとっては羨ましい環境だ。
 そんな社会的制約から、本作をまともに視聴できたのはその10年後の関西ローカル局での再放送だった。
 
 初めて観た時は、平安時代初期の日本の昔話だと思った。平安時代の中期までは中国風の衣装を着ていたからでもあるし、日本の「時代劇」が中国を舞台に作品を創るのは考えられなかった。
 さすがに17・8になると「水滸伝」が中国の物語ぐらいは知っている。小学校の高学年ごろから中国の歴史に興味を持ち関係の本をよく読んでいたから、「水滸伝」の原典は当時未読だったが内容は大よそ知っていた。
 
 内容はかなり日本風にアレンジされていた。アレンジというよりは全く別の「水滸伝」といっても良い。「水滸伝」には登場人物が大勢登場するが、主役は林中と扈三娘の2人、敵役は宰相高求だけに絞り、あとはレギュラーメンバーとして史進と公孫勝と宋江にほぼ限定している。最終回後半の出演者もこの顔ぶれだ。(余談1)
 大映では秦の始皇帝を扱った映画が過去にあったが、ああいった小道具やセットは使われないと破棄される。本作を制作するにあたって、古代中国の街並みや城壁などのオープンセットや、カツラや衣装に剣など一から作られた。テレビドラマとしては破格の制作費がかかっていた。
 そのせいかもしれないが、カツラが間に合わなかったのか、比較的長髪の俳優たちは後の「龍馬伝」のように自毛の生え際を活かした半カツラを用いていた。(余談2)

 ただ、映画のように大量のエキストラを毎回動員できない。オープニングでは比較的大勢のエキストラを使い、スモークや旗指物の数にカメラアングルなどを工夫して、さも林中が大軍を率いているかのような絵にしているが、毎回エピソードの佳境で行うチャンバラでは通常の時代劇レベルで撮らざるを得ないのでスケールの狭さは否めない。
 特に町に立てこもる林中たちを攻囲する高求軍を城壁から見た絵では、数十人の小隊規模の軍勢を横に並べているだけなので迫力が無い。やむを得ないか。今なら大河ドラマなどにも使われているように、CGで大軍勢や当時の広大な都の風景などを再現できるようになったので、便利な時代だ。

 原典支持者から見れば不満が多い作品かもしれないが、私個人にとっては思い出の時代劇だった。小学生の頃「社会的制約」で見られず、高校生の頃にやっと再放送で見ることができた。あの時の感動は忘れない。「水滸伝」のテーマ曲を聞いたとき、身体中から力が湧き起こり心がワクワクした。
 中村敦夫、てブルース・リーに似てるやん。土田早苗、こんなに光り輝く美人だったとは。ええ!、水谷豊が皇帝? いつもは甲高い声で軽いキャラ演じているのに、ここではやけに渋いやん。佐藤慶、悪役はこいつでないと迫力が無い。
 
 最終回の林中と高求の決闘の場面が今でも忘れない。佐藤慶氏の名演技が光る。
 ここでの水滸伝は正義感溢れる純粋で真っ直ぐな林中と、権謀術を駆使して中国を支配しようとする複雑な内面を持った高求の対決の物語だ。ラストは2人の対立の集大成だろう。
 広い荒野で単身逃げる高求を取り囲む林中たち。林中は大きな水筒と饅頭のような弁当を高求に渡す。「さあ、食べて備えろ。そして俺と戦え」
 高求は「たしかにお前らしいやり方だが、渇けばお前の血を啜る。飢えればお前の肉を喰らう」と飲みかけた水筒の水を棄てる。林中の真正直さを憎む高求の鬼気迫る台詞である。この場面が一番好きだ。 
 
(余談1)オープニングのクレジットでは、「林冲」と書くところを「林中」となっていたり、「高俅」としなければならないところ「高求」となっていた。これは単に活字が無かったために音が同じ漢字を充てた。当時は「常用漢字」の時代ではなく「当用漢字」だったので、使える活字が限られていた。
 作中に小道具として使用された公文書や手配書などはもちろん中国語で書かれており、林中や高求も原典通りの漢字で表記されている。
 
(余談2)中村敦夫氏は前年の紋次郎役で半カツラを使用していたので不自然な揉み上げが無かった。今回の水滸伝も半カツラでナチュラルなイメージで登場する。中国の衣装なので角度によってはブルース・リーの面影があるように感じる。
 宋江役の大林丈史氏、史進役のあおい輝彦氏、公孫勝役の寺田農氏、花栄役の原田大二郎氏、皇帝役の水谷豊氏は長髪だったのか、自毛で髪を結っているかのようなメイクだった。
 ただ、佐藤慶氏はそれほど長髪とは思えないのだが、メイクは半カツラ風だった。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 

 
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