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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「武士の家計簿」 家族と一緒に感動しよう〔22〕 

武士の家計簿」 
生真面目に徹した平凡な人生の真価。

 

武士の家計簿(初回限定生産2枚組) [Blu-ray]
武士の家計簿(初回限定生産2枚組) [DVD] 
  
【原題】
【公開年】2010年  【制作国】日本国  【時間】129分  
【監督】森田芳光
【原作】磯田道史
【音楽】大島ミチル
【脚本】柏田道夫
【出演】堺雅人猪山直之)  仲間由紀恵(猪山駒)  松坂慶子(猪山常)  西村雅彦(西永与三八)  草笛光子(おばばさま)  伊藤祐輝(猪山成之)  藤井美菜(猪山政)  大八木凱斗(猪山直吉(後の成之))  嶋田久作(大村益次郎)  宮川一朗太(奥村丹後守栄実)  小木茂光(安部忠継)  茂山千五郎(重永)  中村雅俊(猪山信之)
  
【成分】泣ける 笑える 知的 かっこいい コミカル 幕末 加賀 1830年代~1870年代 天保~明治 時代劇 ホームドラマ
                     
【特徴】東京神田の古本屋街で大学教授の目に偶然とまった江戸後期の会計帖をきっかけに生まれたホームドラマ。当時の平凡な武家の生活水準や仕事への取り組み方などが精細に記録されているため、当時の息遣いが伝わるよう本作でも家財道具や職場の雰囲気などに力を入れている。
 一見、コメディたっちで物語が展開していくが、現代の家庭にも通じるリアルな喜怒哀楽の演出が素晴らしい。子役の演技も申し分ない。
 
 ミカエル晴雨堂は本作を2010年度名作5選に選んだ。
    
【効能】家族・仕事、引いては自分自身の人生を省み、将来を考えるきっかけになる。
 
【副作用】関心のない方には単なる貧乏臭いホームドラマにしか見えない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
身につまされる幕末ホームドラマ
  
 書店の街東京神田の古本屋で大学教授の目にとまったのが江戸時代後期の出納帳。これが本映画制作につながるきっかけとなった。出納帳の主は加賀百万石の大藩で経理を担当していた下級武士。小物1個にいたるまで几帳面に記載され、金銭の出入りを事細かに目を光らせていた。
 彼は家計も詳細に記録していたので、当時の金沢の物価から下級武士の生活水準や慣習まで、炊事の音や香り、着物の肌触り、鬱陶しい人間関係まで臭ってくるほど正確に把握できる。
 
 物語はその再現ドラマ、天保年間(1830年代)から明治初期(1870年代後半)までのおよそ40年、三代に渡る加賀の下級武士の家族を描いている。冒頭は明治10年、海軍の主計室で算盤をはじく佐官級の若い主計長、彼が父や祖父を回想する場面から物語が動き出す。(余談1)
 
 江戸時代に使われた家具や日用品の数々、帳簿や契約書などの諸書類、大道具・小道具スタッフの努力が滲んでいる。朝の登城風景、職場で見習い時代の主人公が硯をすり各文机に墨を配ったり、茶を入れて湯飲みを配ったり。
 上司や同僚とのデフォルメの無い人間関係。偉そうにするだけのステレオタイプの上司ではなく、「俺も借金がかさんでる。平穏無事に勤めを果たしたい」と主人公を諭すような語調で懇願する様は説得力ある。
 基本的に私たち現代人にも馴染みある有り触れた日常風景を大事にした描写なので作品世界に引き込まれた。
 
 本作は主に天保時代を舞台にしたホームドラマと考えたらいいだろう。家計のやり繰りに難儀する我家にとっても説得力のある内容だった。特に冠婚葬祭などの出費が身につまされる。
 主人公の家庭は下の上あるいは中の下だろうか。ただでさえ家計が苦しいのに、親戚づきあいで出費がかさむ様(余談2)は現代の私たちにも通ずる。いや天保も平成も基本は変わりない。
 我家の場合、作中の主人公ほど行事で出費を重ねる事は無いが、私の代で下層労働者になったので姪っ子たちへのお年玉や入学のお祝いはけっこう痛いし、盆には帰省する費用に郷里の親戚や隣近所への贈物を用意しなければならない。孤独死やホームレスが多いこんな時代だからこそ、親戚とのよしみを切らす訳にはいかん。

 作中で激動する幕末にあって世情に通じていながら相変わらず算盤侍の主人公と、世の動きに乗り遅れまいとする成人した息子との口論が描かれているが、息子はまるで若い頃の自分をみているようだったし、主人公はなるべき理想像に見えてきた。
 残念ながら私は中途半端な人生をおくってきたので、これといった身をたすく特技は無く、今さら主人公のようになりたくても現時点では無理だ。算盤を弾く裃姿の主人公の後姿と羽織袴姿の息子の後姿が重なるような演出は、私には辛い。
 時代劇ではなく明日の我家の進む道を考えさせられるホームドラマだった。

 気になったのは、作品の後半にあたる幕末明治維新での主人公一家は些か駆け足で物語を進めた感があり、綺麗にまとめるとしたら2部構成にして天保時代の借金との格闘期と息子が成人した幕末明治期に分けたほうが良かったと思うが、地味な内容の映画がヒットして続編という展開があまり期待できない以上やむを得ない。
 父によって叩き込まれた算盤が身を救い激動の時代を乗り切った事は、制作人としてどうしても描きたかった事だろうから。(余談3)
  
(余談1)明治初期の頃の海軍の制服データが手元に無いので判らん。この頃の役職は海軍主計少監だと思うので、少佐に相当する。
 
(余談2)特に下っ端より中間管理職の侍は、経済状態に関わらず家格や役職の相場に生活水準を合わせなければならないので、生活は見た目ほど苦しいのだ。主人公の家はけっして遊興三昧で借金を重ねたわけではない。
 着る物を例にとれば、当時の庶民なら衣服は全て古着、擦り切れても継ぎ接ぎして着続ける。継ぎ接ぎの仕方でお洒落をするほど、「三丁目の夕日」頃まではそれが当たり前だった。ところが本作主人公になると、継ぎ接ぎどころか古着もNG、おまけに祝いの席や藩主の前に出るための式服や職場で着る裃など庶民より余計に銭がかかる。
 借金返済で箪笥の衣服もあらかた売る場面があるが、古着でないから売る価値がある事が判るシーンだ。
 
(余談3)あとメイクを「龍馬伝」のようにリアル丁髷にしてほしかった。それから主人公の老年期は髪の毛が薄くなった状態にすべきだ。ハリウッドやヨーロッパなら、老年の主人公を禿げにする。だいたい、髪の毛豊かな老人は老人らしくない。多くの男性は禿げになるし女性は薄くなるのに。
 なぜ邦画は禿げにせんのだ。けしからん。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
晴雨堂関連書籍案内
武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書) 磯田道史
  

 
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